今年はもう時機を逸して食べられないと思っていた土筆(ツクシ)だが、通りがかりの空き地の端っこに、まだ笠の開いてない土筆を何本か見つけた。見つけてしまうと、やはり今年も是非あの懐かしい味を味わいたいと、すでに伸び切って笠が開いたものを含め30本くらいの土筆を採って来た。
家に戻って袴取りで指先を茶色に汚しながら、子供の頃からの春の味を味わえる喜びに浸る。近年はフキノトウの吸い物や、タラの芽の天婦羅がなかなか口にできない中で、土筆だけが確実に味わえる「春のしるし」である。今年もやっと「土筆の卵とじ」を口にすると、これでやっと新年度を迎えようという気にもなるというもの。幼心に沁み込んだ季節の味というのは、本当に気分を根底から変えてしまうくらいの意味を持っているようだ。