ささやかな幸せ

SUPER EIGHT、本、美術鑑賞、俳句、お茶が好き!
毎日小さな幸せを見つけて暮らしたい。

『キリン解剖記』『チェコのヤポンカ』

2024-03-16 22:25:34 | 
『キリン解剖記』 郡司芽久 ナツメ社
 幼い頃からキリンを愛し続けた著者は、いつしかキリンの研究者を目指しはじめる。あの長い首に隠された進化の謎を解明すべく研究に没頭し、行き着いた先で見つけたのは、あるはずのない8番目の"首の骨"。多くの人とキリンたちに支えられながら、念願のキリン博士になるまでの約10年間の探求の日々
 おもしろかった。他にも献体していただいた動物たちは、どのように研究に役立っていくのか。博物館が標本を集めることの意義とはなにか。など知らないことを知ることができた。
 博物館の三つの無と言う理念。無目的、無制限、無計画。人間の都合で博物館に収める標本を制限してはいけないのだとか。収蔵しているものが、100年後に役に立つかもしれないという使命感。そして、郡司さんは、それに救われた。効率ばかりの現代に、効率ばかりではないと訴えているようでいい。
 また、解剖時に筋肉や神経の名前を忘れ、目の前にあるものを純粋な気持ちで観察しろというアドバイス。わが身にふり返り、些細なことにとらわれ、大事なことを見落とさないようにと思った。
 
『チェコのヤポンカ』 木村有子 かもがわ出版
 豊かな森で友だちと遊んで過ごした日々と、帰国して待ち受けていた孤独。少女を支えたのはチェコの愛情深い人たちや本との温かな記憶でした。社会主義国チェコスロバキアで過ごした小学生時代、自由がなかったプラハ留学時代、ベルリンの壁崩壊とビロード革命を目の当たりにしたドイツ在住時代、絵本『もぐらくん』の作者ミレル氏との交流など、子どもの本の翻訳家になるまでの貴重な体験がつまったエッセイ集。
 なんと愛情に満ちたチェコ時代。反対に日本に帰国すると同級生から遠ざけられてしまう。しかし、それを救ったのはチェコの絵本。本は、人間の根っこになる大切なものであり、支えになるものだと思った。
 社会主義の裏の側面も描かれるが、人の交流が温かく、読みながら優しい気持ちになった。
コメント
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