場末の雑文置き場

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「舟を編む」ドラマ版が最高だった話

2024年05月22日 | 映画・ドラマ

「舟を編む」のドラマを見終わった。原作が好きなので、馬締さんじゃなくて途中加入の岸辺さんが主人公になっていることに最初は抵抗があったけど、見てみたらとても面白かった。アニメも映画も見たし、どっちも良かったけど、今までの「舟を編む」の映像化でこのドラマ版が一番好きかもしれない。

原作に無いシーンてんこ盛りだけど大事な部分は変えていなくて、ちゃんと原作を尊重しているのが伝わるから違和感なく見られる。コロナや電子化など最近の事情も入れつつ、本筋は崩さず。辞書オタクの描写、みんなの言葉に対する愛の描写もいいし。「ヌメらない未来」って台詞、ドラマオリジナルだけど馬締さん言いそうだし。
原作そのまま映像化しても面白くないから、ドラマならではのアレンジはやっぱり必要なんだとわかった。そのままなら原作を読めばいいだけなので、わざわざ新しいものを作る必要はない。かと言って原作の大事な部分を変えてしまったら駄目で、その塩梅が難しいんだけど。問われるのは原作に対する愛情とアレンジのセンスだろうな。

オリジナルキャラで岸辺さんの彼氏が出てくるけど、原作でも「私は彼氏に振られたばかりなのに」って言ってるから、そこを膨らませたんだろうなと伝わる。天童くんもオリジナルキャラだけど、学生アルバイトは原作にもたくさんいて、その名前や個性は全く描かれなかったけどこんな子もいたかもね、と思えるし。ただ、ずっと編集部に入り浸ってていつ大学行ってるんだとは思った。

原作キャラクターについても文句なし。
馬締さんはとても合っていた。映画もいいけどドラマの馬締さんもいい。香具矢さんは映画よりずっとずっといい。映画版の宮崎あおいは綺麗系と言うより可愛い系なので香具矢さんとしては違和感があったけど、今回は綺麗系の人でドンピシャ。岸辺さんは元読モになっていたりと多少設定を変えてあるけどこれはこれでアリ。

宮本さんは、原作ではもっとイケメン風(あくまで風)の人だったのかなとは思うけど、矢本悠馬で良かった。メールの文面で思い悩むシーンが印象的だった。誠実さが溢れていて、岸辺さんが好きになるのも説得力がある。岸辺さんのほうが背が高いところが個人的には萌えポイント。最初の長身イケメンの彼氏とは対照的で、これは岸辺さんが変わったということも表しているのかも。

西岡さんのチャラさもしっかり再現されていた。原作の西岡さんはもっと三枚目だった気はするが、これはこれで。
私は原作の馬締さんと西岡さんの関係が好きだ。対象的な二人が、最初はギクシャクしているけどだんだん絆を深めて互いを認め合うようになる感じがツボで。だから西岡さんがどちらかと言うと脇に回っている今回の話は、初めての映像化だったら受け入れがたかったかも。西岡さんの出番がしっかりあったアニメ版を経ていたのが良かったのかもしれない。ただドラマ版では、わかりやすく西岡さんのことが大好きな馬締さんの姿が見られるので、そこはとても良い。

原作と一番違うのは岸辺さんが馬締さんと同居しているところかな。確かに岸辺さんを主人公にしつつ本来の主人公である馬締さんの出番を増やすには合理的ではある。引っ越しの理由は若干腑に落ちないが。振られた彼氏と一緒に住んでいた家にずっといるのも辛いかもしれないが、会社の上司と一緒に住むのもそれはそれでもっと辛くないか?
あとは松本先生の生存エンド。ここは大胆アレンジでびっくりした。でも全然嫌な感じはしない。むしろ嬉しい。原作の切ない結末も良かったけど。