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西東京市・北海道富良野の森林を舞台にした遺伝,育種,生態などに関する研究ノートの一部を紹介します

記載論文

2008-12-18 | その他あれこれ
・16日からひたすら会議が続く。会議合間に、Tくんからアカエゾマツの世代時間に関するメールをもらう(若干、当方の勘違いがあったわけだが・・・)。このメールに関連して、アカエゾマツの樹齢を測定していた論文があったことを思い出し、Suzuki et al. 1987:Eco Res2:61-75を読み返す。

・この論文は、北大中川研究林のトドマツ林と蛇紋岩のアカエゾマツ林の一定面積を皆伐し、毎木のサイズを測定するとともに、年輪から樹齢を決定している。蛇紋岩のアカエゾマツ林プロットでは、50×100mの範囲を皆伐し、全ての個体の年輪を調べている。年齢分布は極端なL字型だが、樹齢の範囲は1年~586年(!)と非常に幅広い。100年、150年、230年にごくごく小さなピークが見られるが、50年を過ぎるとあまり途切れることもなく、300年以上までだらだらと続く。

・年齢と樹高との関係を見ると、年齢が高くなると樹高も大きくはなるものの、230年ごろの樹高が15mくらいから30mくらいまで大きくばらついており、環境によって大きく変動することが分かる。それにしても、土壌が蛇紋岩だからだろうか、高さ20mに達するのに150年はかかっている。高さ10mに達するにも100年近くかかっており、いかにスローペースであるかが分かる。

・こうした論文は記載的なだけに派手さはないが、アカエゾマツの更新動態を考える上でも、世代時間を考える上でも極めて貴重である。実際、本論文は27もの論文で引用されており、こうした論文の貴重さがよく分かる。こういう地道な仕事も一つ一つ行いたいものである。

カエデの子ども

2008-12-16 | フィールドから
・今日も寒い。昨日同様、くるりと試験地を見回り。よく見ると、農場の方はさらに霜が降りている。カエデ林に入ってみると、稚樹たちが霜に震えている。



・気になっていた仕事をとりあえず片付け、ヤチダモ種子の画像解析用のシートの作成。パワーポイント上で1×1cmの正方形を発生させるには、グリッドをうまく使えばよいと分かった。これで準備は完璧(のはず)。

・Iさんに手伝ってもらって、カエデ見本林の面積を測ってみる。縦30m、横50mの調査地が何とか取れそう。10mごとに杭を打って、サブプロットの中心に調査枠を設定するという感じになるだろうか。

・査読を進める。大体言いたいことは決まっているのだが、これを英語にするのがいつも難関である。本当に言いたいことが伝わるのか心配・・・である。

霜柱

2008-12-15 | フィールドから
・今年一番の冷え込み。我が家の窓も結露がすごい。朝一番で試験地内を見回ると、苗畑では見事な霜柱。考えてみると、福岡でも富良野でも、霜柱なるものはあまり見ていなかった気がする。



・さらに奥へと進むと、レバノンシーダーの樹幹から、水蒸気がもうもうと立ち昇っているのに気がついた。当たり前の現象なのかもしれないが、ここまで幹から水蒸気が放出されているとは驚きだった。日当たりの状態や樹種によっても放出量が異なるように見える。ちなみに写真はポプラの1種。



・菊澤本で紹介されていたAntonovics & Ellstrand (1984) Experimental studies of the evolutionary significance of sexual reproduction. I: A test of the frequency-dependent selection hypothesis. Evolution 38(1):103-115を読む。頻度依存選択を実験的に証明したというものだが、実験のデザインが秀逸である。

・調査地は北カリフォルニアで、材料はイネ科の多年生草本ハルガヤAnthoxanthum odoratumのクローンである。2つの実験が行われており、一つは20個体を6角形になるように配置し、18/20のMajorityと2/20のMinorityで適応度を比較している。

・もう一つの実験では、○○○×○×××という8個体を列状に植えている(○と×はそれぞれ異なるクローン)。ここで、左から2番目と7番目は両脇が同じクローン、3番目と6番目は片方が同じで片方が異なる、4番目と5番目はどちらも異なるクローンとなっているが、この実験では隣接個体が同じクローンか否かによって適応度が異なるかを調べたという設計になっている。

・どちらの実験でも、適応度(3年間の生存率×個体当たりの花序数平均)はMinorityがMajorityの約2倍になっており、頻度依存選択を実証したということになっている。そのメカニズムは、他クローンだと競争が緩和される(用いる資源が異なる)ことと(しかし、著者らはこの説を強調していない)、Minorityの方が菌害などにかかりにくいことを挙げている。

・この論文では種子産地と植栽地の影響(HomeとAway効果)とMajorとMinorの効果を同時に調べているので、少々分かりにくい。結果的にはHome、Away効果はほとんど認められなかったようだ。しかし、MajorとMinorについて、ここまできれいな結果になるのは驚きである。クローンを用いているというのが大きいのかもしれないが、特に列の実験は”本当なのか!?”と思ってしまった。しかし、こういう古典論文は読んでいて面白く、案外とヒントになるアイデアが隠されている。

ヤチダモ・ワークス

2008-12-14 | その他あれこれ
・冷たい雨が降っている中、駅前のアスタまで自転車で行く。学会の宿泊予約を行う。3月末の京都は観光シーズン真っ盛りである。なんとか駅前のホテルを予約できた。考えてみると、サクラの季節、だもんねえ・・・。ともあれ、ホテル予約は早めにするほうが良さそうです。

・富良野の苗畑で育成した母樹別ヤチダモの成長データを見直す。データ入力後、しばらく放置していたのだが、よく見るとあちこちに打ち間違いなどが・・・。1年生時点である反復だけが異常にサイズが大きいと思ったら、なんとmmとcmの違いだった。こういうのはRのプロット図で見てみると一目瞭然。

・これらと父性解析の結果をつき合わせて、何か面白いことが発見できるだろうか・・・。久しぶりに楽しみである。シードトラップのヤチダモ種子の形態解析も再開することになり、ヤチダモ・ワークス、再発進である。

統数研セミナー

2008-12-12 | 研究ノート
・広尾の統数研にてSさん、Tくんとカツラの打ち合わせ。しばらく寝かせていたうちに状況は刻々と変わり、イントロは方針変更を必要がでてきた。しかし、カツラの場合には引用できる論文が増え、かえってアトラクティブになりそうな感じ。時代が我々に追いついてきた・・・わけもなく、最近のトレンドを背景に添えると、ラッキーなことに案外面白い結果が得られているといえそう。ともあれ、少ない時間ながら有意義な打ち合わせとなった。

・午後からセミナーに参加。北は北海道、南は沖縄から20名程度の参加者。Uさんによる資源の空間分布が地形要因でどのように説明されるかという話がとても面白かった。そもそも6haの調査プロットを600箇所のグリッドに区切り、それぞれの土壌含水率、CN比、RPPFDをすべて測定しているというのがすごすぎる。

・今回は、これらの実測値と標高、方位、WI(Wetness Index)との関係を調べている。WIという指標はGIS上で集水域面積と傾斜角度から計算される。もともと水文学の分野で考案された指標のようだが、種の分布、個体の成長パターンなどを考える上でも便利そうである。標高別試験地のデータ解析、サイト記載でも必要になりそうだ。

・Kさんの発表では、最近のホットな話題である種多様性(Diversity)と生産性(Productivity)の関係(D-P関係)に関する最近のレビューがあり、大変参考になった。富良野の天然林施業でも無数の択伐プロットのデータがあるので、種多様性と生産性という切り口で、天然林施業の意義を再評価すると新しい知見が得られるのではないかと思った。

・懇親会では、Iさんとお話する機会があり、試験地の森林動態モデルについて相談に乗っていただいた。個体位置情報と種ごとのSLAや光合成速度などのパラメータをなるべく集めた方が良さそうだが、なんだか新しい方向が見えそうな気が・・・。。実に刺激的な一日であった。異なる専門の人たちと議論することは大事だ!

シードトラップ

2008-12-11 | 研究ノート
・岩魚沢シードトラップの3年分のデータをようやくまとめる。これは5haのプロットに22個のシードトラップを設置して、毎月回収した結果である。得られた種子の樹種組成はエゾマツ、トドマツ、イタヤカエデ、オオモミジ、シナノキ、ヤチダモ、キハダ、ハンノキ、ウダイカンバ、カツラ、ニレ類である。ちゃんとみていくと、豊凶の程度や散布量の空間的な関係などが見えてきそうなのだが、年、月、トラップ、樹種という階層構造になっているので、データをうまく使いこなせずに悪戦苦闘。



・とりあえず、2005年のデータについて、種ごとに散布密度を空間的にプロットしてみる。ええい面倒だ、と、月は全部重ねてしまうと、まるで水面に石つぶてを投げたような芸術的な(?)絵が描ける。ふうむ、迷いの森に入っている当方の気持ちを映しているような気も・・・。ちなみに2006年はこう。



・引き続き、2007年。豊凶らしきものも何となく見えてくるわけだが、はてさて、これからどうすればいいか。



・試験地のみんなと当試験地のカエデ林を見に行く。ここにはカジカエデ、トウカエデなど、色々なカエデが植栽されている。最近は下刈りをしていないわけだが、Kさんの言うとおり、林床をよく見ると思った以上に更新している。中にはブッシュ状に稚樹が固まって生えているところもあり、なかなか面白い。まずは、上木の個体位置図とブッシュ状の稚樹個体群の対応(種組成も含めて)を見てみたいところだ。

演じるということ

2008-12-10 | その他あれこれ
・午前中にお休みを頂いて幼稚園の”聖劇”を観にいく。幼稚園はカトリックなので、クリスマスパーティがイエス生誕のお祝いとなる。子ども達は堂々と大きな声で演じていて、素晴らしい。会場はお母さん、お父さん、おじいちゃん、おばあちゃんでごった返していた。

・午後から職場復帰。いきなり問題発生。あまり解決もされないままに、とりあえず、シードトラップのデータを整理する。2006年についてはなんとか完了。後はこれをRで描いてみることに・・・。と、ここで、またもやデータの統合でつまずく。ついついIくんに連絡してお願いすることに。いい加減にマイニングもできるようにならんといかんのだが。

乗り合いバス

2008-12-09 | フィールドから
・朝も思ったほどは寒くない。が,昨日の雨ががちがちに凍っていて,“つるっつる”となっている。久しぶりの雪道でこけないように慎重に足を運ぶ。朝一番でOさんとトドマツ標高別論文の打合せ。こちらも記憶が曖昧になっていたのだが,途中までできている原稿を見ると,ある程度のストーリーはできているような・・・。後は「言いたいことを書く」ための下準備として,関連論文をもう一度確認しておく必要がありそう。



・その後は実験室片づけが続く。D論の実験を行ったときの余りのDNAなども飛び出てきて,ひたすら捨てる。お昼をはさんで2時過ぎまで作業をし,ようやくゴールらしきものが見えた(気がした)ところで時間切れ。こちらでは,実験室を含めて一時引越しの準備が大変である。

・富良野と旭川を結ぶバス“ラベンダー号”はそれなりの大型バスだったはずなのだが,富良野駅で待っていたら,普通の“乗り合いバス”が滑り込んできた。経費節減のため,であろうか。乗客たちが顔を見合わせていたところを見ると,今回限りのハプニングなのか,あるいは最近始まったことなのか。

・旭川空港でお土産に札幌クラシックを購入。着いてから後悔することになるんだけど(重いから・・・),今回の我が家へのお土産はビールと生チョコとなった。ところで,今回の出張直前に査読を1つ超特急で片付けたと思ったら,あっという間に2つも抱える羽目になってしまった(もう無理・・・)。機内で査読に目を通すが,なぜか頭に入らず,朦朧としてきたので終了。

後片付け

2008-12-08 | フィールドから
・富良野に行くために羽田へ。朝8時ごろの西武新宿線はひどい混雑である。山手線で浜松町まで行くと,混雑は加速し・・・世の中の人たちはこんなラッシュアワーを耐えているのかと思うと,職場まで自転車というのがいかに有難いことを実感した。

・富良野は雪が思った以上に少なく,雨交じりである。Tさんと久しぶりに再会。今日から岩魚沢のシードトラップの同定をお願いすることになった。シードトラップも,これで4年間のデータが得られるわけで,何とか結果をまとめたいところである。北海道では想像以上に冬期散布が重要であることは分かっているのだが,できればInverse Modelで種ごとの散布パターンを比較してみたい。

・山部の実験室の片付け。引っ越し前にも(それなりに)片付けていたつもりだったのだが,細かく見ていくと残されたものが結構ある。片付けの合間に,みんなと少し立ち話をしたところ,今回の森林学会の北海道支部大会では,ここのスタッフの発表をかなりの人たちが聞きにきてくれたらしい。これは嬉しいニュースである。天然林の取り扱いが注目されている,ということなのか・・・。

・宿にて来春の国際シンポに向けたヤチダモ種子の形の解析を行う。種子の形と成長の関係はやはりなさそう。親子解析結果と形の関係もなかなか難しそうである。予測されたことではあるが,果たしてどうするか・・・。

カエル本

2008-12-07 | その他あれこれ
・子どもの体験プログラムでダンボールを使った秘密基地作りに参加。子どもだけ預けて帰る予定だったのだが、なりゆきで手伝うことに・・・。しかし、思う存分、ダンボールを切ったり、貼り付けたりするのは存外楽しかった。寒かったけれど、天気は素晴らしい。

・ベイズ統計のカエル本を少しずつ読む。英語が分かりやすいのが有難い。輪読のようなことができるといいんだが・・・。いずれ簡単な例題で自分のデータで動かしてみたいところである。

・明日から久しぶりの富良野行き。1泊なのでトンボ帰りになってしまうが、明日は朝がそれほど早くないから楽だ。移動時間に久しぶりに新しい論文読みをしたいところである。