皇后様が胸痛を訴えられ、24時間心電図で心筋虚血が疑われるために
「冠動脈CT」検査を受けるというニュースがありました。
CT検査というと、胸腹部のCTでがんの検査、頭部CTで脳卒中の検査、という
イメージがあります。
でもCT技術の格段の進歩によって、さまざまな情報を得ることができるようになりました。
動脈については格段に進歩して、従来は血管内のカテーテルを入れて
造影剤を注入して撮影する「血管造影」がCT検査によって血管を映し3D構築して
診断できる「CTアンギオ」に取って代わられました。
心臓は動きがあるのでCT検査では血管の動きでぶれた画像しか撮れませんでしたが、
最新のCTは高速撮影が可能になり細部までわかる冠動脈像が得られます。
さらには、冠動脈が狭いかどうかだけでなく、動脈硬化によるプラークの存在も
分かるようになり、造影検査を越える情報も分かるようになりました。
「冠動脈検査」は入院が必要でしたが、「冠動脈CT」は外来での検査なので
入院の必要がなく、患者さんの負担が軽くなりました。
また、病院のようにCT設備を持たない当院のような小さなクリニックでも
病診連携をつかって冠動脈CT検査を診療の一部に組み込むことが可能な時代になりました。
胸が苦しく狭心症が疑われるので病院への紹介状を書いていた時代から
狭心症などの心筋虚血の診断をクリニックでつけて、冠動脈治療が必要な患者さんだけを
治療にために病院へ紹介する時代に変わりました。
「冠動脈CT]が医療現場を劇的に変えています。
患者さんにとっては狭心症があるかないかという検査のために混雑する病院に通う
必要性が少なくなり、病院にとっては心筋虚血のスクリーニングの手間が省かれ
入院治療が必要な患者さんに専念できるという双方のメリットがあります。
冠動脈CTによって心筋虚血の診断精度が上がって、多くの患者さんを救えるように
なったことは嬉しいことです。