テレビの映画番組で「私をスキーに連れてって」を久しぶりに見た。屋根にスキーキャリアを付けた車、彼女の電話番号を尋ねる場面、もちろんスノーボーダーの居ないスキー場など懐かしく、思わず政策年を見た。1987年、バブル絶頂が近く、スキーブームも最高潮に達しようという頃だ。
信州ならずとも、週末の朝暗い頃に高速道に上がると、屋根に何本ものスキー板を積んだ車が先を争うように犇めいていた、あの頃。今は、スキー板を積んでいても車内に入る長さなので、外からはスキー場に向かう車かどうか分からない。スキー場に方面に向かって走る車も三々五々で、最近はそれと分かる車に出会うと「仲間を見つけた」心強さすら感じてしまう。
信州の有名スキー場でのロケなのに、リフトやゲレンデの風情が田舎の町営ゲレンデのような素朴さ。二人乗りリフトまでで四人乗りの高速リフト「クワッド」が見当たらない。高速リフトの全国的普及はもう少し後の事だっただろうか。スキー板を椅子代わりにして腰掛ける光景も、競技スキー部の部員からは「板が傷む」と叱られたけれど、あの頃はよく見られた。
そして、主人公:矢野(三上博史)に彼女を作らせようとする高校からの友人達のやり取りにも時代を感じる。次々と矢野に女性を紹介して彼をけし掛け失敗を繰り返す男友達よりも、高校時代に矢野に振られた子を含め女友達2人の方が彼の気持ちをよく理解していること。そして、矢野が心を動かした女性:池上(原田知世)への恋路を応援する女性2人の気持ちに、「あの時代」が持っていた暖かさを感じる気がした。
スキーブームは去り、最近はこの辺りのスキー場に雪も少ない年が続いている。もう昔のように先を争い深夜に出発して先を争うことも無くなったが、少しだけ、昔の、ゲレンデ横の駐車場で夜を明かし早朝のリフト券売り場に行列を作った頃のスキーへの情熱や楽しさにもう一度触れたような気がした。