ささやかな幸せ

SUPER EIGHT、本、美術鑑賞、俳句、お茶が好き!
毎日小さな幸せを見つけて暮らしたい。

『そして、バトンは渡された』『ノモレ』『紛争地の看護師』

2019-04-19 20:14:21 | 
『そして、バトンは渡された』 瀬尾まいこ 文藝春秋
 森宮優子、十七歳。彼女には父親が三人、母親が二人いる。 家族の形態は、十七年間で七回も変わった。 血の繋がらない親の間をリレーされ、四回も名字が変わった。でも、全然不幸ではないのだ。彼女はいつも愛されていた。
 本屋大賞受賞作。複雑な家庭に育つ優子。普通ならば、波瀾万丈の人生が待ち構えているはずだが、いい人に囲まれて淡々と生きる。そこが、温かくていい反面、物語が弱く物足りない感じが残る。でも、ラストはしっかりと泣かされた。知り合いが「心が弱っている時に読むといいかも」と言っていたが、そうかも。
 「母親になってから明日が二つになった」「自分の明日と、自分よりたくさんの可能性と未来を含んだ明日が、やってくる」という梨花さんの言葉がいいと思った。

『ノモレ』 国分拓 新潮社
 1902年、入植者の白人が経営するゴム農園で奴隷にされた曾祖父たちは、生き延びるためにパトロンを殺し、二手に分かれ、逃げた。曾祖父たちは故郷へ戻ったが、森に消えた仲間たちと二度と会うことはなかった。息子たちよ、森で別れた友(ノモレ)を探しておくれ。ペルー・アマゾンの先住民イネ族の若きリーダー・ロメウは、文明社会と未接触の先住民イゾラドが突如現れたと知らされる。突如出現したイゾラドは、奴隷にされた曾祖父が、100年以上前に密林で生き別れになった仲間の子孫、我々のノモレではないのか―。百年間語り継がれた“再会の約束”は、果たされるのか――。
 NHKスペシャルで放映されたらしい。
 未知の人々を保護すべきか、警戒すべきか。どうコミュニケーションを図るのか?どうして、彼らは人を襲ったのか?(後に理由がわかるのもある)文明人が先住民が免疫を持たない病原菌を持たらすことでの絶滅は防がないといけない。しかし、広いアマゾンの封鎖は難しい。資源を求めて人は銃を持って奥地へと入り込む。知れば知るほど、どうしたらいいのかわからなくなってくる。
 ロメウは、時間をかけイゾラドと信頼関係を築いたきた。しかし、ロメウの制止を振り切り、観光客を乗せた船が爆音でイゾラドに近づき、観光客がシャッターを切ることで、あっけなく信頼関係は崩れてしまう。やりきれない。また、土地を追われ、働きたくても働くことができない先住民の生活を考えるとやりきれない。

『紛争地の看護師』 白川優子 小学館
 シリア、イラク、イエメン、パレスチナ、南スーダンほかに8年間で17回派遣。砲弾が飛び交うなか、市民に寄り添い続けた「国境なき医師団」看護師による生と死のドキュメント。一握りの指導者たちによって始められた戦争の犠牲者は無辜の市民たちである。筆者の仕事は、その市民たちに医療活動を施すこと。絶望のなかに一筋の希望を見出す活動に従事しながら筆者が考えるのは、いつになったら戦争は終わるのか、市民たちはいつ救われるのか、というものだ。
 生々しい。怖さを感じなくなったら、帰国させる。(怖さを完全に失えば命とりの行動をおこす危険があるため)慢性的疲労から気が付くと涙を流しながら仕事をしている。(激務では心の健康を保つことが大切になる)殺されるのではないかという恐怖と戦いながらの医療活動。気温50℃の炎天下での救助活動では、体温より高い気温のため、高熱を発しても気付かない。水が底をつき、遺体が流される川の水を飲まなけらばならない。等々。
 でも、作者は安全な日本に帰国することができる。一方、現地の人たちは、危険な地域に居続けないといけないのだ。出勤する人が来なければ遅刻だと日本では思う。紛争地では、空爆にあったのではないかと死やケガを思うのだ。
 本当に「国境なき医師団」の方たちには、頭が下がる思いだ。
 一方、悲惨な状況の中、献血に集まる市民、清掃や後片付けに励む市民がいる。病院が破壊されても隠れて医療活動を行う現地の医師がいる。学校が壊されても子供たちへの教育を忘れない大人たちがいる。
 銃声が聞こえても平気な世界はおかしい。怯えずに暮らせる世界を祈る。
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする