本家ヤースケ伝

年取ってから困ること、考えること、興味を惹かれること・・の総集編だろうか。

寺島実郎の『脱9.11』論を導きの糸として・・。

2006-09-11 11:12:49 | 世界
寺島実郎財団法人日本総合研究所所長(三井物産戦略研究所長)が今朝もNHKのラジオインタヴューで持論の『脱9.11』論を展開していた。日本総合研究所は内閣府所管の財団法人だから現自公政権にあっては『獅子身中の虫』ということにならないのか?!なぜなら寺島実郎氏の議論は計らずも、いつまでも「ブッシュのポチ」を決め込んで尻尾を振って追随している現政権への全面的な批判となっているからである。

(cf.読書録455(2004.10.30)寺島実郎『脅威のアメリカ 希望のアメリカ』(岩波書店、2003年))

 現に『国民新聞』は、寺島氏を「反米、反安保、反日、反自衛隊」に転向した輩と決め付けている。w

*五年前『9.11』で世界はパニックに陥った。ブッシュは「これは一部テロリストに拠る犯罪などではなく、戦争である」と米国民を煽り立てた。この指摘はむしろ正しかったと私は思う。一時は6,000人とも7,000人とも報道されたこの連続自爆テロに拠る犠牲者数は後になって3,000人未満と訂正された。3,000人でも膨大な数だが、その後の「戦争」でアメリカは何人「敵」を殺したか?
 「正確な数字(!)」を私は持たないが、アフガン~イラクで5万人は優に超える人々が殺されただろう。「一人殺されたら十人殺してやる」という軍事力崇拝のパワーポリティックスがここにある。理由なく殺されたこれら5万人の人々全てがアルカイダだなどとは誰も言わないし言えないだろう。報復とその報復への報復という連鎖は不毛で退廃的である。

*そもそも「無差別テロ」などと言う言い方には私は反対で、彼らイスラム原理主義者(過激派)にとってはこの間の「自爆攻撃」は全て「イスラムの教義に則った聖戦=ジハード」なのである。
 一般に己の一命を捧げて「自分達は正しいことをしているんだ」と、そう確信している人たちの行動を力で止めるなどと言うことは至難の業である。

 「教義」こそ違うが先の大戦に於ける我が大日本帝国も似たようなことをして来なかったか?
 戦時中大讃美された「神風特攻隊」がそれである。
 アメリカは先の大戦では原爆2発の「ダメ押し(?)」で大日本帝国を降参させてしまったから、成る程「神風」は吹き止んだかも知れないが、彼らイスラム原理主義者(過激派)はどこの国家にも忠誠を誓わず、無論所属もしていない掴み所のないアメーバ状の組織であり離合集散は思いのままである。しかもその上、彼らの殲滅を目指した「無差別」攻撃は自爆攻撃とはおよそ無関係な一般市民を大量に殺すことによってより一層の反米感情を煽り立て、結果として一人、また一人と「自爆戦士」を日々育成してしまうのである。
 軍事力で我が意を通すことが出来るとブッシュらが本気で思っているのだとしたら、それは西部劇的錯覚に過ぎないだろう。

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*イラク攻撃を正当化した根拠は今どうなっただろうか。

1.大量破壊兵器の存在?
  どこを探してもそんなものは出て来なかった。

2.イラクがアルカイダを支援した?
  それどころか、フセイン政権は何度接触を希望されても突っぱねていた。(↓ 下記ニュース参照)

3.でもフセイン独裁政権を倒したんだからいいじゃないかって?
  余計なお世話だ。民主化は輸出出来ない。
  バース党の退潮に比例してシーア派が台頭したからと言って、今度はイラン共々シーア派を一掃するつもりか?

4.石油利権もあることだし、アメリカはフセインを倒してイラクに親米政権を打ち立てたかったのである。しかしアメリカのこういう試みが成功した例(ためし)がない。

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*鈴木元都知事がかつて青島都政を評して「サリンを都政に撒き散らした」と発言して顰蹙を買ったが、この伝で行けば「ブッシュはアルカイダという猛毒を世界中に撒き散らした」と言えるのである。仏紙によれば我が国も自爆攻撃の標的の一つになっているそうである。高いビルは危ないのかなあ?(汗。

*「アメリカのご都合主義にいつまでも付き合っていると話はますます拗れて世界の秩序はおかしくなるぞ」ということに世界中が気づきつつある。ECの親米政権は幾つか倒れたし、フランスは元々距離を置いている。盟友・イギリスではブレアの対米協調が槍玉に挙がっている。
 「上海」には中・露協調の枠組が出来た。A・A諸国にも中南米諸国にも「大きな声では言えないが、アメリカのやり方はどうも・・」という国は少なくない。

 人も国家も、他者からの批判に晒されてこそ自らを磨くことが出来るのである。
 我が国はこのままでは一番最後に、アメリカに向かって「NO!」と言える国となるだろう。自公は元より、自称右翼の民族派までもが忠米路線を主張する変な国である。w

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*アメリカでは五年前の死者の遺体の一部がまだ特定されていない現状だが、跡地グランドゼロでは世界最高層の「フリーダム・タワー」建設に入っている。この国は元来センチメンタリズムに浸っている時間をそう多くは持たないドライな国だ。
 死者は死者、もう生き返っては来ないんだから、前を向いて跡地活用しよう、生きている人間優先だと、そういうことだろうか・・。

 アフガン~イラク戦争の「大義」にもその「実効性」にも内外から批判が噴出している今、ブッシュは「このテロリストたちとの闘いは、対ファシズム・対全体主義・対共産主義との闘い同様イデオロギーの闘いである」とまるで「神学論争」みたいなことまで言い出している。そうであれば尚更のこと、「キリスト教社会とイスラム社会の文明の衝突」然とした非和解的な闘争に我々が首を突っ込む理由は薄れて来るだろう。

(以下は関連のニュースを3題引用します。長いですよ♪)

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米国人はイスラムに改宗を=アルカイダ・ナンバー2がビデオ 2006年 9月 3日 (日) 11:46(時事通信)

【ドバイ2日】11日に米同時多発テロの5周年を迎える中、国際テロ組織アルカイダのナンバー2、アイマン・ザワヒリ容疑者(写真=2001年11月撮影)が、特に米国人にイスラム教への改宗を求める「イスラムへの招待」と題するビデオテープが流された。ビデオには、米連邦捜査局(FBI)がアルカイダ支援者として手配している米国人のアダム・ガダーン容疑者も登場した。

この48分間のビデオで、ザワヒリ容疑者はガダーン容疑者を「米国人のアッザム」として紹介し、西欧人、特に米国民に対して、アッザムの非常に真摯な言葉に耳を傾けるよう求めている。

ガダーン容疑者はアラビア語に翻訳された言葉で、「私はすべての米国人および異教徒に、イスラム教を信奉するよう呼び掛ける」と語り、コーランを唱えた。ターバンを巻いた姿で登場した同容疑者はさらに、「特に、ブッシュ(米大統領)のアフガニスタン、イラク、その他のすべての場所でのまやかしの十字軍作戦のために戦っている者たちに強く改宗を求める」と述べた。

FBIによると、ガダーン容疑者は1995年にイスラム教に改宗、98年にパキスタンに渡航した。アルカイダのために書類を翻訳したなどとして、米国はアルカイダの支援者として同容疑者を手配している。 〔AFP=時事〕

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米、出口なき戦い 9・11から5年 2006年 9月 3日 (日) 03:03
(朝日新聞)

 超大国の中枢を襲った9・11同時多発テロから5年。国際テロ組織アルカイダの拠点だったアフガニスタン攻撃を皮切りに始まった米国の「対テロ戦争」は今、イラクの泥沼の中で方向を見失いつつある。アフガンではこの間、政権崩壊で弱体化したはずのイスラム原理主義勢力タリバーンが息を吹き返した。テロ組織の温床となる「失敗国家」はソマリアなどアフガン以外にも広がったままだ。米国の誤算はどこから生まれたのだろうか。

 首都カブール北部の環状交差路。屋台が100軒ほど並んでいる。

 「米兵を見ただけで、殺されるんじゃないかと怖くなるよ」。リンゴを売るラウズさん(32)は屋台にある直径5センチの二つの穴を指さした。機関銃の弾が貫通した跡だ。

 5月29日朝、近くで米軍トラックが追突事故を起こし、十数台が巻き込まれた。血まみれの人々が路上に横たわる。群衆が米兵をなじり、投石を始めた。米兵は装甲車から機関銃を乱射した。

 「アメリカは出ていけ!」。怒った数千人が都心部に集結。新設されたホテルに投石し、ビルの外壁にあった親米派カルザイ・アフガン大統領の肖像画を焼いた。

 この地域に住むタジク人勢力は、アフガン戦争で米軍に協力し、イスラム原理主義勢力の旧タリバーン政権を崩壊させた人々だ。ラウズさんは「米国が復興を助けてくれると信じた」という。

 それから5年。近辺では工場のひとつも稼働しない。自宅は毎日停電する。収入は月6000アフガニ(約1万4000円)。家族8人の暮らしは厳しいままだ。「米国を支持する者などもういないよ」

 アフガン南部ではタリバーン勢力が盛り返しつつある。5月以降、数百人で警察署を襲うなど攻撃が大規模化。7月にはヘルマンド州の二つの村を一時的に制圧した。

 勢いを増すのは、隣国パキスタンから戦闘員の流入が続くからだ。潜伏する30代のタリバーン関係者は「国境警備は、わいろを渡せばどうにでもなる」と打ち明けた。

 米軍と国際治安支援部隊(ISAF)は空爆と地上の両面作戦を続けるが、民間人とタリバーンの見分けは一層難しくなっている。

 米国の対テロ活動は、無政府状態が15年間続くソマリアでも頓挫している。イスラム勢力を束ねる武装組織「イスラム法廷連合」が勢力を伸ばし、「急速にアフガン化している」(アラブ紙)とされる国だ。

 米国は、国際テロ組織アルカイダの隠れ場と断定。今年に入り、法廷連合と対立する武装勢力に資金提供する形で対抗策に乗り出した。だが、数百人の死者を出した末、6月に首都を制したのは法廷連合だった。

 戦乱に疲れた市民の間では法廷連合への支持が高まっている。首都でラジオ局に勤めるアリ・モハメドさんは「治安が回復し、静かな生活が戻った」と歓迎した。

 英BBCによると、首都制圧後、米国は方針転換して法廷連合に交渉を呼びかけ、テロ容疑者の引き渡しを頼んだが、拒否されたという。

 立法議会議長に就いたイスラム法学者のダヒール・アウェイス氏はAP通信に語った。「イスラムの教えに従うことを米国がテロ呼ばわりしても、我々には関係のないことだ」

 アフガンで米国が直面した問題は次の3点にある。(1)民衆と兵士の区別のつかないゲリラ戦での軍事力の限界(2)戦後の治安・経済の荒廃と反米感情の高まり(3)周辺地域から注がれる反米闘争への支援の輪――それらはすべてイラクにもあてはまる現実だ。

 ブッシュ米大統領は8月31日、イラクを「テロと自由の戦いの最前線」と呼んだが、イラクの武装組織からすれば「占領軍から自由を勝ち取る戦い」(スンニ派の指導者)だ。民衆は宗派対立の渦中にあっても、反米感情では一致している。

 「米国が今、必死に立て直そうとしている社会の利害調整や秩序の枠組みは、すべて戦前に存在していたものだ。米軍自身が無計画な戦争でイラクを100年前の状態にしてしまった」と、ヨルダン大学戦略研究所のブレザット氏は言う。

 そうした経過から浮かぶ結論は、軍事力偏重の対テロ戦の行き詰まりではないか。5年前、ブッシュ氏自身が打ち出した「外交、情報、司法、金融、軍事力の総力を動員する戦い」(01年9月の両院合同会議演説)は、外交や戦後処理の準備を後回しにする軍事先行の戦いに変わり、世界を遠ざけてしまった。

 米政府は、対イスラエル闘争を続ける組織ヒズボラやハマスまでも、アルカイダと同列に「自由の敵」と規定した。中東から見れば、それは米国が普通の民衆を敵に回すことにも等しい。「ある者には『テロリスト』でも、別の者には『自由の戦士』に映る領域がある」(01年10月のパウエル前米国務長官の上院証言)との慎重な外交姿勢は2期目のブッシュ政権からはうかがえない。中東の対米失望感は、米国がこの夏、イスラエルによるレバノン攻撃を長らく黙認したことで決定的になってしまった。

 この間、中央政府が機能不全または存在しないソマリアのような破綻(はたん)地域は一層の広がりを見せている。テロという「国境を越えた病理」(ライス米国務長官)に立ち向かうには、地球上の荒廃地をなくす地道な努力が必要だと誓い合った5年前の教訓は、もはや遠い昔話のようだ。

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旧フセイン政権とアルカイダのつながりなし-米上院報告書 2006年 9月 9日 (土) 17:05(時事通信)

【ワシントン8日】米上院情報特別委員会は8日、イラクのフセイン元大統領と国際テロ組織アルカイダとの間につながりはなかったとの報告書を明らかにした。ブッシュ政権はイラク戦争開戦の大義名分の一つにフセイン政権とアルカイダの協力関係を挙げており、これが否定されたことで新たな政治論争が起こりそうだ。

報告書によると、フセイン元大統領はアルカイダを信用しておらず、イスラム原理主義者を政権にとって脅威であるとみなし、アルカイダからの支援の要請を拒否していたという。

同報告書は、今年6月に米軍によって殺害された「イラクの聖戦アルカイダ組織」の指導者ザルカウィ容疑者がフセイン政権にかくまわれていたとの見方も否定。フセイン政権は同容疑者の身柄を拘束しようとしたが失敗したと述べた。また、フセイン政権はアルカイダ側から何度も面会の要請を受けたが、これを拒否したという。
〔AFP=時事〕

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 以上引用終わり。


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