テロは一点集中主義の警戒厳重なハードターゲットは防御しやすいが、ソフトターゲットはどう防ぐのだろうか

2015-11-20 11:13:16 | 政治


 「イスラム国」が2015年11月13日夜(日本時間11月14日早朝)フランスのパリ中心部でコンサートホールやレストランを狙った同時多発テロは原子力発電所や火力発電所、あるいはダム等重要インフラがテロの襲撃を受けた場合、国民生活に与える予想される被害の大きさから必然的に備えを迫られることになる厳重な警備網、あるいは主要各国の首脳が集まる国際会議等での要人警護の必要上の多重・大掛かりに敷くことになる警戒網、さらにオリンピックのような各国観客が大勢集まる国際イベント等でその人命保護のために準備することになる警備態勢等の誰もが予想する一点集中主義の厳戒態勢の裏をかくテロではないかという指摘がある。

 テロの頻発化によって今後益々警戒は厳重になる。警戒が厳重な場所へのテロはそれ相応の武器を携行したとしても、目的とした成功の実現には困難が伴う。攻撃を仕掛けた時点で阻止され、撃退させられたり、あるいは全員が射殺されたりして目的を達することなくテロそのものが失敗に帰す可能性も否定できない。

 何よりもテロは国家や社会に与える衝撃の大きさ、その恐怖の大きさを成果とするから、何も警戒が厳重な場所に向かって自らの行動を困難にする必要はなく、より警戒の薄い場所を標的として、警戒軽微に便乗して逆に人的被害を大きくすれば、テロとしての目的を達することができる。

 テロが警備の比較的緩やかなレストランやコンサートホール等を狙い場所とする、それらの対象を「ソフトターゲット」と呼ぶとマスコミが伝えていた。

 警戒厳重な場所に押し入って先進国首脳を一人でも多く殺そうとするよりも、警備の薄い人の集まるソフトターゲットを襲って、20人、30人殺す方がより容易であるし、逆に国家や社会に与える衝撃や恐怖を大きいものとすることができる。

 現地時間2015年3月18日午前11時(日本時間3月18日午後7時)過ぎにテロリスト2人がチュニジアの首都チュニスの国立のバルドー博物館を襲って銃を乱射、22人を死亡させ、42人を負傷させたテロ事件もソフトターゲット狙いであったのかもしれない。

 二人は治安部隊によって射殺されたが、テロ集団側から見た場合、テロリスト2人の犠牲に対して観光客を混じえた博物館入場者を22人を犠牲にすることができたのだから、ソフトターゲットを狙った方が国家や社会に与える衝撃の大きさ・恐怖の大きさという点で遥かに効率性がいいと言うことになるのかもしれない。

 当然、ソフトターゲットを標的とするテロをも今後警戒しなければならないことになる。特に有志国連合やロシアの「イスラム国」に対する空爆が激しくなって「イスラム国」を追いつめることになった場合、有志国連合やロシアに対する手段や場所を選ばないテロ――いわばソフトターゲットを対象としたテロを反撃行為の主流とする危険性を想定しなければならない。 

 安倍晋三がパリ同時多発テロを受けて、11月17日、国家安全保障会議(NSC)閣僚会合を開催、来年5月の主要国首脳会議・「伊勢志摩サミット」や2020年の東京オリンピック・パラリンピック等に向けて情報収集や分析能力の向上等、テロ対策を強化するよう指示したという。

 また金高警察庁長官が同じく11月17日のサミットの警備対策委員会会合で、「テロを行ったとされる組織は日本を標的として挙げている。厳しい国際テロ情勢の下、サミット開催までおよそ半年となり、万全の態勢で臨めるよう対策を着実に進めてほしい」(NHK NEWS WEB)と述べ、三重県の伊勢志摩サミットの会場だけでなく、東京や名古屋など各地の大都市も狙われる恐れを想定、警察は自治体や関係機関と連携して万全の警備態勢を整える方針だという。

 当然、ソフトターゲットも警戒対象に入れることになっているだろうが、より警戒の薄い場所を狙ってきたなら、どうするのだろう。

 例えば入場者や客が100人入るコンサートホールやレストラン、映画館に対してソフトターゲットとしておくことの危険性からそれぞれに一点集中主義的に警備を敷いてハードターゲット化することはできるが、10人程度の人間が集まる場所まで警備の手を回してハードターゲット化することは可能だろうか。手を回すとしたら、警察官がいくらいても数が足りないことになる。

 警戒態勢下にある100人が集まっているハードターゲット化した場所を狙って、警備に阻まれてそのうちの何十人かを犠牲にすることができたとしても、警備の殆どない10人程度が集まっているソフトターゲットを10個所襲って各箇所毎にそこにいる人間の数だけより確実に犠牲者を出していけば、場合によっては100人近い成果を上げる可能性は否定できない。しかもその無差別性によって衝撃や恐怖をより厳しいものに駆り立てることができる。

 勿論、テロリスト集団が伊勢サミットなら伊勢サミットと決めて警備厳重なハードターゲットであることを承知して正直に狙うならいい。あるいは東京オリンピックなら、その会場と決めてハードターゲットであることを問題とせずに狙うなら、それなりの防御が可能となる。あるいは100人程度の集まりと決めて襲うなら、一度襲われたなら、そのことを学習して、ソフトターゲットからハードターゲットへと転換も可能となる。

 だが、常にそう決まっているという保証はない。伊勢志摩サッミトの会場周辺で故意に不審な動きを見せて警戒をより一点集中主義的に厳重にするように仕向けて、他の警備が殆どないソフトターゲットを狙う可能性も否定できない。

 結果、各国要人は安全だったが、多数の日本人が犠牲になるという皮肉な現象が生じないとも限らない。

 こういった厳重な警備が及ばない、あるいは警備らしい警備を敷くことができないソフトターゲットへの万が一のテロを防ぐには中南米等の治安が非常に悪い国々でちょっとした商店の店先や市場の入り口、あるいは富裕層の集まる鉄格子で囲った地域の入り口をマシンガンやライフル銃を持たせて防弾チョッキで身を固めさせた民間の警備員(ガードマン)を置いて強盗や誘拐から身の安全を守っているのを真似て、それぞれが同じことをしないことには襲撃場所の範囲を広げようとしているテロを防ぐことができないのではないだろうか。

 勿論、日本は銃規制が厳しく、テロ対策だと言っても民間のガードマンが銃を所持するのは許さないだろう。テロ対策に限定して所持を許したとしたとしても、暴力団員が民間のガードマンに紛れ込んで、所持を許されたマシンガンを暴力団に横流しする危険性も考慮しなければならない。

 だが、パリやニューヨーク、ロンドン、その他の主要都市、あるいはそれに準ずる都市はソフトターゲット化していくテロの襲撃を防いで犠牲者を可能な限り出さないためには、そうせざるを得ないのではないだろうか。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

稲田朋美の安倍晋三の意を汲んで、どうしても戦後を否定したいGHQ占領・憲法制定検証の勉強会

2015-11-19 10:53:31 | 政治



  「生活の党と山本太郎となかまたち」

  《11月18日「臨時国会召集要求は国民の声」与野党幹事長・書記局会談談で玉城幹事長》    

 こんにちは、生活の党と山本太郎となかまたちです。
 11月18日、国会内で与野党幹事長・書記局長会談が開かれ、野党側は憲法規定に基づき臨時
 国会召集を改めて与党側に要求しました。

 自民党が2015年11月11日、自民党総裁としての安倍晋三直属の歴史検証の勉強会を立ち上げることを決めたという。立ち上げ趣旨は日清戦争から東京裁判、GHQ(連合国軍総司令部)の占領政策等を検証することだそうだ。

 このメンバーに稲田朋美が加わらないはずはない。安倍晋三と肩を並べる歴史修正主義者であるという点で同じ穴の狢を形成しなければならないからだ。マスコミもこのような組織を提唱してきた一人としてメンバーに加えている。

 検証は何も驚くに当たらない。安倍晋三は前々から「戦後レジームからの脱却」を呪文のように唱えていたからだ。要するに「戦後レジームからの脱却」を果たすための歴史検証の勉強会と言うことなのは間違いない。

 安倍晋三の言う「戦後レジーム」とは、第2次世界大戦後のGHQ主導の民主化政策(=占領政策)によってつくられた諸制度・諸体制を指すが、勿論その中には日本国憲法と憲法の理念によって制度化された日本の社会構造・社会体制と、前者・後者それらによって育まれた日本人の精神性も含むはずだ。

 含むがゆえにそこからの「脱却」と言うことは、安倍晋三は日本国憲法は占領軍が作った憲法であり、日本人自身が作った憲法ではないと現憲法そのものを否定していることを示していることになる。

 このことの証明を、何度もブログに取り上げてきて、再び取り上げるのは恐縮の至りだが、2012年4月28日の自民党主催「主権回復の日」に寄せた安倍晋三のビデオメッセージと国会答弁から行いたいと思う。

 安倍晋三「皆さんこんにちは。安倍晋三です。主権回復の日とは何か。これは50年前の今日、7年に亘る長い占領期間を終えて、日本が主権を回復した日です。

 しかし同時の日本はこの日を独立の日として国民と共にお祝いすることはしませんでした。本来であれば、この日を以って日本は独立を回復した日でありますから、占領時代に占領軍によって行われたこと、日本はどのように改造されたのか、日本人の精神にどのような影響を及ぼしたのか、もう一度検証し、そしてきっちりと区切りをつけて、日本は新しいスタートを切るべきでした。

 それをやっていなかったことは今日、おーきな禍根を残しています。戦後体制の脱却、戦後レジームからの脱却とは、占領期間に作られた、占領軍によって作られた憲法やあるいは教育基本法、様々な仕組みをもう一度見直しをして、その上に培われてきた精神を見直して、そして真の独立を、真の独立の精神を(右手を拳を握りしめて、胸のところで一振りする)取り戻すことであります」・・・・・・・

 そして2014年3月14日の参院予算委員会での答弁。

 安倍晋三「憲法につきましても、先程申し上げましたこの三つの原則(平和主義・基本的人権・主権在民)というのは、当然これは大切な原則であり、そのことによって日本は平和国家としての道を歩み続けてきたわけでございますが、しかし同時に、この憲法自体が占領軍の手によって作られたことは明白なこれは事実でございます。その中におきまして、私は、戦後レジームから脱却をして七十年がたつ中におきまして、今の世界の情勢に合わせて新しい、みずみずしい日本をつくっていきたいと、こう申し上げているわけでございます」・・・・

 参院予算委員会では日本国憲法の平和主義・基本的人権・主権在民の三大原則を大切な価値だと言いながら、占領軍によってつくられた日本国憲法だと断言している。

 一方でビデオメッセージでは、占領軍によって日本は改造され、日本人の精神は影響を受けたと言って、当時の占領軍が行った日本という国と国民(=日本人)に対する権力作用そのもの、そしてその成果そのものを悪として否定している。

 日本国憲法にしても日本人の協力があったものの、主体的には占領軍という権力作用がもたらし、その成果の一つとしているのだから、安倍晋三が「この憲法自体が占領軍の手によって作られたことは明白なこれは事実」だと言っている意味は悪の一つとして否定の対象としていることになる。

 当然、安倍晋三は日本国憲法の三大原則(平和主義・基本的人権・主権在)を言葉通りに大切な価値と把えているわけではなく、何らかの隠してある含みを見なければならない。

 例えば「自民党憲法草案」は第12条で自由と権利について、「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力により、保持されなければならない。国民は、これを濫用してはならず、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない」と規定、「公益及び公の秩序に反してはならない」とするタガをはめた形での自由と権利の保障となっている。

 何が「公益」か、何が「公の秩序」か、一体誰が決めるのだろう。国家権力が望む形で決めることもできる「公益及び公の秩序」である。

 と言うことは、国家権力が決めることができるようにこのような文言を残しておいていると見ることもできる。 

 国民の自由と権利にこのようなタガをはめたこと、条件付きにしたこと自体が「戦後レジームからの脱却」と考えることもできる。

 現憲法の第12条は「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ」と、自由と権利を何に利用すべきか、その責任を「公共の福祉のために」と規定する形で自由と権利に関しての社会的な履行を求めているに過ぎない。

 決して自民党憲法草案のように自由と権利そのものの制限ではない。

 「戦後レジームからの脱却」を果たすための歴史検証の勉強会の課題に日中・太平洋戦争以前の日清戦争から始める意図は、日中・太平洋戦争のみの検証では侵略と認めざるを得ないために日清戦争まで遡ることにしたのだろう。

 日本は明治以降、外国との戦争は日清戦争(1894年(明治27年)7月~1895年(明治28年)3月)、日露戦争(1904年(明治37年)2月8日~1905年(明治38年)9月5日)と続けてきた。

 安倍晋三は2015年年8月14日、「安倍晋三戦後70年談話」を閣議決定し、その談話を同日の記者会見で公表した際、「100年以上前の世界には、西洋諸国を中心とした国々の広大な植民地が、広がっていました。圧倒的な技術優位を背景に、植民地支配の波は、19世紀、アジアにも押し寄せました」と言い、その影響を受けた日本の海外進出と日本の戦前の戦争だとして、日本の戦争を20世紀という時代が生んだ産物だと時代的な一般性、時代性を纏わせる相対化作用を施して、止むを得ない戦争だったとする罪薄めを謀った。

 さらに日露戦争も取り上げて、「日露戦争は、植民地支配のもとにあった、多くのアジアやアフリカの人々を勇気づけました」と、日露戦争という日本の歴史を肯定することで日中・太平洋戦争に走ってしまったことを止むを得ないとする同じ文脈での相対化作用を用いて、後者の悪の罪薄め謀っている。

 だが、実際には日露戦争と言えども、中国(主に満州)と朝鮮半島を舞台とした植民地獲得競争が正体の戦争であった。

 日本は西欧列強に倣って、既に植民地戦争を開始していたのである。植民地を多く獲得し、西欧列強と肩を並べようとしていた。

 歴史検証の勉強会は戦前の日本の侵略戦争を時代的な一般性、時代性とするための相対化作用の範囲を広げるために日露戦争からさらに日清戦争にまで遡る魂胆なのだろうが、日清戦争にしてもその勝利によって朝鮮半島の日本の権益を守ったのだし、ロシア、フランス、ドイツの三国干渉によって失ったものの、一旦は下関条約(日清戦争の講和条約)によって遼東半島の割譲を受けたのだから、アジアを舞台とした植民地戦争以外の何ものでもない。

 その舞台をさらに広げようとしたのが日中・太平洋戦争だった。

 いわば日本自らが積極的に加わっていった植民地獲得戦争の連続としてあった時代的な一般性、時代性であって、その埒外にあった日本が止むを得ず埒内に巻き込まれた日中・太平洋戦争だとする歴史修正には無理がある。

 確かに東京裁判にしてもGHQの占領政策にしても様々に矛盾を抱えているだろうが、占領政策によって日本人が獲得できた民主主義である。国家主義の観点からは民主主義をアンチテーゼとしているがゆえに「占領軍によって日本は改造され、日本人の精神は影響を受けた」と言うことはできるし、そのような安倍晋三とその一派からしたら、占領政策がつくり上げたとしている諸々の諸制度やその影響を受けて日本人の血としていくことになった精神性からの脱却――「戦後レジームからの脱却」は必要となるが、民主主義そのものの観点からは政治の矛盾が反映した社会性を除いて、一般的には馴染むことのできる戦後社会であって、安倍晋三たちが魂胆している意味での如何なる脱却も必要としない。

 当然のこと、占領政策が悪影響を与えたとする諸々の戦後秩序、それを支えている日本人の精神性からの脱却を意味する安倍晋三の「戦後レジームからの脱却」とは、戦後を取り除くことを意味しているがゆえに戦前と戦後に一貫性を持たせることを目的としていることになって、戦前の日本国家の肯定以外の何ものでもなく、安倍晋三直属の歴史検証の勉強会はその肯定のための検証以外の何ものでもないということである。

 要するに検証という名の下、歴史修正の陰謀に取り掛かかろうとしている。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

野党再編 岡田代表は民主党の「長い歴史」を言うが、民主党関係者と有権者の見る歴史は全く違う

2015-11-18 08:34:08 | 政治


 民主党代表の岡田克也が2015年11月16日、都内で党所属地方議員らとの会合を開いたという。勿論、議論の対象は野党再編――前原誠司や細野豪が主張する民主党解党か、岡田執行部主張の統一会派づくりか否かの問題である。

 岡田克也「色々な議論があっていいと思うが、公の党を解散することが簡単に語られていいことだとは全く思っていない。民主党は長い歴史があり、地方組織や地方議員、党員やサポーターもいる中で、そうしたことを軽々に言うことは党への信頼を失わせるものだ。

 混乱があったことに心からおわびを申し上げる。公の存在である政党を、どういうふうにしていくかは、きちんとした議論が必要だし、国民の期待を裏切らないようにしなければならない」(NHK NEWS WEB

 党所属地方議員らとの会合で、「民主党は長い歴史があり、地方組織や地方議員、党員やサポーターもいる中で」と言っている以上、岡田克也が意味させている民主党の「長い歴史」とは、小政党が合流した1998年の結党から始まって、合流前の歴史も含めているのかもしれないが、合流後の民主党と言う看板の名の下の地方組織の設立と支持者集め、地方議会への進出と勢力拡大、そして国政での地盤の確保等々、これまでの地歩を築いてきた簡単ではなかった道のり・諸々の積み重ね指しているはずだ。

 民主党所属の国会議員や地方議員、そして熱心な党員たちにとってはそのような「長い歴史」への愛着、あるいは思いというものは深いものがあるに違いない。

 だが、一般的な有権者は岡田克也が言っている類いの民主党の「歴史」に、それが長かろうが短かろうが関心を持っているとでも考えているのだろうか。

 多くの有権者が持っている民主党に対する直近の「歴史」は政権交代前は大いに期待させたが、政権運営で期待を急速に萎ませ、失望や怒りへと変じさせた経緯そのものであるはずだ。

 その記憶が多くの有権者の頭に未だ色濃く焼きついていて、思い出したくもないが思い出してしまうその嫌悪100%の記憶を岡田代表を筆頭にその執行部が消し去り、期待に変えるリーダーシップ・政治力を発揮できていないからこその現在の民主党政党支持率の10%前後の低迷であり、自民党政党支持率40%近くとの格差であろう。

 党の在り様を軽々に口にするのは「党への信頼を失わせる」と言っているが、政党支持率を頭に置いて"党の信頼"を口にすべきだろう。つまり既に多くの信頼を失っていて、現在大層な信頼を得ているわけでもないのに得ているかのように発言しているに過ぎない。

 岡田は自身と有権者の関心の違いを認識もできずに有権者が関心を持ってもいない地方をも含めた党組織の歩みを指す「長い歴史」を守るべき価値・壊すべきではない価値とした。

 この岡田克也と有権者の関心の対象の180度の違いは如何ともし難いが、単に違いだけで片付けることはできない。岡田のこの関心の持ちようは自身の現在の生き方を自身の価値観に添って決めていくのではなく、家柄を重視して、家として長い歴史の中で育んできた価値観に相応しい生き方を選択するのに似ている。

 解党から新党結成へ進むことが正しい道なのか、先ずは統一会派づくりが正しい道なのか、結果を見ないことには分からないが、岡田克也の選択はその発言から類推するに思い切った改革はできない、現状維持を専らとするタイプの人間であることを教えている。

 但しその分失敗は小さいかもしれない。

 翌11月17日党本部開催の全国幹事長会議では共産党との協力に関して出席者から「それぞれの地域事情もあるので一概に決めないで欲しい」とか、「1人区でも民主党を中心に戦えるよう努力して欲しい」といった注文が出たと「時事ドットコム」記事が伝えていたが、協力である以上、全体で見た場合、一方の政党のみがメリットがあるとすることはできない。

 多少の差はあっても、デメリットも引受けて、メリットと半々ぐらいを覚悟しなければならない。当然、個々の選挙区で見た場合、立候補を断念させなければならない選挙区も複数出てくることになる。

 それを「1人区でも民主党を中心に戦えるよう努力して欲しい」とメリットのみを求めるようでは、協力が意味するギブ&テイクの関係を成り立たなくさせる。共産党は1人区すべてに候補者を立てて、共産党のみの躍進を考えた方がいい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

安倍晋三はプーチンとの信頼関係構築が四島返還の礎と未だ信じているが、リベラルな政権への移行に期待せよ

2015-11-17 08:54:22 | 政治


 20カ国・地域(G20)首脳会議でトルコを訪問中の安倍晋三が日本時間の2015年11月16日未明、プーチンと会談、プーチンの年内実現を目指してきた日本訪問を期限を区切らず適切な時期に実現する方向で再調整することを確認したという。

 要するに年内を諦めて来年回しにした。ウクライナ情勢やロシアがシリア領内の「イスラム国」勢力空爆に参加、反アサド勢力への空爆にまで手を広げ、且つアサド政権への軍事支援まで強化していることがアサド体制の擁護・延命につながり、アサドの退陣を狙っている欧米と利害対立が起きていて、アメリカがプーチンの訪日に反対の意思を示していることも影響しているとマスコミは伝えている。

 安倍晋三は会談で次のように発言したと「NHK NEWS WEB」記事が伝えている。 

 安倍晋三「首脳会談ができて大変うれしい。我々が頻繁に対話をすることで日ロ関係を発展させてきた。2人で日ロ関係をさらに発展させていきたい。

 経済分野では有意義な対話が行われ、日ロの企業関係者の交流も活発化している。日ロ関係を前に動かすために重要なことは、こうした形で2人で話し合っていくことだ」

 まるで安倍・プーチンの2人だけが日ロ関係を発展させることができるといった趣旨の発言となっている。まあ、自信を持つことはいいが、それが誇大自己意識の高みにまで達している。

 二人は北方領土問題を含む平和条約交渉を巡って双方の受け入れ可能な解決策を見い出すための率直な意見交換をも行ったそうだが、首脳会談を通した二人の話し合いが日ロ関係の発展につながっていくということは、そこに話し合いによって構築されていく二人の信頼関係が日ロ関係発展の原動力と見做しているからに他ならない。

 安倍晋三は日ロ関係発展の先に北方領土返還問題の解決と平和条約締結を見据えた対ロ政策を頭に置いているのだから、今以て二人の信頼関係の構築を両問題解決の礎としていることになる。

 但しこの信頼関係構築作戦は安倍晋三の片想いに見える。安倍晋三は未だにそのことに気づかずに、信頼関係の構築に相努めようとしている。プーチンの訪日に拘り、会談ではプーチンが「ロシアのどこか一地方で首相にお目にかかれればうれしい」(時事ドットコム)と安倍晋三の訪ロを促したというから、やれ何回目のプーチンとの首脳会談だと回数を誇りながら、いそいそとロシアに向かうことになるだろう。 

 ロシアは着々と北方四島の開発を進め、軍事基地の整備も行っている。さらに北方四島をも適用範囲とした極東地域の人口増加に向けて国民に土地を無償で提供する制度を来年2016年5月から始めることをロシア政府が決めたと「NHK NEWS WEB」記事が伝えていた。

 記事の解説を待つまでもなく、北方四島をロシアの領土の一部と見做しているからに他ならない。

 勿論、この北方四島をロシアの領土と既成事実化した急ピッチな開発はプーチンの政治姿勢と深く関係しているはずだ。かつてのロシア帝国が広大な領土と、その領土の広大さに基づいて保持していた強大な国家権力と帝国内のロシア人に与えられていた特権性が育んだ自らを人種的に偉大だとする大ロシア主義を多くのロシア人が自らの血としていると言われているが、特にプーチンはその血を濃くしていて、大ロシア主義をかつてのソ連が体現していたと見て、ソ連回帰を様々に試みている。

 要するにプーチンがソ連回帰によって表現しようとしているロシア人の人種的な偉大性――大ロシア主義は広大な領土と広大な領土に依拠させた強大な国家権力を不可欠な二大要素としていることになる。

 プーチンやその他大勢のロシア人にとって、その他大勢であることはプーチンの高い支持率から理解できることだが、領土の大きさは偉大な国家を表現する一部となっているということであり、そういった心理構造自体が大ロシア主義に当たるということである。

 ウクライナからのクリミア簒奪も大ロシア主義実現の一環だったはずだ。プーチンはなおも旧ソ連から独立した国からロシア人居住者の多い地区の簒奪――ロシアの領土化を狙っている。

 プーチンが夢見て止まない大ロシア主義の実現に広大な領土を欠かすことができないと見ているなら、北方四島は手放さない理由とはなるが、手放す理由とはならない。

 だからこその北方四島のインフラ整備であり、その他開発であり、軍事基地の整備、土地無料提供による入植者の推進と言うことなのだろう。

 領土を一坪なりとも欠かしたなら、それは大ロシア主義に反する試みとなる。

 もう一つプーチンが北方四島を返還する気のない例を2015年10月30日付けの「時事ドットコム」記事から挙げてみる。 

 プーチンが2015年10月29日、愛国少年団「ロシア青少年運動」を創設する大統領令に署名したと書いている。ソ連時代の共産党少年団(ピオネール)がモデルだそうだ。

 こういったことはソ連回帰の一環だろうが、2005年に青年版の愛国青年組織「ナーシ」を創設している。これも旧ソ連時代の共産党青年団(コムソモール)をモデルにした組織だという。

 プーチンは2000年にロシア大統領選挙に勝利して大統領に就任しているから、就任の早い時期からソ連回帰を自らの血に基づいて目指していたことになる。

 但し記事は愛国青年組織「ナーシ」は一旦組織解体に至ったが、今年2015年8月に北方領土の択捉島などで開催された「全ロシア青年教育フォーラム」などに引き継がれたと解説している。

 他のマスコミは8月12日から8月24日まで択捉島で開催されたこのフォーラムをロシア政府主催の愛国集会と紹介していて、約200人が参加したと伝えている。

 メドベージェフ・ロシア首相が8月22日に択捉島を訪問、同島開催中の「全ロシア青年教育フォーラム」の行事に参加している。

 ロシア全土から200人ものの若者を愛国心の名のもと集め、教育のためのフォーラム(公開ディスカッション)を催す。

 当然、択捉島を舞台とした愛国心教育の涵養を目的とした集会の開催を意味する。あるいは愛国心教育の涵養を目的として、その舞台の一つに択捉島を選んだ。

 このことの意味は北方四島を、少なくとも北方四島中最大面積の択捉島をロシアの領土であると意識させることを愛国心の象徴行為ともしているはずだ。

 なぜなら、グループごとにロシアの外交や内政をテーマにディスカッションしたそうだが、択捉の地でそれを行ったということはを択捉をロシア領土の一部としていることを示しているからである。返還を予定している島でロシアの外交や内政をテーマにロシアの将来を担わせようとしている若者たちに政府主催でディスカッションさせる意味はどこにもない。

 だが、ロシアの領土であることを意識させる島は択捉島だけにとどまらないはずだ。大ロシア主義は領土の大きさを偉大な国家を表現する一部とし、そのことによってロシア人の人種的な偉大性をも表現しようとしているから、領土を少しでも手放したくないだろうし、メドベージェフ首相がこのフォーラムに参加するために択捉島を訪問した2015年8月22日に1カ月遡る7月23日に「島々はロシアの国境を守る役割を果たしてしいる」と発言していることも、具体的な証明として提示できる。

 歯舞・色丹の面積の狭い領土を返還しても、「ロシアの国境を守る役割」を殺ぐことになるからだ。

 プーチンが大ロシア主義を血とし、ロシアを旧ソ連同様の広大な領土と広大な領土に依拠させた強大な国家権力を持った偉大な国家に回帰させようとしている限り、そしてそのことによってロシア人の人種的な偉大性を表現しようとしている限り、安倍晋三がいくらプーチンとの信頼関係構築を四島返還の礎に据えようが、あるいは平和条約締結の条件としようが、プーチンの大ロシア主義の前に何の役にも立たないはずだ。

 プーチンに代わる、大ロシア主義に影響されていないリベラルな政権への移行に期待する以外にないのではないだろうか。

 余談だが、プーチンの大ロシア主義はプーチンの肉体的なマッチョ志向に最も顕著に具体化されている。偉大なロシア人への回帰願望が強過ぎる余りの、その偉大性を自身の肉体で即物的、あるいは即席的に表現したのが、ウエイトトレーニングで鍛えたのか、筋肉隆々の偉大なと思っている自身の肉体美であるはずだ。

 これも余談だが、安倍晋三とプーチンは性格的に瓜二つとなっている。安倍晋三にしても戦前の大日本帝国を偉大な国家、理想の国家像として、そこへの回帰を試みている。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

蓮舫の11月15日フジテレビ「新報道2001」での共産党との選挙協力、小賢しいばかりの愚かな認識

2015-11-16 11:01:37 | 政治


 民主党の元代表前原誠司と政調会長細野豪は年内に民主党を解党して維新の党との新党結成を提案している。11月11日、前原誠司は新党結成対象の、同じく両党の結党に積極的な維新の党の江田前代表と会談、翌11月12日に民主党代表の岡田克也と会談した。要するに前原ら新党結成に向けた段階に踏み出したということなのだろう。

 前原との会談について岡田は次のように述べている。

 岡田克也「中身は言えないが、現時点で非常に穏やかに、いい話ができたと思っている。党の執行部は私だ。党の在り方に対する根本論なので、執行部の中で考え方が固まり、党を支える皆さんの理解を得られる前に、軽々にお話しすることはできない。

 私が申し上げているのは、本質が変わらなければだめだと、看板の掛け替えではだめだということだ」(NHK NEWS WEB

 変えるべき現在の「本質」とはどのような本質なのだろうか。自分たちが抱えている問題点としてあるのかだから、十分に認識しているだろうから、その「本質」を提示、新党結成ではなぜ看板の掛け替えで終わるのかの説明がなければならないはずだが、前原との会談では話したのかどうか分からないが、見えてこない。

 11月12日の前原・岡田会談の翌11月13日、民主党代表代行の長妻昭が民主党解党・維新の党との新党結成について発言している。

 長妻昭「野党の力を結集しなければならないという一点については、誰も異論はない。方法論や時間軸に色々と濃淡があるなかで、皆が納得できるようなかたちで決着をしないといけない。

 政策が同じでなければ、野合となって瓦解(がかい)するという歴史は何度も経験している。本質は中身であり、外形を変えるだけであれば、国民から見透かされることは火を見るよりも明らかだ」(NHK NEWS WEB

 要するに政策の一致がなければならないと言っている。

 では、足元の民主党は全員が政策を一致させているのだろうか。民主党には自民党系、日本労働組合総連合会(連合)結成前の全日本労働総同盟(同盟)を支持母体とした民社党系と同じく連合結成前の総評を支持母体とした社会党系、その流れを組む社民党系様々に入り乱れていて、安全保障政策や外交といった重要政策で必ずしも一致しているわけではない。

 原発政策にしても原発全廃派議員から全国電力関連産業労働組合総連合(電気総連)を支持母体としていて、推進派議員まで様々である。

 また同じ自民党出身ながら、岡田克也は安倍晋三が成立させた安全保障関連法の廃止を目指しているが、前原誠司は廃止ではなく、見直しを主張している。

 自民党にしても安倍晋三を筆頭に稲田朋美、高市早苗、山谷えり子、その他、戦前の大日本帝国を理想の国家像とする右翼の国家主義集団からリベラルな保守まで様々に存在して、常に政策を一致させているわけではない。

 新安保法制にしても、村上誠一郎衆院議員は2015年6月10日、日弁連主催の安保法制反対集会に出席して、安保法制に反対することを表明、2015年7月16日の関連法案衆議院採決の日に病気理由であるが欠席していて、それが少数であったとしても、国家存立の基盤を決定する重要な安保政策に於いて完全一致というわけではない。

 因みにやはり病気理由であるが、それが事実かどうか、若狭勝衆院議員も欠席している。

 ただ単に現在のところ景気回復によって、それが格差拡大を犠牲としたものであるが、安倍晋三の発言力に力を与えていることからの右へ倣えの状況を作り出しているが、もし何らかの事情で自民党の党勢が弱体したとき、かつて弱体したとき同様に様々に政策の違いが噴出して、混乱を見せるに違いない。

 安倍第1次政権、麻生政権の不人気から2009年に民主党に政権を奪われた後の谷垣自民党総裁下での党勢の低迷から離党者が相次いだが、その一例として現東京都知事の舛添要一が執行部を批判して離党、新党結成したのも、党勢弱体時の政策の違いの噴出が原因していた。

 長妻昭が言うように「政策が同じでなければならない」としたら、先ずは民主党を政策ごとに解体しなければならないことになる。

 政策の違いを前提として、代表選で多数を占めた集団が全党的な合意形成を演出するか、あるいは安倍晋三のように支持率や政策の成功を背景に高めた自身の発言力を力として自らの政策で党を統一、独断的に自らが思う政治を演出するか、それ以外に方法があるというのだろうか。

 長妻昭が新党結成は「政策が同じでなければならない」といった2日後の1月15日、民主党代表代行の蓮舫がフジテレビ「新報道2001」に出演して、共産党提唱の各野党を結集した「国民連合政府」と民主党解党、維新の党との新党結成に反対している。

 長妻も代表代行、蓮舫も代表代行、岡田を含めて指導者としての艶やかさがない。蓮舫は相手の発言に素早く反応してピーチクパーチクよく喋るし、自分は美人だと思っていて、発言途中で美人であることを見せる媚びを売るそれらしい笑みを必要に応じて演出するが、言葉自体に人を惹きつける力はない。ただ単に早口で言えば頭の回転が早いことを示せると信じて、それを実行している単細胞に過ぎない。

 須田哲夫司会「蓮舫さんも代表代行という立場上、執行部なんですが、認識も岡田さんと一緒だと思っていいんですか」

 蓮舫「一緒です。ただ前原さんも細野さんも、恐らく岡田さんも私たちと同じ思いなのは下野して3年経って、やっぱり一強多弱は何も生まなかった。特に安保の時の我々は論戦で頑張ったけれども、決定的に数で足りなかったとか、いろいろな部分で国民のためになかなか声を代弁できなかったという反省の下で出口をどういう形で民主党をどうにかしていくのか、その部分の我々は統一会派を先ずつくって、で、今の東京維新の方たちも何か、また大阪維新の方と色々ありますから、そこをすっきりして頂かないと、なかなか一緒にというわけにはいきませんので、統一会派でやっていこうと我々の方針、それと解党、手段は違うんですけども、方向はおんなじだと見ていただきたいと思います」

 統一会派と解党・新党結成と同じ方向であるはずはない。それを同じだとする判断能力に合理性を見るわけにはいかない。前者は異なる党として行動を共にしていく形式を取り、後者は同じ党として行動を共にする形式を取る。

 どちらの形式を選択するかで、国民に与える期待値に対するインパクトという点でも、前者と後者は決定的に違う。

 蓮舫は「一強多弱は何も生まなかった」と言っているが、一強多弱はつくられるべくしてつくられたのである。自然に与えられた情勢というわけではない。それをつくったのは民主党菅政権・野田政権であり、それぞれの内閣執行部であった。結果は原因に基づいてつくられる。

 蓮舫はその両内閣で大臣を務めている。一強多弱の元を作った顔触れが民主党の今の執行部に顔を揃えている。面々が指導者としての艶やかさを備えていないことと合わせて、政党支持率が10%以下で低迷しているのも無理はない状況としか言えない。

 つまり今の民主党執行部自体が人気がないということである。

 また、「特に安保の時の我々は論戦で頑張ったけれども、決定的に数で足りなかった」と言っているが、その原因を自分たちでつくったにしても、野党の中で最も多くの質疑の時間を与えられていながら、政府答弁の矛盾を少しは引き出すことはできたが、決定的に追及し切ることができなかったことは追及を生かし得なかった何よりの証拠で、「論戦で頑張った」の評価は自己満足に過ぎない。

 安倍晋三は一度つくった一強多弱を盤石なものにするために2014年11月18日、首相官邸で記者会見を行い、2015年10月の消費税率再引き上げの2017年4月への先送りを決定したことを表明、この判断の是非を国民に信を問うべきとして任期を待たずに解散を宣言、2014年12月の総選挙投票日に向けた選挙戦では記者会見通りに増税先送りとアベノミクスを主たる争点として前面に掲げ、集団的自衛権の憲法解釈による行使に関しては表に出さずに戦った。

 そうまでした確保した一強多弱体制であり、民主党は満足に太刀打ちできずにその体制を許したのである。つくられるべくしてつくられた一強多弱であって、自分たちの責任を考えなければならないのに、その責任意識もなく、単に「決定的に数で足りなかった」と現在ある数だけの問題とする表面的な解釈は一種の責任回避でしかない。

 須田哲夫(フジテレビ解説委員だとかの平井文夫に顔を向けて)「方向は同じだと蓮舫さんは言いますけども、民主党解党に向かうんでしょうか、これどうなんでしょうか」

 平井文夫「先日ある民主党議員がね、心配していることがあると。それはね、来年安倍さんがダブル選挙やるんじゃないかと。解散するんじゃないかと。民主党内にそれを心配している人が一杯いるんだと言っていました。今回の前原さんの動き、それから松本剛明さんの離党もね、その辺のことがベースにあるのかもしれません。

 ただ、今の岡田執行部はまだ動かないで、恐らくですね、本当にダブルの風が吹いてきたり、あるいは大阪の橋下さんが国政に参加したり、そう言うことがないとなかなか野党再編というのは動かないかもしれませんが、一つだけ、蓮舫さん、共産党との連携というのはあれはやめた方がいいんじゃないですかねえー」

 蓮舫「ないと思います」

 即座にキッパリと答えて、ニコニコして自分から何度も頷く。

 平井文夫「保守的な支持者というのは民主党にも多いので、蓮舫さんだって、左翼ではないでしょ。共産党と一緒にやるって、アリですか」

 蓮舫(失笑気味に笑ってから)「何度も私、これは申し上げておりますけども、ないです。ただ、選挙協力という形で、申し訳ないですけど、自民党と公明党に対抗するときに1人区となったときに、野党が乱立したら、それは票は分散します。

 その部分の思いで協力することは、それな私たちは否定していません」

 須田哲夫「選挙協力はあるのですか」

 蓮舫「否定はしていません。勿論否定していません。候補者協力ですよ。だけど、私たちは共産党の候補者を全面的に応援するとか、民主党の仲間に共産党を応援しろとか、あり得ないです」

 この後平井と蓮舫が短い遣り取りをするが、聞き取れない。ここまでが蓮舫の時間ということで、退出する。

 蓮舫は1人区での共産党をも交えた他野党との「候補者協力」、いわば立候補調整は行うが、共産党候補が立った場合の1人区では、その「共産党の候補者を全面的に応援するとか、民主党の仲間に共産党を応援しろとか、あり得ないです」と断言している。

 蓮舫は如何に自分が小賢しいことを発言したか、そのことに気づいていない。

 言っていることはギブ&テイクの相互利益交換関係ではなく、テイク&テイクの片務的な自己利益限定獲得関係である。共産党に対して民主党と選挙協力したいななら、1人区で共産党候補を立てるなと言っているに等しい。

 それが選挙協力であろうと、候補者協力であろうと、どう名付けようが、“協力”という概念に反することを「協力」という名で口にしているに過ぎない。

 何と小賢しいばかりの愚かな認識だろうか。

 この手の認識の政治家が民主党の代表代行を務めている。

 自民党は安全保障政策で水と油の関係で鋭く対立し、自衛隊を違憲としていた社会党と新党さきがけも加えて1994年に連立を組み、村山富市を首班に指名した。村山は首相在任中に自衛隊を合憲とし、それまでの社会党の安保政策を大きく転換した。

 共産党の志位委員長は国民連合政府が実現した場合の首相は民主党代表を指名する可能性に言及している。例え政策の違いが大きくても、リーダーに就いた者がリーダーに必須の能力となっている強力なリーダーシップを持っていさえすれば、そのリーダーシップで以て、あるいは国民から高い支持率を得ることができたなら、その支持率を背景に政策の全党的な合意形成の演出は不可能ではないはずだ。

 不可能だと言うなら、あるいは民主党だけで議席を大幅に増やす自信があるなら、民主党単独でやっていけばいい。小賢しさはいらない。小賢しさだけでは何も前に進まない。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ISの「神は偉大なり」の自爆テロは旧日本軍の「天皇陛下バンザイ」の玉砕等に70年遅れた狂信性なのか

2015-11-15 06:58:34 | 政治


 今回起きたパリの同時多発テロは死者が127名達したと昨日2015年11月14日のインターネット記事が伝えている。パリ中心部のコンサートホール、北部のサッカー場、それらの周辺の飲食店等、計6個所が自爆と銃撃の標的となった。

 11月14日、「ISフランス」名義の、「イスラム国」(IS)が通常出す犯行声明と同じスタイルを使い、アラビア語、フランス語、英語を用いた「8人の兄弟が自爆ベルトと銃でフランス首都の標的を正確に攻撃した」とする犯行声明を出したと「asahi.com」記事が伝えている。 

 オランド仏大統領も「イスラム国」の犯行だと言明、「国内の共犯者の支援を得て、国外から準備・組織・計画された」と指摘したと「時事ドットコム」が伝えている。 

 犯行理由をフランスが今年9月、それまでイラクに限定していた過激派組織「イスラム国」(IS)に対する空爆をシリア領内でも始めたことへの報復との見方が出ているようだ。

 コンサートホールを襲撃したテロリストたちはアラビア語で「神は偉大なり」と叫んで銃を乱射したという。自爆したテロリストも、例え叫ばなくても、「神は偉大なり」の信念を強く持ってテロを敢行はずで、テロそのものを、例え無事生還できたとしても、偉大であるとしているイスラムの神への命の捧げを意味しているはずだ。

 特に爆弾を身に着けて信管を抜くかボタンを押すかして身に着けている爆発物を爆発させると同時に自身の身体も爆破させることになって自らの命を自らの手によって瞬時に投げ出し、死の世界に誘(いざな)う自爆テロは自分たちが信じるイスラムの神の教えに狂信的でなければできない業(わざ)であろう。

 考えるに、イスラムの神に身を捧げることを崇高な行為とし、捧げることによって神に近い崇高な場所に自身を置くことができると、いわば神に近づくことができると暗黙の契約によってか、明示的な契約によってか、狂信していなければできない行為に見える。

 このように考えた時、戦前の日本軍も自爆テロもどきの自死戦闘行為が存在していたことを思い出した。
 
 硫黄島の戦いや南洋などの島嶼地での米軍との戦闘で圧倒的に優勢な米軍の軍事力の前に満足に真正面から戦うことができずに身体に爆弾を巻き付けてタコツボを掘って身を隠すか物陰に潜んでいて、米軍の戦車が来るとその下に飛び込み、「天皇陛下バンザーイ」と叫ぶと同時に信管を抜いて爆弾を爆発させ、自身諸共に戦車を爆破させる。

 「天皇陛下バンザーイ」と叫び、「ワー」と言う歓声を一斉に上げて敵陣に突っ込んでいくバンザイ突撃も自死を覚悟した戦闘という点で自爆テロにその性格を共通させていないこともない。

 戦闘が面と面との攻防でありながら、相手の圧倒的な軍事力に対して面で対抗できずに兵士数人が爆弾を身に着けて戦車の下に潜り込んで戦車諸共に自死するといった、戦局を変える力もない個の戦いで対抗しようとする、あるいは戦局に変化を与える見込みがないままにバンザイ突撃して蹴散らされる、何となく物悲しい気もするが、こういった自らの命を率先して捨てることを厭わない戦闘行為を成し得たのは天皇を絶対的存在とし、天皇に自身の命まで含めた奉仕を絶対正義としていた狂信があったからこそであろう。

 「天皇陛下バンザイ」とは天皇という存在すべてに対する賛歌(褒め称えること)であって、その存在を狂信していなければ出てこない日本人の精神性であるはずだ。

 イスラムの過激派が「神は偉大なり」と叫んでイスラムの神に身を捧げる自爆テロを通して自身を神に近い崇高な場所に置こうとしているとしたら、旧日本兵にとってその崇高な場所とは靖国神社と言うことになる。

 戦死することでそこに祀られ、自身が英霊なる神となって、現人神たる天皇の神としての存在に対してその末席に連なる。

 そのような暗黙の契約によって理不尽な戦闘行為も道理に適った崇高な戦闘行為となる。

 こう見てくると、イスラム過激派の自爆テロはかつての日本に70年遅れた狂信性を纏った戦闘行為と言えないこともない。

 日本軍のみならず、国民も揃って日本全体が天皇の絶対性を崇高な思いで迎え入れる狂信者の集団と化していた。

 戦後、占領軍の民主化政策によって上を絶対とする権威主義の呪縛から解き放たれたが、本質のところで権威主義性を思考様式・行動様式としているゆえに国家権力等によって絶対的な存在が創り出されると、あるいは再び天皇を絶対的存在に祭り上げた場合、いつ何時、かつての戦前のような上に対する狂信的な従属性が顔を覗かせない保証はない。
 
 「イスラム国」の凶悪残忍な自爆テロをイスラム教徒の世界のみの出来事としてはならない。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

復興相高木毅の氏代表「政党支部は政党助成金とそれ以外の収入を明確に分けて管理」は盗人猛々しい開き直り

2015-11-14 08:44:31 | 政治



      「生活の党と山本太郎となかまたち」

      《11月4日小沢一郎代表石川県小松市講演発言要旨》    

      講演要旨 野党協力に関して、「共産党はすごい決断をよくした」

 昨日のブログに書いたが、11月11日の参議院予算員会閉会中審議で復興相高木毅(59)が自身代表の政党支部から香典を支出し、それを政治資金収支報告書に記載していた公職選挙法違反の疑いで小川敏夫民主党議員から追及を受けたが、その際、同政党支部が弔電の費目で平成23年に115万円余り、平成24年123万円余り、平成25年124万円余り、計362万円余りの支出を行ったことを政治資金収支報告書に記載されていることに関しても問い質された。

 弔電費用の支出先は福井新聞になっていて、その弔電は新聞の訃報欄に載っている故人の葬儀会場にダイレクトに届けるという福井新聞の弔電サービスを利用したもので、ネットで調べてみると、会員登録すると、訃報欄に載っている故人を指名するだけで新聞社の方で葬儀会場宛に弔電を送るらしい。

 もし親しい知人が死亡した場合はその知人の家族から直接そのことを知らされるだろうから、高木の事務所なりが高木個人名で弔電を直接打てば済む。勿論、知らされないケースもあるだろうが、3年間で計362万円余りを福井新聞の弔電サービスに支出してそれをわざわざ利用するということは面識のないにも関わらず選挙区の故人ということで、葬儀出席の親類縁者や関係者に葬儀会場で弔電が読み上げられることに便乗して自身の名前を記憶させようという選挙運動を意図したものであろう。

 小川敏夫民主党議員は弔電も国民の税金が入っている政党支部の資金からではなく、私費で支出すべきものではないかと問い質した。

 対して高木は「まあ、そういうふうな考え方もあろうかと思います。しっかりと勉強させて頂きたいというふうに思います」とか、「弔電は心を込めて打たせて頂いております」とか小バカにした開き直りを見せて、小川の追及を見事に逃げ切った。

 ところが追及から2日経た11月13日の閣議後記者会見で政治資金収支報告書への弔電支出の記載は法に触れていないと自らの正当性を表明した。

 高木毅「私が代表を務める政党支部は、政党助成金とそれ以外の収入を明確に分けて管理しており、政党助成金から弔電を支出しておらず、事実誤認だ。法令にのっとり適切に処理しており、政治家が祝電や弔電を出すことは公職選挙法上、問題ない」(NHK NEWS WEB   

 「政党助成金とそれ以外の収入を明確に分けて管理している」と、自身代表の政党支部の資金管理の厳格さを主張している。

 だが、11月11日の質疑では、私費で支出すべき香典を公費の形で支出して、その支出を政治資金収支報告書に記載したことの理由を小川敏夫が追及すると、「私が弔問し、私費で出したものを収支報告書では担当者が政治団体の香典として誤って記載した」もので、その過ちの原因を自分で事務所に寄って持っていく場合は間違いはないが、高木本人の外からの指示で「運転手なり、秘書なりが事務所からそういったものを持ってきて、それを私が持っていく」ケースで「事務所に私の私費とそれから政治団体のカネがあるということでございまして、その辺りを取り違えたのだろうというふうに思います」と釈明している。

 既にここで自身を代表に据えて政党支部としている事務所が高木個人の私費と政党支部としての公費を明確に区別する厳格な管理が行われていないことを自から暴露している。

 しかもそういった取り違えが8件もあった。

 私費と政治団体のカネを明確に分けて厳格に管理し、その上香典は私費で出すものとの認識を高木を含めた事務所全員で共有していたなら、間違いようのない収支報告書への使途を香典とした記載でありながら、それを間違えたことは自身も証言しているように厳格な資金管理が行われていなかったことと、香典は私費という情報共有が満足に行き届いていなかった証明以外の何ものでもない。

 それを政治資金収支報告書へ記載した弔電の支出に関しては「私が代表を務める政党支部は、政党助成金とそれ以外の収入を明確に分けて管理しており、政党助成金から弔電を支出しておらず、事実誤認だ」と、ここでは厳格な管理を持ち出す。

 カネには色はついておらず、どちらのカネを使ったか分からないことをいいことに2日前に自身が証言した資金管理の不備を平気で覆す舌の根も乾かぬうちの盗人猛々しい開き直りにしか見えない。

 高木毅が弔電の支出に関して言っていることを誰が信用するだろうか。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

小川敏夫民主党議員の香典疑惑高木毅に対する肝心の質問が抜けた11月11日参議院予算委の手ぬるい追及

2015-11-13 10:32:25 | 政治


 民主党の小川敏夫が11月11日の参議院予算員会閉会中審議で復興相高木毅(59)が自身代表の政党支部から香典を支出し、それを政治資金収支報告書に記載していた公職選挙法違反疑惑を追及した。

 小川敏夫は弁護士、裁判官、検察官を経歴としている。その追及は的確・手厳しいものと期待していたが、些か期待外れだった。結果的に追及し切れなかったのは単に高木毅が強(したた)かだったという理由だけだったろうか。文字起こししてみたから、その質問の程度を評価して頂きたい。

 小川敏夫「高木復興大臣にお尋ねしますが、大臣が代表を務める政党支部からですね、平成24年、平成25年、香典が支出されていますが、これはどういうことなんでしょうか」

 高木毅「お答え申し上げます。平成24年と平成25年に自民党福井県第3選挙区支部で選挙区内の者に香典を支出した旨、収支報告書に記載してあると、この指摘かというふうに思いますが、これにつきましては計8件、記載がございます。

 いずれも私がそれぞれ亡くなられた方へ、葬儀の日までに弔問に行き、私個人の私費で出したものです。私が弔問し、私費で出したものを収支報告書では担当者が政治団体の香典として誤って記載したことが確認できましたので、11月6日、その旨、報告書の訂正をしたところでございます」

 小川敏夫「あのー、一寸ね、お話、説明聞いても、大臣が自分のおカネを私費でお支払いしたと。自分のおカネで払ったんだったら、そこで清算もなしに全部終わってんだから、大臣、自分で払ったおカネがですね、清算も何もない、すべて完結しているのに、何でその無関係な政党支部から支出の処理されちゃうんですか。

 どうしてそういった過ちが起きたのか、一寸説明してください」

 弁護士、裁判官、検察官の経歴からしたら、「私費で支出した香典がどうして収支報告書に政党支部からの公費として記載されることになったのか」ともっと端的に聞くべきだと思うが、どうしてできなかったのだろうか。

 高木毅「事務所に私の私費とそれから政治団体のカネがあるということでございまして、その辺りを取り違えたのだろうというふうに思います」

 この答弁に対して当然、「どう取り違えたのか、どうしてそういった間違いが起きたのか、具体的に説明して貰いたい。1件ぐらいだったら取り違えることもあるだろうが、8件も取り違えるという間違いが起きたというのは不自然だ」といった質問を用意しなければならないはずだ。

 小川敏夫「そうすると、あなた自身が持ってるおカネではなくて、事務所の中にあなたの個人のおカネと政党支部のおカネがあって、それであなた個人のおカネを持っていたものを間違えたと、そういうご説明ですか」

 相手に言わせるべきことをこちらから説明してやる、質問の悪いパターンに見える。

 高木毅「そのように思います」

 小川敏夫の方から説明してやったことが相手が望んでいる内容と一致して、そのまま答弁として成り立つから、単にイエスと答えれば済むようにしてしまった。結果的にどう取り違えたのか、どうしてそういった間違いが起きたのかの具体的な状況を本人から説明させることをさせずじまいにしてしまった。

 尤も次の質問次第で具体的に相手に説明させるよう仕向けることは挽回できる。

 小川敏夫「じゃあ、あなた葬式に行く都度、事務所に寄って、その香典のおカネを持ってきて、それから行くんですか。大体普通自分の財布の中から持っているおカネを香典袋に包んで持っていく。事務所に毎回寄ることないと思うんだけど、どうですか」

 やはりどう取り違えたのか、どうしてそういった間違いが起きたのかの具体的な説明を求める肝心な追及が抜けている。

 高木毅「まあ、運転手なり、秘書なりが事務所からそういったものを持ってきて、それを私が持っていくということでございます」

 要するに毎回事務所に寄るわけではない、携帯なりで指示を出して持ってこさせて、それを自身で葬儀なりに持っていくと説明している。

 では、運転手なり、秘書なりがどうしてそういった間違いを起こすことになったのか、1件だけではなく、8件も事務所に置いてある高木個人の私費と政治団体のカネを取り違えたことになる。 

 当然、ここでいくつかの問題が浮上する。

 その一つは高木個人の私費と政党支部としてのカネ――公費を事務所はどう管理していたのかである。管理の仕方によって運転手、あるいは秘書が間違うこともあり得る可能性も生じる。

 そういった可能性が出てくれば、高木毅の言っていることが正しいということになる。

 但しどういう指示を出したのかの問題も見逃してはならない。そのことによって、高木の言い分の正しさは覆ることになる。

 香典袋は自宅にも用意してあるだろうけれども、外出先から運転手なり、秘書なりに持ってこさせる場合を想定して事務所にも置いてあるはずだ。自宅の香典袋を使う場合は自宅に置いてあるカネを包むだろうから、それを弔問宅に持っていけば、小川敏夫が質問したようにそれで完結するため、収支報告書への記載間違いは起きない。

 当然、「誰それが亡くなったから、香典を用意してくれ」、あるいは事務所が既に亡くなっていることを承知していたなら、「今日香典を持っていくから、用意してくれ」と包む金額と共に指示を出したことになる。その指示を受けて事務所にある香典袋に言われた金額のカネを包んで高木本人に届けることになる。香典袋はいつ何時用立てることができるように前以て本人が名前を署名しているかもしれない。

 例え自身が背広の内ポケットに常に署名入りの香典袋を用意していて(そうしているとは思えないが)、カネだけ持ってこさせるにしても、政党支部のカネ(=公費)の中からか、私費の中からか、区別できる指示を出さなければならない。当然の公私の区別だからである。

 例え同じ一つの金庫の中に私費と公費を保管していたとしても、それが区別できない状態での保管は常識としてあり得ないから、事務所側は指示に応じてどちらからか支出することになる。

 それがどのような指示に従った支出であったとしても、支出のたびに事務所の公費・私費別の帳簿にそれぞれに記録するだろうから(別々でなければ、公私混同することになるし、記録して置かなければ、後になってどこで何に支出したのか皆目見当がつかないことになる)、それが私費からの支出を求める指示であった場合、収支報告書に記載する間違いは起こり得ないことになる。

 当然、小川敏夫は高木がどういう指示を出したかを焦点としなければならない。香典への支出だという使い道とその金額と共に指示を出したのか、どこに用意して置いた香典袋を使ったのかといった質問である。

 小川敏夫「ちょっと視点を変えますがね。選挙支部から2年間に9回、葬式の香典があるんですけど、大臣は2年間に9回しか葬式に出ないんですか。他にも葬式に出たことがあるのではないのですか」

 何で視点を変えるんだよと言いたくなる。

 高木毅「ご指摘の葬式は8回でございますが、他にも勿論出ることはございます」

 小川敏夫「まあ、大臣もお付き合いが広いし、また、政治家もされているから、色々あるでしょう。何回ぐらい、この2年間に何回ぐらい出席しましたか」

 高木毅「記憶は定かではありませんけども、その8回以外にも出たということはあるかもしれません」

 言質を取られないよう、うまく逃げている。尤も逃げることのできる質問を繰返していることにもなる。

 小川敏夫「他にも葬式に出ている。当然、そのときも香典を持っていっていると思うんですけどね、そのときの香典はこちらの政党支部に含まれないんで、何でこの件だけがこの政党支部の記載に載ってしまったんでしょうか」

 高木毅「先程委員もご指摘頂きましたけれども、自分で財布から入れることもありますし、それからそういった事務所から持ってきたものを持っていくという、そういうパターンもあるということです」

 この答弁でも、事務所にどういう指示を出したのかを問題としなければならない。香典に使うからと指示を出して、事務所側が公費から支出したとしたら、公費からの支出を習慣としていることになり、当然、収支報告書への記載は習慣に応じた当然の措置となって、公職選挙法違反の疑いが出てくる。

 尤も私費と認識して支出していたなら、収支報告書に記載している以上、訂正で誤魔化せるとしても、単なる間違いでは済まされない。

 小川敏夫「大臣はご自分で行くときにご自分で出す。事務所から持って行って事務所から大臣におカネを出したから、間違えるという気もするんですがね、まあ、多分否定するんでしょうから、いいんです。私の考えですから。

 それで具体的にお尋ねしますがね、平成24年12月26日、これはですね、選挙直後の特別国会の首班指名の日であります。大臣は議院運営委員会の委員であります。この日に行かれたんですか。この26日の香典の分の支出は」

 高木毅「12月26日の日でございますが、もちろん私は東京におります。ただご指摘の日付というのは多分収支報告書の年月日の欄に記載されているものと承知をしておりますが、事務所の関係者によりますと、香典については葬儀の日を年月日の欄に記載したものと聞いております。

 いずれにしましても、私が葬儀の日までに弔問し、そして香典を出したということに間違いはないと思います」 

 事務所の帳簿に支出した時点でその日付と金額・使途を記入していないことになる。それとも記入してはいるが、葬儀の日に合わせて収支報告書の支出月日を記載する習慣になっていたのだろうか。

 だとしても、8件も件数を重ねているのだから、高木本人が事務所にどういう指示を出したのか、一度は聞かなければならない問題である。香典だからという指示に事務所側は公費から支出して収支報告書に記載したのか、私費から支出しておきながら、報告書に記載したのかである。

 小川敏夫「一寸先程と答弁の趣旨が違いますね。先程はすべて葬儀に出席して、私費から香典を支出したと。今のお話ですと、葬儀の日には大臣は行っていない。ただ葬儀の日に合わせて支出したと。そういうふうに言っているんでは最初の説明と一寸違うように思うんですが、如何ですか」

 高木毅「失礼しました。先程(の答弁は)間違えたと思いませんけども、葬式の日までに弔問に行き、私の個人で私費で支出したものでございますと答えたはずでございます」

 小川敏夫「この12月26日にはですね、葬儀にはあなたのご子息が出席して、それでご子息が香典を出したんじゃないですか」

 高木毅「繰返しになりますけども、この件につきましても私が葬儀の日までに弔問し、香典を出したと思います」

 「思います」だから、あとで記憶間違いでしたと逃げることができる。

 小川敏夫「もう少し具体的に、葬儀の日までにというお話しでした。それはお通夜、告別式ではなくて、それよりも前の日にあなたが弔問に行って、そのとき香典を置いてきたと、こういうふうに言っておられるんですか」

 高木毅「お通夜の前もありますし、お通夜から葬式の間もあります。いずれにしても葬儀の前までに、葬儀までに私が行ったということでございます」

 小川敏夫「平成24年12月26日、安倍総理の首班指名の日、この支出を聞いているのです。如何ですか」

 高木毅「24年12月26日でございます。その件でございます。12月23日にこの方はお亡くなられました。そして26日がご葬儀でございますが、23日は日曜日、24日は祝日でございます。

 いつだったかは記憶に定かではございませんけども、いわゆる、言うまでもなく、繰返しになりますが、葬儀までに私が弔問をして香典を出したということでございます」

 小川敏夫「一つ事実確認ですがね、あなたが事前に弔問に行ったときに香典を渡した。で、私が質問しました。葬儀にはあなたのご子息が行って香典を渡したんじゃないんですかと。あなたの名前の香典を渡したんじゃないんですかという事実を指摘しましたが、この指摘、事実はないということですね」

 事務所にどういう指示を出したのかという質問を既に逃している。息子が代理したのが事実で、高木本人が弔問したとの本人の証言が非事実であってとしても、一度逃がしている以上、ウソを重ねて逃げることは分かり切っている。

 高木毅「繰返しになりますがね、私が葬儀までに弔問に行き、そして香典を渡したということでございます」

 小川敏夫(席に座ったまま)「息子とのことは」

 高木毅「代理で行ったかは、それは記憶と言いますか、記録にもございませんが、いずれにしましても葬儀までに私が弔問に行ったということでございます」

 小川敏夫「ですから、この欄に記載してある2万円はあなたが弔問に行ったときにあなたが渡したということですね。あなたの話は」

 高木毅「ハイ、そういうことでございます」

 小川敏夫「平成25年11月27日の件ですけどね、これはあなたが弔問に行ったのは葬儀の後なんじゃないですか」

 高木毅「25年11月27日の葬儀でございますけども、22日金曜日から24日日曜日まで地元に滞在しておりましたので、日付は明確には記憶しておりませんけども、葬儀の日までに弔問したということでございます」

 小川敏夫「この香典もあなた自身が持っていったということですか」

 高木毅「ハイ、そういうことでございます」

 小川敏夫「あの、話は変わりますが、やはりこういう葬儀の香典、これは私的でなくてはいけない。ですから当然、私費でなければいけないと思うんですが、例えば葬儀に関して弔電なんかを打ちますね。

 これなんかも当然、私費で支出すべきだと思いますが、大臣如何ですか」

 高木毅「弔電については一寸今、私は存じ上げておりません」

 小川敏夫「いやいや、大臣の政党支部のこの収支報告書でね、平成23年に115万円余り、平成24年123万円余り、平成25年124万円余り、弔電の支出があるんですよ。

 やはりこれは政党支部、国民の税金が入っている。この政党支部の支出としては好ましくない。当然、私費で出す支出すべきものじゃないんですか」

 高木毅「まあ、そういうふうな考え方もあろうかと思います。しっかりと勉強させて頂きたいというふうに思います」

 追及が手ぬるいから、逃げ切れると自信をつけたのだろう、開き直りに入った。小川敏夫としたら、高木が「そういうふうな考え方もあろうかと思います」と言っている以上、「では、公費で出しても構わないと思っているのですか」と問い質すべきを問い質さなかった。

 小川敏夫「これはね、弔電を福井新聞、新聞社にお支払いになっている。で、新聞社の方(ほう)は新聞に訃報を載せると、この載った訃報の方にもう頼まれなくても全部弔電を打つと、こういうサービスをやっている。

 この選挙区内に福井新聞の記事の訃報に載った選挙区内の人には全員に自動的にあなたと面識がなくても弔電を打っていた。そういうことじゃないですか」

 面識がなくて、死者の家族や葬式で弔電を読み上げる慣習を利用して葬儀出席者に高木本人の名前を知らしめる選挙運動と言うことなら、死者が生き返って、俺はこんな人間から弔電を貰う謂れはないなどと言う心配はないが、利益供与に当たらないものの、選挙区内の葬式を利用した公費の支出という点で、問題点がないでもないことになると思うが、公職選挙法は弔電について触れていない。

 触れていなくても、こすからい選挙運動でしかない。

 高木毅「弔電は心を込めて打たせて頂いております。今回はこう言った指摘をマスコミから指摘を受けましたので、今ご指摘の香典、失礼しました、弔電につきましても、その他の支出も含めて、事務所の担当者に点検を指示しているところでございまして、仮に問題があるということであれば、法令に則り適切に処理をしたいと考えております」

 「弔電は心を込めて打たせて頂いております」の人を小バカにしたような言葉を聞くと、かつて参考人招致された国会で太々しい物言いでぬらりくらりと追及をかわした籾井勝人NHK会長そっくりに見えてくる。

 但し小川敏夫の追及が人を小バカにした発言を許していることになる。

 小川敏夫「まあ、単価はランクがあるんで分かりませんが、弔電1通千円とすると、1240通、1日3通も4通も弔電を打っているわけですよ。まあ、そうすると、税金が入っている資金からですね、大臣が恐らく見知らぬ人もあるだろう、新聞に訃報が載った人に全部弔電を打つという支出は別に反省することはないと、そういうお考えですか」

 高木毅「心を込めて亡くなられた方に弔意を表しているというふうに私は思っております。繰返しになりますけれども、今そうした要するに、こういった指摘を受けましたので、他の支出についても事務所の担当者に再点検を指示しているというところでございます」

 開き直りと小バカにした態度を程よく混ぜている。

 小川敏夫「悪いと思っている話はないから、悪いと思っていると思っていないんですね」――

 小川敏夫は高木のかつての下着泥棒疑惑の質問に移るが、そういった事実はないの一点張りの答弁を繰り返し、小川が週刊誌で報道した出版社を名誉棄損で訴えないのか尋ねると、弁護士と相談していると凌ぎ、さらに小川が弁護士と相談するものではない、自身から訴えるべきことで、訴えたいと弁護士に言えば、弁護士は手続きを取ってくれると言っても、「そうしたことも含めて弁護士と相談させて頂いております」と強かに言い逃れる。

 多分、時間を計っていて小川の質問時間がもう少しで切れるのを計算していたに違いない。しかも1日限りの閉会中審議である。高を括ったのだろう。

 例え今回小川敏夫が追及し切れなかったとしても、答弁と異なる事実が出てくると、偽証したことになって、偽証は許されない証人喚問を求められることになる。

 だとしても、小川敏夫自身が今回の質問で追及し切れなかった事実は変わらない。返す返すも事務所から香典を持ってこさせるとき、どういう指示を行ったのか、その指示に対して事務所側はどういう対応で応じたのか、肝心の質問をしなかったことは手ぬるい追及と言わざるを得ない。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

稲田朋美の10月10日衆院予算委、山谷えり子の10月11日参院予算委「日本民族」発言の危険な意味

2015-11-12 10:41:42 | Weblog


 2015年11月10日衆議院予算委員会閉会中審査。トップバッターは安倍晋三と思想的に瓜二つの自民党右翼国家主義者稲田朋美56歳。TPPの質問から入って、大風呂敷でしかない参議院選挙用のキレイゴト「1億総活躍社会」へとヨイショそのものの質問へ移っていった。安倍晋三はそのヨイショに応えて自己宣伝に努める。

 「1億総活躍社会」がなぜ来年の参院選用のキレイゴトかと言うと、 厚労省前日(10月9日)発表9月「毎月勤労統計調査(速報)」で物価変動考慮の実質賃金は前年比たったの0.5%増・3カ月連続プラスとなったものの、安倍晋三は同じ11月10日の国会で岡田民主党代表に対してなかなか実質賃金が上がらなかった理由に消費税を5%から8%に上げた3%分、実質賃金を押し下げる効果があったことなどを挙げ、「総雇用者所得は民主政権時と同水準で推移している」と、実質賃金目減りを差引きするアベノミクス成果としていたが、「総雇用者所得」は高所得層から低所得層までの所得の総額であり、前者の所得が増え、後者が増えない全体所得の増加もある格差を構造としている指標であることを無視しているからである。

 このことは「1億総活躍社会」に格差の視点を欠いていることの相互反映であり、その視点を欠いている以上、キレイゴトとしか言うことができない。

 稲田朋美「次にアベノミクス第2ステージ『1億総活躍社会』についてお伺いを致します。総理は少子高齢化を克服し、日本の未来に向かって挑戦することを安倍政権の最優先課題にすると明確に示されました。

 人口減に歯止めをかけ、世界でも最も急速に進んでいる少子高齢化社会を持続可能なものにしていく。これは明治維新、戦争復興に次ぐ日本民族の歴史的な挑戦だと思います」・・・・・・・

 質問はまだ続き、安倍晋三の答弁は例の如くの日本は長いことデフレに見舞われていたが、安倍政権3年でデフレを脱却しつつある、もう少しで脱却できる、賃金も増加しつつあるといった宣伝に相努め、10月29日(2015年)第1回一億総活躍国民会議で提示した「合計出生率1.8の実現」だとか、「GDP600兆円の達成」を並べ立てたに過ぎない。
 
 アベノミクス下でGDPの6割を占める消費が伸びないのは株高で富裕層が大きな利益を上げて高額な貴金属をいくら買い込もうと、高級レストランで高額な料理をいくら贅沢三昧しようが、そういった消費の総額よりも一般生活者一人ひとりが使う額は少額であっても、消費に回すその総額の方が頭数で圧倒的に優勢を占めるために遥かに高額になるのだが、その一般生活者の賃金が少しぐらい上がっても物価高に追いつかずに消費に回す余裕がないことからの消費の低迷であって、当然、格差に目を向けなければならないはずだが、安倍政治は格差の視点からの賃上げ努力となっていない。単に数字上上がればいいとしている。

 「1億総活躍社会」で掲げたGDP600兆円を実現できたとしても、格差は置き去りにされ、なお拡大しているに違いない。

 所得の分配が上にだけ恩恵をもたらしているのはアベノミクス景気が格差で成り立たせているからに他ならない。

 稲田朋美は「1億総活躍社会」は「明治維新、戦争復興に次ぐ日本民族の歴史的な挑戦」だと言っている。

 翌11月11日の参議院予算委員会閉会中審査。これも右翼の山本えり子65歳が質問に立った。

 山谷えり子「私は領土・主権・海洋担当大臣としてですね、この地図(日本と日本海を挟んで中国大陸の東側を入れた地図を描いたパネルを出して)を小・中学校に配りました。

 きちんと島々を明記し、そして日本は小さな島国だと習っておりましたが、海洋面積では世界第6位なんですね。アメリカ、ロシア、オーストラリア、インドネシア、カナダ、日本という順で、海の面積では世界第6位でございます。

 7月20日の20回目の海の日には総理もご出席頂いてイベントを開きましたけれども、その海洋立国日本という政府インターネットテレビはですね、宣伝もしていないのに非常にアクセス数が多くて、7月半ばのアクセスが総理の70年談話が1位でしたが、海洋立国日本というのが3位に着けておりましてですね、やはり『われら海の子、われら海の子』の日本民族のDNAというのは、何か大きなものがあるのかなあ、というふうに思っております」・・・・・・・

 右翼国家主義者の稲田朋美と同様、山谷えり子も「日本民族」という言葉を使った。

 これは偶然ではない。右翼国家主義者として共に日本を「日本民族」の国家だと信念し、その信念を血としているからである。

 だから、稲田朋美にしても山谷えり子にしても、自然と「日本民族」という言葉が口を突いて出たのだろう。

 安倍晋三にしても「日本の美しい国柄」と言うとき、その国柄の背景には「日本民族」を置いているはずである。「日本民族」が作り上げた国柄だと。

 問題は今の時代・現代に於いてもそれを通用させていることである。「1億総活躍社会」を「日本民族の歴史的な挑戦」だと、民族的な、いわば日本民族に限った偉大な試みに祭り上げている。

 山谷えり子は「やはり『われら海の子、われら海の子』の日本民族のDNAというのは、何か大きなものがあるのかなあ」とそのDNAの偉大さ、その血の凄さを謳い上げている。

 と言うことは、稲田朋美も山谷えり子も共に日本を民族的な優越性を持たせた単一民族国家だと見做していることになる。見做していなければ、「1億総活躍社会」を「日本民族の歴史的な挑戦」だと、日本民族に限った挑戦とすることもないし、「日本民族のDNAというのは、何か大きなものがあるのかなあ」と、日本人だけの血を言うこともない。

 そもそもからして日本を単一民族国家とするとき、既にそこに民族的な優越性を持たせている。あるいは民族的な優越性を既成事実としている。

 安倍晋三が自著「美しい国へ」で書いている、あるいはテレビで発言している「日本では、天皇を縦糸にして歴史という長大なタペストリーが織られてきたのは事実だ」にしても、民族的な優越性を天皇に象徴させた、それ故に単一民族国家意識を形作ることになっていることからの天皇観であろう。

 天皇という存在を崇拝していなければ、天皇を国の中心に常に置いたこのような思想を身に纏うことはない。天皇の存在と関わりのない場所で歴史を作り上げてきた世俗権力者や一般民衆の存在を一切排除している。

 確かに日本という国の人種構成は日本人が95%以上占めているそうだが、歴史の初期に於いて中国大陸や朝鮮半島から多くを帰化人として迎えている混血人種であり、今日に於いても多くの外国人が日本国籍を得ている。今後も日本国籍を得る外国人も増えるだろう

 帰化日本人に関しては自然人類学者であった故埴原(はにはら)和郎氏が3世紀の弥生時代前期から奈良時代に至る7世紀までの1000年間に朝鮮半島から日本にやってきた渡来人の数を数十万から100万と推定していて、この推定は大阪府吹田市の国立民族学博物館小山修三教授が、縄文時代の約1千年間に数千人~30万人の間を浮動していた人口が弥生時代に約450万人の増加を見ていて、自然増とは決して見えないこの人口増加の最大原因は大陸からの民族大移入だとしているコンピューターを駆使した検証によって一種の裏付が行われている。

 いわば純粋日本人と言える存在はそれ程多くはない。

 このような歴史を無視するとしても、民族のレベルでその優越性を仄めかせて国家を誇るのは、何事も価値判断の根拠を民族の血に置くことになって、非常に危険な思想である。

  民族の優越性を思想的背景としていながら、外国との対等な関係や友好関係を言う。ゴマカシを働かせた対等関係、あるいは友好関係となる。

 安倍晋三にしても稲田朋美にしても山谷えり子にしても、このような危険な思想に染まっている。稲田朋美と山谷えり子に関して言うと、そのような危険な思想を10月10日と11月11日のそれぞれの予算委員会で露わにした。

 決して見過ごすことはできない。

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

安倍晋三の10日衆院予算委対岡田克也答弁「総雇用者所得」は非正規雇用者を政策的に切り捨てている証明

2015-11-11 10:16:25 | 政治


 民主党代表岡田克也が2015年11月10日の衆議院予算委員会閉会中審査で質問に立ち、安倍晋三の憲法9条改正意思、日中韓首脳会談、非正規雇用や賃金の問題等を質した。

 ここでは雇用や賃金についての質問だけを取り上げる。

 民主党のHPにアクセスしてみると、岡田克也の写真と共に「直球勝負」とか、「権力の暴走を許さない。その先頭に立つ。」とか大文字で書き入れているが、岡田の11日の質問はとても直球勝負とは言えないし、権力対抗ともなっていなかった。追及とは程遠く、まるで政府の政策の肯定を予定調和として、さらなる政策をお願いする与党議員の質問さながらであった。  

 HPには「経済」に関する質問について次のような説明があった。

 (1)安倍政権下で正規雇用が大きく減っている
 (2)実質賃金が目減りしている
 (3)最低賃金をしっかり引き上げるべきだ
 (4)アベノミクス『新3本の矢』は分かりにくいうえに財源が示されていない
 (5)政府の『骨太の方針』の中で社会保障費を毎年5千億円増に抑制すると言っているが内容
    について基本的な説明がない
 (6)財政の立て直しは景気が良くなっている今こそチャンスだ――と指摘し、安倍政権の方針
    の矛盾、曖昧さを質した。

 「安倍政権の方針の矛盾、曖昧さを質した」となっているが、果たして実際はそうなっているのか、ご覧あれ。

 先ず下に記載した、民主党政権下の2012年4~6月と安倍政権下の2015年4~6月の総務省の「労働力調査」から抜粋の「雇用者数の推移(万人)」を記したパネルを示した。

 岡田克也「総理はアベノミクスの成果として雇用が100万人以上増えたと言うことをよく言われます。失業率の低下とか、求人倍率が上がっているとか、色々な数字はあります。そういう中で、私はやはり全体が100万以上増えているものの、それは非正規の働き方が増えているのであって、正規労働者はむしろかなり減っていると言うところが非常に重要だというふうに考えております。

 この数字は今日発表になる、2015年、(聞き取れない)になるという話もありますが、現時点の最新の値が2015年4~6月、その3年前のこれは民主党政権ですが、2012年4月~6月、3年前と比べた数字であります。

 全体の雇用者数ですが、確かに121万に増えている。総理は100万人以上増えているとおっしゃっているのはそのとおりであります。

 ただ非正規は178万人増えて、正規は56万人減っていると。で、景気が次第に回復地点にある、デフレから脱却しつつあると総理は説明されてますが、そいう中にあって、正規は減っている。現状維持なら兎も角、減っているということはやはりこれは重大ではないかと、いうふうに思うわけですね。

 特に25歳から34歳で、58万人減、35歳から45歳で51万人減。まあ、合わせてですね、働き盛りと言いますか、25歳から45歳というところが100万人以上減っていると言うことは、私は重大だというふうに思いますが、総理はこのことについてどう考えておられるんですか」

 安倍晋三「あの、先ず正規に於いてですね、これは今委員が示された正規で56万人減っているではないかということであります。ま、確かに民主党政権に於いてもですね、その前の2009年から比べれば65万人減っているわけでございます。

 えー、これは民主党政権のときの方が減っているのではないかと言いたいばっかりにではなくて、ここは人口が減少しているということでありまして、人口の中に対する比率、正規の比率を見れば、これは実は横這いでございます。その中に於いて非正規が増えているのは事実でございます。

 ではなぜ非正規が増えているかと言えばですね、景気回復に伴ったパートなどで働き始めた方が増加しているということが一点、と同時にですね、また65歳までの雇用確保の措置が実施されて、高齢者で非正規が増加しているということでありまして、えー、不本意ながら非正規の職に就いている方も前年に比べてみればですね、減少してきているわけであります。

 そこで正規雇用の状況を見なければならないわけでありますが、働き盛りの55歳未満では、平成25年から10四半期連続で非正規から正規に移動する方が正規から非正規になる方を上回っております。

 えー、そして正社員の有効求人倍率は調査開始以来の最高水準になっているわけでございますから、間違いなく正規を巡る雇用状況は良くなっているわけでございます。
 
 足元では正規の方が前年に比べて増加しているなど、これも着実に改善していると思います。そして正規・非正規間にみられる賃金格差であります。我々はこれは注意深く対応してきたわけでございますが、平成24年から平成26年にかけて縮小してきております。

 パートで働く方の時給はここ2年間で最高水準になっております。非正規雇用の方の待遇改善も着実に進んでいるということでございます。私達が進めている対策がですね、しっかり、この雇用環境を良くしていく。雇用環境全体を良くしていく。

 それは景気を良くしていくことによって雇用環境を良くし、さらにその中でも正規に行きたい人が行けるような状況を作っていく。と同時にですね、正規と非正規の格差を是正していく。我々はこれを成功しつつあると考えております」

 「人口が減少している」から、人口に対する正規の比率を見ると、減少しているわけではなく、横這いだと言っている。

 人口は減少しているかもしれないが、パネルを見ると、役員を除く雇用者は5146万人から5267万人へと121万人増えている。大体が自分自身が安倍政権になって雇用者は100万人以上増えたと言っているし、岡田代表自体が121万人増えていると指摘したばかりである。

 あくまでも総雇用者数に対する正規・非正規の人数であり、比率でなければならないのに、総雇用者数に替えて人口を持ってきて、そのことに対する人数・比率に置き換える詭弁・牽強付会を持ち出している。これ程のゴマカシはない。

 そして非正規の増加を景気回復に伴ったパート労働の増加と65歳までの雇用確保の措置に伴った高齢労働者の増加が原因で、不本意非正規は前年比で減少していると答弁している。

 だが、2014年平均の総務省「労働力調査(詳細集計)」を使った『非正規雇用の現状と課題』(厚労省)で.「正社員として働く機会がなく、非正規雇用で働いている者(不本意非正規)の割合」を見ていみると、左図の通り、非正規雇用労働者全体の18.1%ではあっても、全体で381万人も占めていて、「1億総活躍社会」というキャッチフレーズからすると、決して無視はできない数字である。  

 非正規の増加を景気回復に伴ったパート労働と高齢労働者の増加に置いていることは同時に企業側の安価な労働力の求めに応じた現象でもあって、それを数の上での増加のみで見るのは政策者にあるまじき表面的な見方に過ぎない。

 「正社員の有効求人倍率は調査開始以来の最高水準」だと言っていることにしても、2015年9月の有効求人倍率(季節調整値)1.24倍に対して同時期の正「社員の有効求人倍率」は0.78倍で、1に満たない。 

 企業は人件費抑制のために非正規社員をより多く求人対象にしていると言うことの証明である。

 確かに安倍晋三が言っているように「正規の方が前年に比べて増加している」。だが、景気回復による人手不足を受けた囲い込みであって、景気が悪化すれば、いつ非正規雇用に転換しない保証はない流動性を常に帯びている。

 このことは5人以上を雇用する民間と公営の約1万7000事業所を対象に実施した厚労省調査を伝える2015年11月4日付「時事ドットコム」記事、《非正規、8割の企業が採用=最多理由は「賃金節約」-厚労省調査》が証明している。

 2014年10月1日時点で非正規社員を雇用する民間事業所の割合は79.6%(2010年前回調査+1.9ポイント)

 複数回答による非正規こよ理由 

 「賃金の節約」38.8%(最多)(前回調査-5.0ポイント)
  「仕事の繁閑への対応」33.4%(前回マイナス0.5ポイント)
 「即戦力・能力ある人材の確保」31.1%(同+6.7ポイント)

 厚労省「雇用情勢の改善で人材確保が難しくなり、コスト削減のための非正規社員の雇用が減った」

 この解説はそのまま景気が悪化すれば、非正規へ転換、あるいは人材削減そのものを意味する。

 正規・非正規間にみられる賃金格差は「平成24年から平成26年にかけて縮小してきております」と言っているが、2015年9月30日の「日経電子版」によると、2014年の正規労働者年間給与が1.0%増の478万円、派遣社員などの非正規労働者が1.1%増の170万円で2.8倍の308万円もの差がある。  

 正規と非正規の賃金上昇が同率程度では到底追いつかない賃金格差であるが、それを「正規と非正規の賃金格差は縮小しています」の一言でアベノミクスの成果の一つとするのは自身の政策に対する検証精神のなさの現れ以外の何ものでもない。

 上記記事は2014年の1年間に支給された給与の平均は前年比0.3%増の415万円で2年連続で増えているが、給料・手当が353万円で横這い、賞与2.6%増の62万円だと伝えていて、これも景気の動向と連動しがちなバランスの悪い内訳であって、上記記事を併せ考えると、手放しで喜ぶことも手放しで安心することもできない賃金状況と言う他ないが、安倍晋三の答弁はアベノミクスをバラ色に包んだものとなっている。

 このことは次の発言に象徴的に現れている。
 
 「それは景気を良くしていくことによって雇用環境を良くし、さらにその中でも正規に行きたい人が行けるような状況を作っていく。と同時にですね、正規と非正規の格差を是正していく。我々はこれを成功しつつあると考えております」

 これまで挙げてきた統計の多くはあくまでも平均であっで、平均以上の上位と平均以下の下位ではその差は大きく、上位に位置する者たちがアベノミクスの円安と株高によって資産を大幅に増やした状況を考えると、格差は確実に拡大している。果たして「成功しつつある」と言うことができるだろうか。

 岡田克也は安倍晋三の答弁からこういった問題点を追及しなければならないのだが、そうはなっていなかった。  

 岡田克也「非正規から正規への動きが増えている。これは色々な統計の取り方の問題です。ただ、私が言いたいのは絶対数が減っていると、景気回復局面に分かれて正規の絶対数が減っていると、それは全体の働く人の数が減っているからだとおっしゃるかもしれませんが、じゃあ、非正規の数も増えているわけですから、そいう中で正規が減っていると言われるというのは、私はやはり深刻に把えるべきだというふうに考えます。

 特にこの25歳から44歳という、まさしくこれから家庭を持ち、子どもをつくり、結婚をし、家庭を持ち、そしてそういう働き盛りの人たちが不安定な雇用が増えてきているということについては何らかの政策の対応が私には絶対に必要だと思うわけであります。さらなる正規雇用への転換やあるいは職業資格の取得を後押しする制度、そういったことをさらに政府として私は力を入れるべきだというふうに思いますが、総理、こういうふうなお考えありますか」

 自身がパネルで役職を除く総雇用者数が増加していることを示しておきながら、安倍晋三の減少しているという人口に騙されて曖昧な追及に変えてしまっている。しかも「直球勝負」とか、「権力の暴走を許さない。その先頭に立つ。」と言った民主党の宣伝文句をどこかに投げ捨てて、政府にそれなりの対応を求めるという、まるで政府の政策を後押しする自民党議員の質問みたいな具体性もない質問になってしまっている。

 安倍晋三「それはですね、当然、我々もそれぞれの年齢層ごとにですね、しっかりキメ細かく積極策をしながら、正社員になりたい人はその目的を実現することができるように、こうした雇用に向けてのですね、いわばキャリア形成等も含めて、腐心をしていきたいと、このように思っております」

 岡田克也「是非具体的に政策をお願いしたいと思います。次にです。賃金ですが、賃金が増えたということを総理はよく言われます。ただ問題は実質賃金なんですね。

 で、これで見ると(実質賃金指数を棒グラフにしたパネルを示し)、民主党政権の時代には平均して99.8。2010年を100とした数字でございます。ところが安倍政権になると、平均で96.5ということで、むしろ実質賃金はマイナス。物価が上がっている中で賃金がそれに追いついていない。

 実質賃金が下がっていれば、それは消費が増えるはずはない。それは現在の消費低迷の大きな原因になっていると。これは誰が考えても、そうだと思うんですが、こういうことについてどうお考えですか」

 安倍晋三「実質賃金を見ればですね、実質賃金指数はですね、安倍政権になって下がっているということはこれはいわば働き始める人が多いわけですから、安倍政権、新たに100万働き始めました。

 しかしそれは最初はどうしても慎重にいきますから、パートで働き始める方が当然多いんです。企業側もそうですし、働き始める方もそうであります。それを平均しますから、当然、これは景気回復局面で常にこういう現象が起こります。つまり景気が回復しているということであります。

 そしてそこでですね、大切なことは・・・・、(議場が騒がしくなって)すみません、少し静かに、こういう議論しているんですから、おとなしく聞いてくださいよ。たまにね(ニコニコと鷹揚なところを見せながら)。

 そして実質総雇用者所得についてはですね、稼ぐ額ですね、総額ですね、それは民主党政権下の2010年から2012年までの平均を比較すると、ほぼ同じ水準でありますが、我々がデフレ脱却に向かいながら、且つ消費税引き上げの影響、消費税を引き上げをしてですね、影響を加味して同水準ということであります。

 我々は3%引き上げたということですから、これは消費税を3%引き上げて、いわばこれは実質賃金を3%押し下げるという効果を入れ、そして且つデフレから脱却するために今徐々に物価が上がっていくということも加味してですね、実は民主党政権と、デフレ下でやっていることですね、実は同じ水準だったと。

 これは総雇用者所得ではそうなっているということは申し上げておきたいと思います」

 景気回復局面ではパートで働き始める方が多いことと消費税3%増税によって実質賃金は下がると、その低下の理由を尤もらしく述べている。

 だが、先の記事は非正規雇用が減ったとしているものの、非正規雇用採用理由が「賃金の節約」と 「仕事の繁閑への対応」等、非正規雇用者を簡易的な間に合わせの対象としていて、後者は人出不足から正規社員として求人しないと応募が来ないことからの正社員として囲い込むための止むを得ない措置の一つに入り、単に景気回復局面での現象とする説明は表面を把えただけの解釈で答弁しているに過ぎない。

 人手不足がなければ、やはり賃金節約のために非正規で採用する可能性が高いからである。

 また消費税3%増税によって3%の実質賃金が下がったと言っているが、消費税増税は予定のスケジュールとしていて、そのために公共事業を主体とした何十兆円もの景気対策を打っていながら、大震災復興の公共土木事業と民間土木事業と重なって人手不足を誘発し賃金上昇に貢献したが、公共事業による景気対策はもはや時代遅れと言われていて、公共事業から他分野への波及は殆どなかったはずで、消費税増税を実質賃金低下の理由に持ち出すのは的外れ以外の何ものでもない。

 安倍晋三はまた「実質総雇用者所得」を持ち出して、その額は民主党政権時代と「ほぼ同じ水準」だからと、実質賃金の目減りの代わりになるような答弁をしているが、2014年の正規労働者と非正規労働者の年間給与格差が308万円もある上に全体で見た場合、一方に株や土地、その他の多額の金融資産を抱えている高額所得者が存在し、一方で2014年調査で日本人の6人に1人が貧困層に属していて、満足な貯蓄もない低所得者が多数存在するなど所得金額に階級がある以上、何の説明にもならない実質総雇用者所得を持ち出してアベノミクスの成果の一つとすること自体、国民を誤魔化す意味もない答弁であると言うだけではなく、貧困層を含めた低所得層を形成することになっている多くの非正規雇用者を、あれこれ対策を打っているかのように言っているが、「実質総雇用者所得」という指標を持ち出すこと自体、実際は如何に切り捨てているか、その象徴となる発言であろう。

 安倍晋三の答弁に追及する点が多々ありながら、岡田克也はそこに目を向けることができず、政府の政策を後押しする自民党議員の質問から抜け出ることができなかった。 

 岡田克也「まあ、総理、あの、2年前ならね、最初先ずパートだったから、そういう説明は通じるけれども、もう3年も経っているわけですから、傾向は変わらないわけですから、ここは大きな問題があるというふうに思いますが、勿論労使交渉、賃金交渉と言いますか、労使交渉に委ねるべきだと思いますが、しかしもっと思い切って上げる。

 経営者側にはですね、そういったことも求めなければならないと思いますし、日本的経営を大事にすると言うんであればですね、総理も度々言われているとは思いますが、もっと強く経営者側に賃金を上げろと言うべきだと私は思っております」

 質問を最低賃金の引き上げに移す。

 岡田克也の質問を全体で見ると、満足に反論できなかった上に自民党議員並みの質問と化していたのだから、結局は安倍政策を肯定することになる質問で終わったことになる。

 党代表がこの程度の追及しかできないのだから、安倍晋三の内閣支持率が上がり、民主党の政党支持率が10%以下で低迷しているのも無理はない。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする