最近の二つの記事の男性を上位に置き、女性を下位に置く権威主義性の男女関係力学について改めて考えてみる

2015-11-29 11:12:25 | 政治


 共同通信記事を配信した二つの「47NEWS」記事がある。一つは《妊娠で退職・雇い止め36% 非正規女性をNPOが調査》(2015/11/25 18:51 【共同通信】) 

 もう一つは《3割超が「女の幸せは結婚」 大手企業の管理職調査》(/2015/11/23 15:44 【共同通信】)記事。  

 前者はNPO法人「マタハラNet」が妊娠時に非正規雇用で働いていた20~50歳の女性158人に行った調査で、36・1%が職場で退職を促されるなどのマタニティーハラスメントを受け、実際に退職したり、雇い止めされたりしたという。

 「産休、育児休業を取得し、職場復帰して働き続けることができた」のは20・3%にとどまった。

 後者の記事は21世紀職業財団(本部・東京)が「女性の活躍推進に積極的に取り組んでいる先進的大手企業」10社を選び、その管理職を対象にした女性の活用に関するアンケート結果を伝える内容で、管理職の3割超が「女性の幸せは仕事より結婚や出産にある」と回答したという。

 この「女性」とは部下の正規社員の女性を指していることになるはずだ。

 記事は、〈女性を積極的に活用しようという意識の浸透が、大手企業の管理職の間でも十分に進んでいない実態が浮かび上がった。〉と解説しているが、「女性の幸せは仕事より結婚や出産にある」とする考えを意識に固定している3割の管理職は部下の女性のうち結婚した女性と接するとき、有形無形の形で「結婚したら退職すべきだ」といった態度を示すことになるはずだ。

 あるいは結婚しない内から、いつ結婚するか分からないから、結婚=退職の考えのもと部下の女性と接しているのかもしれない。

 例え態度で示さなくても、少なくともそういった目で見ていることになる。そういった目は相手に気づかせないということはないから、態度で示すこととさして変わらないことになる。

 この管理職3割と前者の記事の妊娠によって非正規の女性に退職を促した36・1%の割合は近い数字となっている。具体的な数字を知るために「21世紀職業財団」のページにアクセスしてみたら、調査結果が載っていた。『若手女性社員の育成とマネジメントに関する調査研究(2015年)』(2015年11月19日)  

 問い「女性の幸せは仕事より結婚や出産にあると思いますか」

 「そう思う」3.2%
 「まあそう思う」30.6%

 合計で33.8%となって、前者の記事の36・1%とかなり近い数字となる。

 中には公表されるアンケートということで、自身の女性に対する役割分担意識を隠してさも理解ある管理職の態度を示したといったこともあるかもしれない。

 このアンケートの結果を、〈3割以上の男性管理職が女性の幸せは仕事より結婚や出産にあると思っており、性別役割分担意識が根強いことが示された。〉と解説しているが、この点について前者の非正規雇用の女性に対する態度とは、例え調査結果の割合が近寄っていても、異なっている。

 前者の場合はお腹が大きくなった場合の、いわば妊娠した場合に限っての仕事上の動作の俊敏性の欠如=仕事上の非効率性からの、退職要請、あるいは退職強要といったマタニティーハラスメントであり、あるいは育児休暇を取った場合に空きが生じることに備えて前以て新たに人材を補給するための退職要請、あるいは退職強要といったマタニティーハラスメントであり、後者は妊娠とか出産とかに関わらず女性としての役割を仕事より結婚や出産に置いている男性側の態度ということであろう。

 但し両者に共通している点がある。9月3日(2015年)の当《ブログ》にも書いたことだが、男尊女卑が退化せずに跡を引いている男性を上位に置き、女性を下位に置いた権威主義性の男女関係力学に今以て囚われていて、その力学が可能とした前者の措置であり、後者の性別役割分担意識の現れということであろう。  

 前者の例・後者の例に関わらず、女性の可能性は男性の可能性同様に職業選択の自由や表現の自由等に関わる人権問題なのだから、そういった力学の存在なくして、妊娠したことを理由に退職させることも女性の役割を結婚と出産に限定して、女性に対してそのような扱いをすることもできないはずで、それらを行った場合、人権侵害に相当する。

 前者の例の場合、非正規は正規よりも立場が弱いゆえに、その弱さを利用して権威主義性の男女関係力学がより強く働いて(権威主義は弱い立場の人間により強く作動する)、マタニティーハラスメントの割合がより大きくなっているということもあり得る。

 当然、両調査から分かることは会社という集団で権力を得たうちの、中間を取って35%前後の男共が男性を上位に置き、女性を下位に置いた権威主義性の男女関係に今以て囚われていると見ることができる。

 「21世紀職業財団」のアンケートは次のような考察も伝えている。
 
 〈管理職アンケート調査の計量分析

 管理職アンケート調査の計量分析からは、以下のことが示された。

 1)管理職になってからの年数や育てた管理職・管理職候補の数が女性部下育成の自信につながり、伝統的な性別役割分担の考え方は女性部下育成の自信を減じる。

 2)女性部下育成の管理職研修の受講や育てた部下の数が女性部下の積極的育成につながり伝統的な性別役割分担の考え方は積極的な育成を妨げる。

 3)男性管理職は、女性部下の体力や結婚・育児を考慮し、仕事量や仕事の与え方に男女差をつけるといった配慮を行っている者が多く、性別役割分担の意識が女性部下へのこのような配慮を高める。〉

 〈【人事担当者インタビュー調査より】

 ④性別役割分担意識を持つ女性や昇進意欲が低い女性がいる。〉

 つまり女性自身が男性側の男性を上位に置き、女性を下位に置く権威主義性を受け入れていて、自身を男性の下に置いて、能力や可能性の点で男性よりも劣ると見做している女性の存在に触れている。

 数ある女性の中で少なくない女性がにこういった傾向にあることが、男性側の女性に対する権威主義性の男女関係力学をいつまでも払拭できない、あるいはいつまでも許す理由の一つとなっている。

 いずれにしても、ブログに女性の社会進出や女性の社会的活躍、あるいは女性の社会的可能性を阻害する要因として日本の社会に巣食う権威主義について幾度となく書いてきたが、特に男性の側が女性に対する権威主義性を払拭できなければ、いくら「女性の活躍」を言い立てようとも、「女性の社会参加」を高々と掲げようとも、男性同等の真の女性の活躍、真の女性の社会参加は実現できない。

 権威主義性に囚われていないことが、いわば出産・育児を女性の役割だと分担づけていないことが家庭内に於ける男性の側からの女性の出産・育児への無条件性の心起きない協力となって現れることになるから、当然、権威主義性は出生率にも影響する大きな要因と見ないわけにはいかない。

 以上、二つの記事を見て、改めて今以て日本の社会に巣食っている、男尊女卑の名残として存在する男性を上位に置き、女性を下位に置いた権威主義性の男女関係力学について考えてみた。


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