ずうーと、ずうーと前の、ある年の夏の日、
ちいチャンは、おばあちゃんに連れられて、
街のお祭りを見に行きました。
街は、祭りの飾りで飾られて、賑やかです。
ちいチャンは、
繁華街に向かうアーケードの両脇に、
見慣れない人たちを見ました。
その人たちは、軍服を着て帽子を被っています。
松葉づえを脇に置き、片足の無い兵隊さん、
片腕の無い兵隊さん、
目に眼帯をして、白い布で腕を吊っている兵隊さん、
頭と腕に、包帯を巻いている兵隊さん、
足元には、缶詰の空き缶のような物を置いています。
立っている人は、アコーディオンを弾いています。
街行く人たちは、余り気にも留めずに通り過ぎて行きます。
時々、誰かが空き缶に、お金を投げ入れています。
ちいチャンは、初めて見る光景に、思わず足が止まります。
すると、おばあちゃんが、ちいチャンに、
10円玉を握らせてくれました。
ちいチャンがおばあちゃんを見上げると、
ちおばあちゃんは、コクンとうなずきました。
それで、ちいチャンは、
足の無い兵隊さんの側に行き、置いてある缶の中へ、
10円玉を入れました。
缶の中には、余りお金は入っていませんでした。
楽しいはずの祭りの日、賑やかな街や商店街の中、
腕や足の無い兵隊さんの姿は、
ちいチヤンの中に、
いつまでもいつまでも残っています。