フィクション『同族会社を辞め、一から出直しオババが生き延びる方法』

同族会社の情けから脱出し、我が信ずる道を歩む決心をしたオババ。情報の洪水をうまく泳ぎ抜く方法を雑多な人々から教えを乞う。

いろいろなことを感じる秋

2023-11-06 07:13:10 | 美しく生きるという事

10月の終わり頃に東北旅行に行ってきました。

初日は下北半島の恐山霊場。ここは絶対に行ってみたかったところでした。

白い小さな石ころで埋め尽くされて所々湯気が出ている、硫黄の匂いがする、広い景色が広がり、お地蔵様やほこらがあり、大きな観音様が我らを見下ろしています。

天気は灰色の雲が広がり時々晴れ間が出ましたが、さほど怖さを感じることなく順路を進んでいきました。

湖の浜には『極楽の浜』と看板が立っていました。

静かで心を乱す何ものもなく、極楽とは湖なのか、と思いました。

翌日が奥入瀬渓流、翌々日は角館武家屋敷散策。

最終日は平泉の中尊寺を見て回りました。

 

日曜日を挟んで月曜日から仕事でしたが、どうにも気持ちが入りません。

気持ちが極楽の浜に行ってしまっていました。

私は今どこにいるのか分らなくなってしまいました。

旅行に行く前から計画を立ててそれを実行するだけだったのに、どうにも気持ちが入りませんでした。

自分でもこれはまずい、と感じていました。が、心ここにあらず状態だったのです。

翌火曜日も同じような感じでした。

水曜日からやっと仕事モードに戻ったような気がしました。

ああ、そうだった、こうやっていた、こう動かないといけない、

違う事をやる人がいたら声を掛けなければならない、など、それまでの私に戻りました。

 

先日、レンガ敷きの道を歩いていて、ふととある考えがよぎりました。

もし、今ここで大地震が起きて道が盛り上がり割れて一瞬のうちに死んでしまったら、私はきっと死んだ事に気づかずこの場所でずっと生きていると信じ込んでいるのではないだろうか?と。

身体は死んでしまってもそれまでの魂も同時に死ぬとは考えられなくて、身体から抜け出してその場を浮遊しているのではないかと思ったのです。身体という行き場を失い、ひたすらさまよう。そう、地縛霊と呼ばれるものは、きっと存在する、と感じた瞬間でした。

私という存在、歴史のページには絶対に残らないけれど、これまで幾人もの恩人と出会い、子をなし、その親として生きてきました。今や孫の祖母として君臨なぞ絶対にしてはいませんが、孫にはばあばとして存在しています。

その歴史が一瞬のうちに失われたとしたらとても悲しいです。子どもの頃頑張ったこと、褒められた事、悲しかった事、嬉しかった事、楽しかった事、身体が失われたらその内的歴史がなかったことになる、それはとても我慢出来ないだろうと思うのです。

それからうちの近所でも、大きな住宅に住んでいたご老人が亡くなり、程なくして壊され更地となり新しい家が建てられることが多く見られますが、そのご老人が何十年もの間そこに住まわれていたこと、そこで生活をしていたこと、近隣の方々と交流していたことなどを考えると、その家がなくなってしまうことに胸を痛めます。

そのような事はこれまで何度となく繰り返されてきたことでしょう。跡地に立てられた家に引っ越してきた方はそれまでの事を考えることなく生活しているでしょう。

多分そんな事を考えるようになったわけは、私がそろそろそんな時期を迎えようとしているからだと思うのです。

私の歴史、家の歴史、子ども達の歴史、あるいは、私の両親の事かも知れません。

私の両親はもう高齢ですが健在で夫婦で暮らしています。

そこに私が昔使っていたものや本や雑貨があり、それを見たりすると一気に昔に戻ってしまうのです。

 

そこで、昨年亡くなった人や愛犬の事を考えます。

彼らは、きっと自分が死ぬと思っていなかったから未だにその辺りをさまよっているかも知れません。

少し前、夕方私ひとりでリビングにいるとき、かすかな寝息が聞こえているのに気づきました。

え?耳を澄ますと、スースーとかつて愛犬が立てていた寝息が聞こえるのです。

それに気づいて、何か他の事をしてまた耳を澄ませたときには聞こえませんでした。

いるの?そこにいるの?

 

この世って、あの世と混在しているのかもしれないですね。

そして、子の誕生とは、あの世から魂をこの世に引き戻す事なのです。

なんて、考えています。

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