本家ヤースケ伝

年取ってから困ること、考えること、興味を惹かれること・・の総集編だろうか。

子は親を選べない。

2006-07-15 10:03:53 | 社会
*芥川龍之介『河童』によれば、河童の国では生まれる前の胎児に「あなたの生まれて来る環境はざっと以下のようなものだが、それでもあなたはこの国に生まれて来たいですか?」と説明し、この事前ガイドに同意したものだけが目出度くこの世に生を受けることが出来るのだそうである。
 今出生率が鈍化の一途を辿るこの国では、河童の国並に(?)「出生に不同意」の胎児が増えているのかも知れない。

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*秋田のごうけんくん殺害事件・鈴香容疑者の新たな供述が得られたということで、メディアは大騒ぎをしていて(そこに我々ウオッチャーの関心を逸らすとかの「隠された底意」があるのかどうか)ある意味国連問題以上のはしゃぎぶりである。
 スクープ、スクープと、彼らには事態の推移を冷静に見守る姿勢は爪の先程も感じられない。元々彩香ちゃんの変死を事故死と断定した(←当局はこれを否定しているが)警察に重大な遺漏があったのだが。

*故ごうけんくんのお父さんが撮影したという、彩香ちゃんとごうけんくんがシャボン玉遊びをしているテープを我々はこれまで何回も見せられている。彩香ちゃんの死後(ごうけんくんはまだ殺されていなかった段階で)それを贈られた鈴香容疑者が何故か「却って嫌味じゃないか」と報道へ向かって反発してみせたテープである。

 この中で、ごうけんくんがその場を離れた際、彩香ちゃんがシャボン玉を作りながら「まだ遊んでいていいですか?」と何度もお父さんに確かめるシーンがあって、そこまで大人に気を使いながら遊ぶ子供がいるとは驚きであり不憫でならなかったとコメントした女性評論家がいた。

 私はそんなやり取りがあったことまでは知らなかったけれど、生前の彩香ちゃんの暮らしぶりの一端はワイドショーを通じて見知っている。
 朝食も満足に与えられなかった彼女は給食をぱくついたそうである。
 私自身の経験では十代後半から二十代後半にかけては(或いはその後も)朝食抜きが常態であったが、もっと以前はというと記憶がないから朝食は人並みに摂っていたのではないかと思う。お前のことなどどうでもいい? ぁそ。

*給食のない日は彼女が空腹を訴えると母親はカップラーメンを買う金を彼女に与えたそうである。
 ただ鈴香容疑者はプロパンガスの会社が「使ってもいないのに基本料金だけはしっかり取る」ことに腹を立てボンベごとの撤去をしていたため(←それだって電気ポットさえあれば湯沸しくらいは出来る道理だが)、彩香ちゃんはラーメンを食べるためには隣近所にお湯を貰いに行かなければならなかった。

*鈴香容疑者の男友達が昼間から彼女の自宅を訪れることもあって、この際も彩香ちゃんはお小遣いを与えられて外へ出された。
 学校の方へ行けば他に友達もいたということだが、彩香ちゃんの親友はやはり同じ小さな団地内に住むごうけんくん一人だったようだ。彼が不在のときは彩香ちゃんは一人遊びをするしかなかった。

 この一人遊びを不憫に思う団地住人もいたらしいが、話はそこから先へは進まない。「見て見ぬ振り」だとは言わないまでも、一般に「では他人に何が出来るか、何も出来ないじゃないか」という風潮の方が今は勝っているように思う。
 全国各地・各地域での住民同士の横の繋がり・連携は処々綻びをみせているのだ。
 「住民同士の繋がり」と言っても、これはあればあったで、やれ「監視社会」だ「ムラ社会」だという喧しい議論も出て来るわけだが、かと言って「子供たちは社会全体の大切な存在だ」という原則は捨て去るわけには行かないだろう。

 昔は子供たちの小集団を取り仕切るガキ大将が個々の集団にいた。
 あるいは子供たちに何でも教えてくれる物知りのお爺さん・お婆さんがご町内のあちこちにいた。
 かく言う私自身ももうそろそろ、暇を見つけては「地域コミュニティ」(?)に打って出て、悪餓鬼ども相手にやいのやいの文句を言って回る意地悪爺さんの役回りに転じてもいい年頃だが、今現在全くそういった気運にはない。

 てか、全然お呼びじゃないのだ。w とほほ。
 子供たちも「核家族化」の影響か、閉じまくっているように思う。
 「知らないおじさんに付いて行っちゃあ駄目よ」
 ハ-メルンの笛吹きおじさんじゃないけど、他人を信用してはいけないのだ。

 私が仮にあの団地にいて、一人遊びに興ずる彩香ちゃんを目撃していたとしても、恐らく何も出来なかっただろうと想像すると、内心忸怩たる思いが募る。

 いずれにせよ、子供は親を選べない。
 それならば先に生を受けている我々の問題は我々自身で解決するしかないだろう。
 が、生憎その処方箋を私は持っていない。
 あなた、何かありますか。


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