場末の雑文置き場

好きなことを、好きなときに、好き勝手に書いている自己満ブログ。

「オリバー・ツイスト」感想

2015年11月28日 | 小説

「Oxford Bookworms」シリーズの「Oliver Twist」を読んだ。

STAGE6にしては英文もかなり易しかったし、話がサクサク進むので割と楽しく読めた。昔、完訳版を読もうとして途中で挫折したことがあったけど、英語で書かれているこちらのほうがむしろ読みやすかった。

この話は要するに、勧善懲悪物だね。良い子のオリバーは幸せになり、悪者どもは滅ぶ。善良なのに報われなかった人がたった一人だけいるけど、その話は後述。

主人公のオリバーは、ロンドンの裏の世界に足を踏み入れることになる。オリバーはとても良い子なので、強要されても、食うのに困っても、犯罪に手を染めることを拒み続ける。ご立派なことで。

でもなあ。オリバーをこういう風に描くことが、犯罪に手を染めさせられてしまった子供たちを責める役割を果たしているような気がするんだよな。
貧しい、親もいなくて生きる手段のない子供が盗みなどの犯罪に手を染めることが、そんなに責められるべきことか? 確かに盗みは悪いことだよ。でも、弱い人間が生きるためにするなら仕方ないんじゃないか?

高校生の頃、芥川龍之介の「羅生門」の解説で国語の先生が言ってたことに強烈な違和感を持ったことを今でも覚えている。
「羅生門」は「下人の行方は、誰も知らない。」という一文で終わっている。先生の言うには、主人公は悪事に手を染めたから人から見向きもされなくなった、人は正しく生きなければならないという教訓がこの物語に込められているんだと。

本当にそうかな。あの主人公は追い詰められていた。盗みを働かなければ生きていけない状況になったことをはっきりと自覚し、それに沿った行動をしただけだ。つまり、主人公は黙って死を受け入れるべきだと言いたかったのかな。
先生は多分、盗むこと以外に生きる手段がない、というところまで追い詰められたことはないだろう。私もそうだけど。そんな恵まれた人間が、生きるためには犯罪に手を染めるしかない、弱い立場の人を責められるのか? それは傲慢なんじゃないか?

念のために書いておくと、あれは先生個人の意見で、芥川自身はそんなつもりで「羅生門」を書いたんじゃないと思う。

少し脱線してしまった。「羅生門」から「オリバー・ツイスト」に話を戻す。

オリバーは愛され体質の主人公だ。それに運も良い。最後は当然、オリバーにとってハッピーエンドになるわけだけど、オリバー自身は特に何もしていない。周りの人たちがオリバーのために勝手に動いてくれて、幸せが転がり込んできた感じ。オリバーはまだ幼い少年だから仕方のないことだけど、「主人公」としての魅力はイマイチかな。

主人公のオリバーよりもずっと印象的だったのが、ナンシーというキャラクター。この子がまた、不憫なんだ。
「善良な」人は基本的に皆最後幸せになっているのに、ナンシーだけはなんにも報われない。報われなさすぎて泣けてくる。あんなに良い子なのに。オリバーのためにあんなに尽くしたのに!

それにしても、ナンシーはどうして大して親しいわけでもないオリバーのためにあそこまでしてくれたんだろう。リトールド版だから省略されているだけで、元の話では二人の絆がもっとしっかり描かれていたりするんだろうか。多分そうなんだろうな。

ナンシーのバックグラウンドについても、リトールド版なのでかなり省略されているみたい。ビル・サイクスの愛人らしいことがなんとなく察せられる程度。
だから彼女の置かれている状況を理解するのは難しかった。ナンシーは「今更この世界から抜けることはできない」とブラウンロー氏の保護を拒んだ。そこに到るまでに、過去にどんなことがあったんだろう。かなり昔から、裏の世界で生きていたことが想像できるけど。


劇場版「媚空」感想 その2

2015年11月19日 | 特撮

その1

最初の記事で書ききれなかったことをここに書いておく。

この映画、私としては珍しいことに、二回も観に行って1200円もするパンフレットまで買ってしまった。この勢いだと、もしかしたらDVDだって買ってしまうかもしれない。
満足度のアンケートで平均(87.1%もあったらしい。すごい!)より低い70%と答えたくせに、よほど気に入ったみたいだ。

全体的に暗い映画だし、見終わっても爽快感はない。ラストもハッピーエンドとは言い難かったし、そう遠くない未来に破滅が待っていそうな気もする。でも、そういうところも含めて好き。
主人公がただ強いだけじゃなくて、ずっと苦しみを抱えながら生きていて。自分が倒してきた人たちの幻影に悩まされているところは、少し前に見た映画「グラスホッパー」に出てきた「鯨」というキャラクターを思い出した。
媚空が代知を拒否し続けているのは、純粋な彼を巻き込みたくない、自分と同じ苦しみを味わわせたくないという気持ちがあるからだと思う。代知にはまだそれがわからないみたいだけど。

女の子がかっこよく、男の子が可愛いところが私のツボにクリーンヒットしたんだと思う。
強いヒロインが、男が絡むと突然弱くなって「守られるヒロイン」に転身してしまってガッカリ、ってことは何度もあった。この映画にはそれがない。
媚空は最後までひたすら強い。その事実を周りが普通に受け入れていて「女としての幸せを~」と説教かます奴もいない。だから安心して見ていられた。
媚空のおっぱい甲冑と、紗夜の戦闘スタイルの無駄な露出度の高さはやっぱり少し気にはなるけど。

「媚空」はとっても面白かったんだけど、これがきっかけで牙狼シリーズにはまるってことはなさそう。私はあくまでも「媚空」が好きなだけで。
ちょっと調べたところ、本編は基本的に主人公が男性のようだし。ヒロインはただの足手まといか、主人公のサポート役みたいだしな。


「忠臣蔵」にケチを付けてみる

2015年11月17日 | その他

私は「忠臣蔵」の物語があまり好きではない。はっきり言ってしまうと、嫌いだ。いつも、このストーリーには強烈な違和感をおぼえる。赤穂浪士たちの、あの集団ヒステリーみたいな感じが気持ち悪くて。こんな話が大勢の人に支持されているのが、不思議で仕方ない。

忠義ってものを美しいと思えないからかな。「伽羅先代萩」の正岡も苦手。そんなものより、自分や家族の命を大事にしろよって思ってしまう。

浅野は本当に短気でアホなどうしようもない殿様だ。仮に吉良からひどいいじめを受けていたとしても、行動が軽はずみすぎる。立場上、そんなことをしたらどういう結果になるかくらいわかるだろうに。浅野一人が罰を受けるのならそれでもいいが、奴のせいで大勢の藩士が路頭に迷ったわけで。

赤穂浪士たちがこのバカ殿の無念を晴らすために立ち上がることに、ちっとも感動できない。「君君たらずとも臣臣たらざる可からず」と言いたいのかな、と冷めた目で見てしまう。

同調圧力の強さも、私が「気持ち悪い」と感じる要因のひとつかな。「討ち入りになんて参加したくねえよ」と言わせない雰囲気がある。参加しなかった人間を、フィクションの中で悪者として描いていたりするし。いつか見たドラマでも、堀部安兵衛?だかが、参加を渋る連中を斬り捨てようとしていて、うげえと思った。

浅野のカミさん、瑤泉院が大石内蔵助に「なんで敵を討ってくれないの」って責めるシーンがあるけど、私はあれを見るたびにイラっとくる。いや、あんたの旦那のせいで家臣たち全員路頭に迷ってるんですよ。むしろ「迷惑かけてすみませんでした」ってなるのが筋でしょうに。
しかも敵討ちとなれば命がけだ。自分は安全なところにいながら、他人に命を捨てさせようとする。昔のお偉いさんだから当たり前のことなんだろうけど、やっぱり傲慢だと思う。

あとこれ、吉良側から見たら完全な逆恨みだ。「喧嘩両成敗」って言うけど、吉良は一方的に斬りかかられただけだし。浅野をいじめたという話も、創作ではないかと言われているし。あまりにも理不尽に思えて、学生時代は、「吉良上野介を弁護する」とか「吉良の言い分」なんかを必死に読んでたな。

討ち入りのやり方だって結構アレだ。深夜の、みんなが寝ている時間を見計らって、一方的に攻めてきて。卑怯だと思う。みんな寝ぼけてるんだから、そりゃ勝てますわ。しかも12、3歳の、丸腰の子供が必死に逃げているところを惨殺したりもしている。鬼だ。

吉良上野介の養子、義周もまた可哀相で。あの事件のあと、ずっと死ぬまで監禁されていて。二十歳かそこらで亡くなるんだったかな。浅野のバカ殿の百倍は可哀想だ。というか浅野は自業自得だ。


劇場版「媚空」感想

2015年11月15日 | 特撮

「魔戒ノ花」本編も見ていないのに、公開初日に観に行ってしまった。TVCMを見て、メインの二人とその関係性が自分の好みっぽい予感がしたので。結果、大正解だった。

強くてかっこいいお姉さんと、少年っぽい小柄な青年の組み合わせって大好物なんだよね。男の子が恋愛的な意味合いじゃなく、目標として年上の女性に憧れてるっていうのもなかなか無いパターンのような気がして、そこにも惹かれた。媚空のほうが少し背が高そうなところもいいね。

アクションはなかなか良かった、と思う。アクションもののヒロインって、ヒョロッヒョロで「本当に戦えるのかよ?」って思ってしまうようなのも多くて(「進撃の巨人」実写版のミカサとか)、筋肉女子好きとしては大いに不満だった。その点、媚空はリアルに強そうなのがいい。腹筋が眩しい。

ストーリーは正直薄いかなと思ったけど、萌え映画としても燃え映画としても最高だった。
代知はとにかく可愛い。童顔だよな。あれで成人してるっていうのがたまんないね。
そして媚空がかっこよかった。戦闘力が異常に高いし、代知のピンチに颯爽と現れる姿が素敵すぎた。よくある創作と男女逆転しているところが好きだ。このコンビ大好きだ。

ラスト近くまで、代知は死ぬんだろうな、と思ってヒヤヒヤしながら見ていた。媚空さん容赦ない人っぽいし、体を乗っ取られた代知もろとも始末してしまうかと。だから最後まで生き残ってホッとした。
どうやら私は媚空のことを少し誤解していたみたいだ。媚空にもちゃんと感情はあったんだ。代知の心の奥に潜っていくときに恐怖を感じていたり(止めに入ったもう一人の媚空は彼女の内心の恐怖を表しているのだと勝手に解釈)、代知を救おうとして必死になっている姿が人間臭くて良かった。

スタッフロールの後にもちょっとしたシーンがあって、続きがあることを匂わせるような感じで終わった。師匠の再登場はありそうだけど、代知はどうだろう。
代知、いいキャラだったからTVシリーズにも出てきてくれないかなあ。無理かなあ。


体操種目別後半感想(2015)

2015年11月02日 | スポーツ

種目別二日目の放送、一番の不満はドラグレスク様の演技をカットしたこと。あの伝説の選手が帰ってきてくれたというのに。実績も人気も十分の選手なのに。しかも銀メダルだぞ。映してよ。
跳馬なんだからそんなに時間かからないじゃん。ウィッテンバーグもアブリャジンも見たかったよ。

あの場にヤン・ハクソンがいなかったのは寂しいけど(怪我で今大会は欠場)、いい試合だったっぽいね。白井とリ・セグァン以外カットされたので詳しいことはわからんが。
金メダルが去年に引き続きリ・セグァン、銀メダルがドラグレスク。セグァンさんは30歳、ドラグレスク様は34歳。二人とも大ベテランなのにすごいよ。

セグァンさん、去年は演技後、足がものすごく痛そうに見えて、あのまま故障してしまわないか心配だったけど、杞憂だったようだ。今年も無事に戻って来てくれて嬉しい。
去年と同じくD6.4×2という鬼構成。そして去年よりも余裕が感じられる演技だったと思う。

団体戦での演技を見て、アブリャジンが金メダルとるかも、って予想してたんだけど、6位に終わった。得点を見ると、一本目は失敗したみたいだね。実施した技はリ・セグァン?
銅メダルのウィッテンバーグの二本目も多分リ・セグァン。D6.4を実施する選手が三人って、ちょっと前だったら考えられない。すごいハイレベルな戦い。こんな試合がダイジェストなんてもったいなさすぎる。

白井は残念だったね。でも団体戦のときの跳馬の演技は素晴らしかったよ。ただ、もう少しDを上げないとメダルには遠いかな?

平均台もバイルズ以外カットされてしまった。
テレビって本当に日本選手以外には興味ないのね。それが大半の視聴者の需要で、それに合わせてるだけなんだろうから仕方ないけど。

平行棒からLIVEになったのは良かったよ。でもこのためにその前の放送がかなり駆け足だったことを考えると複雑だなあ。

平行棒の金メダルはヨウ・ハオ。ヒカルXをやってくれるところが大好きで、平行棒では一番応援していた選手。だから嬉しい。アホみたいに高い難度と素晴らしい実施を両立させていたところがお見事!
フジテレビのキャッチコピーで「名脇役」扱いされてたけど、ここで主役に踊り出たね。しかもこんな異常なレベルの争いで一位って、ホントバケモンだよ。つり輪でも二位だったし。
ヨウ・ハオって妙に既視感のある顔をしている気がする。いろんな人に似てるって思われてそう。私には綺麗な北村有起哉に見える。

ベルニャエフも16点超えで銀メダル。デン・シュウディとステプコは同率3位。中国がダブルメダル!
田中佑典は7位だったけど、綺麗な演技をしていた。ただ他の選手がすごすぎただけだ。白井の跳馬と同じで、Dを上げないと勝負にならないみたいだね。

結局、ヨウ・ハオの平行棒が今年の中国男子の最初にして唯一の金メダルになった。こんなに弱い中国チームの姿を見るのはなんだか寂しい。来年はもっと強くなって戻ってきてくれるといいな。

女子床。宮川選手、いい演技だった。3位との差が0.1もなかった。本当にあともう少しだったのに、惜しい!
バイルズはすごすぎる。異次元。ダイナミックで高さがあって、音楽にも調和していた。

鉄棒。ゾンダーランドは予選落ちしたのであの場にはいなかった。落下したわけではないが、実施をかなり厳しくとられた模様。

一人目、ブレッドシュナイダー選手がH難度の離れ技、ブレッドシュナイダーを実施してきた。体操の技ってどんどん進化していくね。ちょっと前までコールマンが最高難度だったのに。こうやって新しい、難しいことに挑戦してくる姿勢、大好きだ。そして名前もかっこいい。

リーバ、最高の演技を見せてくれて興奮した。一時期入れていたリューキンをやってくれないのが多少残念ではあるけど。
お父さんも大暴れだったね。解説がお父さんの動きについて言及していたり、お父さんのスロー再生まであったりして笑った。

内村もいい演技だった。いい演技だったけど、点数を見たとき「あれ? 停滞があったりしたけど、こんなにE出るんだ……リーバより上なんだ……」と驚いたりもした。
別に採点がおかしいと言いたいわけじゃないよ。審判の人たちは訓練を受けたプロだし、私とは見てるポイントも違うんだろうし。

内村はすごい。でも私はやっぱりリーバのダイナミックな演技が好きだ。私の基準では一番いい演技だった。内村にリーバの点数が抜かれて、解説が興奮してる中で私は一人凹んでいた。
でもリーバとお父さん、抜かれてもさわやかな笑顔で内村と抱き合ってた。悔しくても笑顔で勝者を称える姿勢、素晴らしい。なかなかできることじゃない。本当に素敵だなあ、この二人。