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西東京市・北海道富良野の森林を舞台にした遺伝,育種,生態などに関する研究ノートの一部を紹介します

Stacy (2001) Amer J Bot読解

2007-12-22 | 研究ノート
・東京とんぼ返り。昨日は、ゼミと忘年会に出席。ゼミでは、光環境とアオキの繁殖様式の関係とか、「サイバーフォーレスト」なるものの紹介など、相変わらず多彩である。忘年会は、なんと浅草橋からの屋形船がその舞台。船からみる夜景も実にきれいで何とも風流ではあるが、時に少し揺れるのが”玉に瑕”か・・・。

・機内では、Stacy(2001)Amer J Bot を久しぶりに読んだ。この研究は、Waser & Price (1989) Evolutionの実験を高木種・大スケールで行ったものということができそうだ。対象樹種はSyzygiumとShoreaの熱帯の高木種2種(散布型はそれぞれ鳥と風)で、各樹種3母樹に対して、Syzygiumでは、自殖、135m、500m、1km、12km、Shoreaでは、自殖、25m、2km、10km、35kmと5つの異なる距離階級に分布する個体の花粉を人工交配させて、結果率、圃場での発芽率、実生生存率、1年生苗のサイズ、Cummulative fitnessを測定している。

・どのくらいの母樹-父親距離で子のパフォーマンスが良くなるかを検討したところ、自殖のパフォーマンスが低いのは当然として、近隣木との交配もパフォーマンスが落ちる。これはもともと遺伝構造があるため、二親性近交弱勢の結果だと考えられる。興味深いのは、いずれの樹種でも数kmの個体と交配したときにできた子のパフォーマンスが最もよく、数10km離れた個体との交配では子のパフォーマンスが下がることである。これをStacyは遠交弱勢と呼んでいるが、高木種で遠交弱勢が生じる証拠を提示した点で本論文は新しい。

・もっとも、きれいな結果が得られているのは結果率で、発芽率や1年生の生存、成長では、交配距離の影響は消滅している。振り返って、トドマツ交雑論文では、まず針葉樹で遠交弱勢(local x locaと比べての・・・)が認められること、19年という長期間が経過しても、その効果が消滅しないことであろう。論文の位置づけという点でこの論文はやはり重要だ。少し丁寧に引用することにしよう。