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西東京市・北海道富良野の森林を舞台にした遺伝,育種,生態などに関する研究ノートの一部を紹介します

Kitzmiller (2005) Forest Science発掘

2007-12-18 | 研究ノート
・今年度は、27日から店じまいの予定である。ということで、考えてみれば、職場に来るのは、あと4日しかない。あたふたと、出張命令とか年末の休暇届など、事務的処理を済ませる。

・再び標高別の関連論文集めを行う。coniferとelevationとcommon gardenなどで検索するよりも、coniferの代わりにpinusとかabiesといった属名を入れた方がうまくヒットすることが分かった。seed transferなどで探してみると、標高域で種子配布区域を制限した方がいいとする考え方はアメリカやヨーロッパではかなり古くからあるらしいことが分かってきた。

・集めた論文の中では、Kitzmiller(2005)によるポンデロサマツの産地試験に関する論文が参考になりそうだ。場所は北カリフォルニアのシエラネバダ山脈で低標高(といっても1000m)と高標高(1500m)の2サイトで、いくつかの地域や標高域を含んだ17産地によるProvenance試験を行っている。低標高では自生苗がいいパフォーマンスを示すが、高標高域ではむしろ移植苗の方がいいパフォーマンスを示している。

・トドマツでは低標高でも高標高でもいずれも自生苗がいいパフォーマンスを示しているので、結果としては逆である。頭で考える限りでは、高標高域こそ自然選択が厳しいので、自生苗の有利性が発揮されそうなものなんだが、カリフォルニア全体がマイルドだからなのであろうか・・・。この論文の最後では、種子配布区域について考察を行っているのだが、高標高サイトにおける移植苗のパフォーマンスの良さからか、少々、どっちつかずの結論となっている。

・論文のイントロでは、種子配布区域と標高の関係に切り込んだ先行研究も紹介されており、非常に参考になりそうである。北カリフォルニアの場合、緯度よりも標高の方がより厳しい種子配布区域を設定すべきという考えがあるそうで、ポリシーとして地理的距離で80kmなのに対して、標高では152mでゾーニングするというポリシーが一般的となっている(現実的には守られていない、のか??)。ともかく、かなり詳しい種子配布区域のマップも掲載されており、各国の事情の違いが分かって面白い。

・この論文の考察では、低標高のサイトでは早期(5年生)のパフォーマンスと25年目の結果は非常に相関が高かったが、高標高では5-12年生の結果と25年生の樹高成長はかなり異なり、20年生と25年生では似ていたことから、20年以上の長期研究が必要だという結論が導かれている。これは、トドマツ標高別でも使えそうなロジックである。この原著となっているConkle(1973)Forest Scienceの古い論文も集める必要があるねえ、これは・・・。