お婆ちゃんの
ハーモニカ♪
ーつづき
お婆ちゃんは、
僕が歌った、宵待ち草、
埴生の宿、あざみの歌、
の時も、ハーモニカを、
口に当てて、
吹いていました。
一生懸命に。
楽しそうに。
目をつぶって。
一部が終わり、
司会の、Yさんが、
マイクを取って、
「これで、
一部を終わります。
15分ほど休憩して
2部を始めます。
2部では、
なごり雪、涙そうそう
など、フォークや
ポップスを歌って
くださいます」
と言いました。
ふと、
客席の、あのお婆ちゃんが、
目に入りました。
お婆ちゃんは、
あのハーモニカを、
ピンク色の巾着袋に
しまっている
ところでした。
僕は、譜面台の譜面を
2部で歌う曲の譜面に変えて
席を立とうとした時でした。
あの、お婆ちゃんが、
中年の女性に腕を支えられて
僕のところまで、
杖を突いて、
やってきたのです。
「お婆ちゃん、
一平さんと
握手、するんでしょ」
中年の付き添いの女性が
言いました。
きっと、娘さん、か
息子の嫁さんでしょう・・。
お婆ちゃんの手が、
僕の目の前に出てきました。
しわくちゃの手。
僕は、手を出して、
お婆ちゃんの手を、
ぎゅっと、握りました。
しゃがれた、小さな声。
「一平さん、
ありがとね」。
手を握ったまま、僕も。
「お婆ちゃん、
こちらこそ
ありがとう
ございました」。
お婆ちゃんは帰りました。
付き添いの女性が、
「お婆ちゃん、
疲れちゃうので、
これで失礼します」
と言って。
2部は、
シェフ・なごり雪
千の風になって・テルーの唄
涙そうそう
で終えました。
あと片づけをしていた僕
のところに、
ケアプラザの職員の方が、
やってきて、言いました。
「今日は、本当に、
ありがとうございました。
実は、
あの、お婆ちゃん、
80才、で
目が見えないんです。」
おわり
♪
(3月1日)