場末の雑文置き場

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「ブーリン家の姉妹」感想

2014年03月24日 | 小説

フィリッパ・グレゴリーの「ブーリン家の姉妹」を読んだ。

アン・ブーリンは割と嫌な女として描かれているけど、私はこのアン、嫌いじゃない。というより好きかもしれない。
アンはとても頭が良くて気性が激しくて、男性に従順ではない女性だ。意地悪で狡猾なんだけど、虚勢を張りながらも苦悩しているさまがものすごく伝わってくるし、彼女の末路を知っているだけに哀れさのほうが勝る。

それよりも、ヘンリー8世に本気で嫌悪感が湧いた。あまりにも自己中で。
でも、この描写でもまだ控え目なほうかもしれない。ヘンリーはかなりたくさんの人を処刑してきたけど、そのことについてはわりとさらっと流してあるから。史実の彼はもっと残虐で嫌な奴だったんじゃないかな。

面白い小説なんだけど、読んでいてだんだんやりきれない気持ちになってくる。結末はアレだし、人間の汚さが嫌というほど描かれていて。家の繁栄のために一族の娘を利用するだけ利用しておいて、立場が危うくなったらポイ捨てする親戚一同とかね。

アンは苦労して苦労して、何年もかかってやっと王妃の座をつかむけど、全く幸せにはなれなかった。それどころか、毎日不安に苛まれ、ストレスを溜める日々が続く。
ことさら偉そうに振る舞ったのも、その憂さ晴らしのためだろう。それでまたどんどん味方を減らしていくという悪循環。

幸せそうな人がほとんど出てこないんだよな。宮廷の人たちは、我侭で傲慢な王のご機嫌取りに終始している。ちょっと機嫌を損ねれば首が飛ぶから日常会話も命懸け。

映画版も見たけど、こっちはヌルかった。登場人物がみんないい人すぎてビックリ(ドロッドロだった原作と比べてのお話)。でも、これはこれで全然別物として楽しめたかな。

長い原作なら、映画版を思い切って別物にするのもアリだと思う。「ハリー・ポッター」なんて、原作に忠実にしようとしすぎて映画的なテンポが失われているように感じたから。

ただし、ドラゴンボールの改変は許せん。


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