本家ヤースケ伝

年取ってから困ること、考えること、興味を惹かれること・・の総集編だろうか。

「イスラム国」と如何に戦うか。(by WSJ.)

2014-09-03 23:23:13 | web・メディア
 シリア北部ラッカで「イスラム国」の旗を掲げる戦闘員 REUTERS
 「イスラム国」と戦う方法―米国の限られた選択肢
By DANIEL BYMAN 原文(英語)
2014 年 8 月 25 日 20:38 JST

 オバマ米大統領は20日、イスラム教スンニ派過激派組織「イスラム国」を「がん」と呼んだ。この表現はオバマ大統領が意図した以上に適切だったかもしれない。イスラム国は確かに、中東地域で転移する悪性腫瘍だ。だが、がんと同じように、イスラム国を倒すのはとにかく難しいだろう。それに、治療法によっては患者を死なせかねない。

 イスラム国は衝撃的な速さで勢力を拡大してきた。6月にはイラク第2の都市モスルを制圧し、首都バグダッド近郊まで迫った。クルド人自治区を脅かし、「カリフ」を最高指導者とするイスラム国家の樹立も宣言した。オバマ大統領は今月7日になってようやく空爆を決断し、イスラム国の進撃を止めた。

 イスラム国は軍事的には失速したが、敗北したわけではない。だが、この流れを変える方法はある。

 イスラム国の悪事はここまで恐ろしいものでなければ、漫画的とさえ思えるかもしれない。イスラム国は残虐行為を続け、米国人ジャーナリスト、ジェームズ・フォーリー氏を殺害した。イラクではクルド系少数宗派ヤジディ教徒について、男性を抹殺し女性を奴隷として売るよう提唱した。シリアでは、イスラム国に反対する人々をはりつけにした。シリアで民間人に対する残虐行為の多くを行ったのはイスラム国だ。国連の推計によると、シリア内戦ではこれまでに19万人以上が死亡した。

 この人道上の危機だけでも極悪だが、イスラム国は中東での米国の権益にも戦略的な脅威をもたらしている。イスラム国が軍事行動を開始する前から揺らいでいたイラクの安定は今や深刻な危険にさらされている。イラクはシリアに続いて失敗国家に名を連ねる恐れがある。イラクに石油資源があることを考えれば、ことはさらに深刻だ。紛争がさらに広がれば、イランやトルコ、サウジアラビアなどの近隣諸国が介入を強める危険性もある。西側諸国はイスラム国の支持者が自国内でテロを起こすことを恐れている。しかも皮肉なことに、米国は以前よりさらに直接的にテロの脅威にさらされている。米国がイスラム国を空爆したことで、イスラム国は米国への敵意を一段と強めたからだ。

 オバマ政権はイラクとシリアの紛争に巻き込まれないようにしていたが、広がるがんを攻撃するために使用できる「治療法」はいくつも有している。ただ、その全てには1つ共通点がある。効き目がないということだ。

 いくつかの方法がうまくいかないことは明らかだ。イスラム国に拘束されている勇敢なジャーナリストを救出するために身代金を支払えば、さらに誘拐が増えるだけだ。テロ集団はフランスなどの西側諸国の人間を誘拐することを好む。フランスは2008年以降、5000万ドル(約52億円)を超える身代金をテロリストに支払った。米国が金を払えば払うほど、テロ集団が米国人を誘拐する可能性は高くなる。

 もう一つの問題は、米国民は大規模な米軍の展開を望んでいないことだ。6月の世論調査によると、多くの米国民がイスラム国に対して、地上軍による攻撃は言うまでもなく、空爆も支持していなかった。

 それでも方法はある。最も期待が持てるのは複数の中期的な選択肢、つまりイラク政府の政治改革、米軍事力の限定的な使用、現地の能力増強、過激派への感化を未然に防ぐための取り組みといったことを組み合わせる方法だ。ただ、それが効いてくるには年単位とは言わないまでも、数カ月はかかるだろう。

 イラクの政治改革に全てがかかっている。マリキ首相が退陣し、ハイダル・アバディ氏が新首相に指名されたことで、シーア派中心だったイラク政権に他の政治勢力の参加が増え、少数派のスンニ派の一部がイスラム国に反旗を翻す気になるかもしれないという期待が生じている。アバディ氏を支持するシーア派のイランもイスラム国と敵対している。しかし、情勢はせいぜい「最悪」から「ひどい」に変わる程度だろう。アバディ氏はマリキ氏とそっくりで、同じシーア派至上主義の権力基盤を共有しているからだ。

 それでもイスラム国の狂信者をイラクのスンニ派から切り離すことは大いに実現可能だ。イスラム国が6月に勢力を広げた理由の一つは、スンニ派の部族や旧バース党支持者などのスンニ派がマリキ政権に対する戦いに加わったことだった。07年に米軍の兵力が増強されたころ、米国はスンニ派の戦闘員を過激派と対立させた。米国が地上に大量の兵力を持たない状態でスンニ派をイスラム国から切り離すことははるかに困難だろう。だが、アバディ政権がスンニ派の住民に和解を申し出れば、イスラム国は急速に多くの支持を失う可能性がある。

 長期的に何より望ましいのは、現地の軍隊の育成と能力強化を支援することだ。イラク軍はイスラム国の攻勢に遭い崩壊しており、兵士の士気と結束を再構築する必要がある。これは一部には技術的な問題であり、米国の軍事顧問が常駐すればイラク軍の能力向上につながるだろう。

 だが、政治的な問題のほうが深刻だ。イラク軍はイスラム国よりも訓練を受けているし、はるかに優れた装備を使用している(イラク軍が逃げたときに過激派は最新式の米国製武器を大量に獲得したが)のに、兵士の多くは指揮官を全く信頼しておらず、政治指導者への忠誠心もない。従って、政治改革なしには、軍の改革も失敗に終わるだろう。

 イスラム国をイラク国内に押し込めたとしても、イスラム国がシリア側で勢力を維持したままであればほとんど意味はない。窮地に立つシリアの穏健派反政府勢力を、アサド政権とイスラム国家に対抗できるように、さらに強力に訓練する必要がある。

 米空軍や特殊作戦部隊は、イスラム国の勢力拡大を阻止することができる。しかし、空爆では、イスラム国を完全に撤退させることはできない。持続的な成功は、イスラム国が逃走した後に地上軍が領土を占領できる場合にだけ達成される。つまり、イラク政府には増強が必要で、シリアの穏健派反政府勢力には緊急の支援が必要だ。

 米政府はこうしたさまざまな側面で手を打ちながら、イスラム国を封じ込める努力をしなければならない。米国はトルコやヨルダンなどの近隣諸国と連携し、テント村で支援を求めるシリア難民の必死の声に応え、自滅的な行動を思いとどまらせる必要がある。

 われわれにはこれから長いつらい仕事が待っているようだ。シリアは失敗国家だ。イラクもそうなろうとしている。短期的に米国ができる最善のことはイスラム国を劣勢に立たせることだ。現状に背中を向けて家に帰りたくなるが、そうすれば一段と大きな惨事を招きかねない。

(バイマン氏はジョージタウン大学エドマンド・A・ウォルシュ外交学院で安全保障研究プログラムを担当する教授で、ブルッキングス研究所の上級研究員)

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 以上ウォール・ストリート・ジャーナルからの引用終わる。
 アメリカ人記者の論説は、この「戦争」の直接の当事者のものであるだけに、その辺の日本人記者たちのものとは比べものにならない程痛々しい切迫感・切実さが漂っていて痛切に感じられる。

 「アメリカの思潮・アメリカの思想の原理的骨格、哲学的背景は奈辺にあるか」という点について、既に私は私なりの回答を提出している。それは1.に清教徒主義であり、2.にプラグマティズムである。これがかなり真相に近いものなのか、或いはまるっきり見当違いの妄想なのか、その判断は私以外の誰かがすればいいことだ。

 では1.と2.から何が結論として導き出されるかというと、1.に反共主義・反イスラム主義であり、2.に利潤追求活動の絶対的肯定である。共産主義もモスリムも、彼らにあっては「絶対悪=悪魔」なのである。
 ロシアも中国も「大国」であるが故に「アメリカの敵」足り得る条件は充分備えているが、かと言って「核戦争」が封印されて出来ない以上は、互いに擬似的であれ「友好的関係」を目途とせざるを得ない関係にある。

 ☆「反共」という点では今世界の思潮をリ-ドしているWEB関連各社の思想的骨格も例外ではない。私の場合で言うと、もう数ヶ月以前の話になるが、twitterが或る時私にあれこれ「ここを見たらどうか?」とクリックを誘う案内を送りつけて来たことがあったのだが、その中に某共産党のF書記局長のツィ-トが含まれていたことがあって、私は「ああ、この人たちは何にもわかっていないんだな」と愕然としたものである。彼らにはマルクスもレーニンもスターリンもトロツキーもドイッチャーもマルクーゼも毛沢東も金日成も日本共産党も・・何もかもみんな同列同類の「共産主義者」なんだなと、私は了解せざるを得なかった。ただ彼らは反共・反イスラムを前面に出す愚は当然ながら回避しているに過ぎないのである。

 アメリカはこれまで、力で捻じ伏せることが可能と見れば情け容赦なく実力行使で相手を屈服されることを目指して来たが、それが全部成功したと思っている人は少ないだろう。むしろ失敗に終わったケースの方が多いのではないか。
 枢軸国撲滅の総仕上げとして、太平洋戦争に於いて「JAP」を原発2発で「GIVE UP」させることは出来たが、ではそれ以降他に「降参した国」の名を挙げて見ろと言われても、私は即座には列挙すべき名前が浮かんで来ない。朝鮮半島でアメリカは「勝った」か。ベトナムで「勝った」か。アフガンではどうなったか。中東ではどうか。どこをとっても勝ててはいないだろう。それどころか、多数の現地の人間たちを老若男女の別なく殺傷しただけでは止まらなかったことはみんな知っている。アメリカの青年たちも多数が心身を病んで帰国して来た。その半病人たちがアメリカ社会に病理を撒き散らしている。と言って、アメリカは「世界の憲兵」たる地位を返上したくても出来ないのだ・・。


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