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西東京市・北海道富良野の森林を舞台にした遺伝,育種,生態などに関する研究ノートの一部を紹介します

霜柱

2008-12-15 | フィールドから
・今年一番の冷え込み。我が家の窓も結露がすごい。朝一番で試験地内を見回ると、苗畑では見事な霜柱。考えてみると、福岡でも富良野でも、霜柱なるものはあまり見ていなかった気がする。



・さらに奥へと進むと、レバノンシーダーの樹幹から、水蒸気がもうもうと立ち昇っているのに気がついた。当たり前の現象なのかもしれないが、ここまで幹から水蒸気が放出されているとは驚きだった。日当たりの状態や樹種によっても放出量が異なるように見える。ちなみに写真はポプラの1種。



・菊澤本で紹介されていたAntonovics & Ellstrand (1984) Experimental studies of the evolutionary significance of sexual reproduction. I: A test of the frequency-dependent selection hypothesis. Evolution 38(1):103-115を読む。頻度依存選択を実験的に証明したというものだが、実験のデザインが秀逸である。

・調査地は北カリフォルニアで、材料はイネ科の多年生草本ハルガヤAnthoxanthum odoratumのクローンである。2つの実験が行われており、一つは20個体を6角形になるように配置し、18/20のMajorityと2/20のMinorityで適応度を比較している。

・もう一つの実験では、○○○×○×××という8個体を列状に植えている(○と×はそれぞれ異なるクローン)。ここで、左から2番目と7番目は両脇が同じクローン、3番目と6番目は片方が同じで片方が異なる、4番目と5番目はどちらも異なるクローンとなっているが、この実験では隣接個体が同じクローンか否かによって適応度が異なるかを調べたという設計になっている。

・どちらの実験でも、適応度(3年間の生存率×個体当たりの花序数平均)はMinorityがMajorityの約2倍になっており、頻度依存選択を実証したということになっている。そのメカニズムは、他クローンだと競争が緩和される(用いる資源が異なる)ことと(しかし、著者らはこの説を強調していない)、Minorityの方が菌害などにかかりにくいことを挙げている。

・この論文では種子産地と植栽地の影響(HomeとAway効果)とMajorとMinorの効果を同時に調べているので、少々分かりにくい。結果的にはHome、Away効果はほとんど認められなかったようだ。しかし、MajorとMinorについて、ここまできれいな結果になるのは驚きである。クローンを用いているというのが大きいのかもしれないが、特に列の実験は”本当なのか!?”と思ってしまった。しかし、こういう古典論文は読んでいて面白く、案外とヒントになるアイデアが隠されている。

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