役目上の活躍からではなく、過去の下着泥棒報道で話題の人となっていた復興相の高木毅(つよし・59)が代表を務める自民党支部と資金管理団体が公職選挙法で原則禁止している選挙区内での香典と供花(くげ)の支出を行い、政治資金収支報告書に記載していた、同法違反の疑いが持ち上がっていて、さらに話題に輪をかけている。
香典に関しては支出の時期は2012年と2013年の2年間、福井県敦賀市等の高木毅の選挙区内の8人に合計16万円。
就任早々、こうも話題にされるのも珍しい。
11月6日の復興庁での記者会見で釈明しているというマスコミ報道を水先案内人として《復興庁の記者会見》のページにアクセスしてみた。
香典と週刊誌報道に言及している個所のみを拾い出してみる。
高木毅「続きまして、私の政治資金収支報告書の件について御説明を申し上げます。私が代表を務めます政党支部と資金管理団体が選挙区内の人に香典などを支出していたと記載されていました。
まず、香典の支出についてでございますけれども、これは私がそれぞれ亡くなられた方へ葬儀の日までに弔問に行き、私個人の私費で支出したもので法的に問題はないと考えております。それが収支報告書では政治団体の香典と誤って記載されておりますので、収支報告書を訂正することといたしております。
次に枕花についてでありますけれども、今回、マスコミからの御指摘を受けまして、私も後援会から供花を出していたことを初めて知りました。これは後援会幹部やその奥様がお亡くなりになったので、後援会が御葬儀に際し、出したとのことでございます。名義も後援会ということでありました。組織が構成員のために弔意を示すことは人情であり、関係者に違法性の認識はなかったと思いますが、今後このようなことが起きないように、後援会関係者には事務所を通じて厳重に注意をさせていただいたところでございます。
私からは以上でございます」
質疑応答に入って、冒頭から香典の支出について問い質されている。
記者「確認なんですけれども、政治資金の問題で、誤って記した香典の額、それから枕花の額、それぞれ教えていただけますか」
高木毅「額につきましては8件16万だったかと思います。枕花については2件2万4千円でございます」
記者「閣議の後に菅長官とお話をされていたと聞いたんですけれども、何を話されていたのか」
高木毅「事実関係を報告させていただきました。それに、迷惑をかけていますので、おわびを申し上げてきました」
記者「安倍総理とはお話はされたんですか」
高木毅「安倍総理にもおわびは申し上げました、御迷惑をかけていますということで」
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
記者「香典の件についてお聞きしたいんですけれども、公職選挙法に抵触するおそれなどもあって、総理や長官にもお詫びをされたということだったんですが、今後の進退について改めてどのようなお考えですか」
高木毅「違法性はないと考えておりますし、私とすればとにかく今は復興大臣としての職務を遂行することが責任だというふうに考えております」
記者「確認なんですけれども、今日閣議後に会われた方は総理と長官ということでよろしいですか」
高木毅「総理は本当に短時間でございまして、一言おわびだけ申し上げました」
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
記者「香典の話をさせてもらいますけれども、大臣、私費でお支払になったということですが、普通であれば私費で払ったら政治資金には載らないはずです。そうなると考えられるのは3つで、大臣が私費で払ったものを請求を求めたか、周りが配慮して政治資金に載せたか、それとも最初から私費と公費がごちゃごちゃになっていたかのいずれか、どうでしょうか」
高木毅「3番目といっていいと思います。私の私費だったんですけれども、出してしまって記載したということだと思います」
記者「もう一点お伺いしたいんですが、大臣は否定されておりますが、週刊誌報道があり、就任された後の官邸の会見でも原子力政策について地元と少し食い違うことがあって修正されましたけれども、更に様々なことが言われております。復興ということがどうも軽くなっているような気がしますが、それについて大臣は」
高木毅「お騒がせして被災地の方、そしてまた世間の皆様方に御迷惑をかけていると思います。ただ、先ほど来申し上げているとおり、これまで1か月間、私は大臣としての職責は全うしてきたというふうに思いますし、これからもこういった一連のことで復興大臣としての職務に支障を来すことのないように全力で取り組んでいくと、ぜひ被災地の方々には御理解いただきたいというふうに思います」
記者「今、質問がありましたが、週刊誌報道について改めてですが、これまでも会見で大臣が否定されているということは承知しているんですけれども、週刊誌に引き続き出ておりまして、その説明も虚偽なのではないか、窃盗と住居侵入についての説明も虚偽だというような指摘もあるんですけれども、それについてはどのようにお考えでしょうか」
高木毅「同様でございます。そういったことはございません」
ここで記者会見は打ち切りとなっている。
以上、高木毅の発言から香典に関して分かったことは、全ての弔問に高木毅本人が出掛けたこと。一度も秘書を代理とさせていなかった。そして全てが私費からの支出であった。
ではなぜ私費の支出が政治資金収支報告書に記載されてしまったかについては、記者が「大臣が私費で払ったものを請求を求めたか、周りが配慮して政治資金に載せたか、それとも最初から私費と公費がごちゃごちゃになっていたかのいずれか」と三択を求めると、3番目の「私費と公費がごちゃごちゃになっていた」ためだと答えている。
以上のことからはっきりすることは、本人は選挙区内での香典の支出は私費に限定されていて、政党支部や資金管理団体から支出し、政治資金収支報告書に記載することは公職選挙法に触れるという知識はあった。だが、事務所の方で私費と公費をごちゃごちゃにしていた。
最初の疑問は事務所は、あるいは秘書は高木毅本人が弔問に出掛けて私費で香典を支出したときの金額まで知り得たのだろう。1日のスケジュールの中に前以て弔問を入れておいたり、高木毅のお抱え運転手が運転する車で秘書同道で(秘書自身が運転手を兼ねているケースもある)弔問に出掛けたなら、香典を出したことは知り得るが、金額まで知り得ることはない。
金額を知り得るには二つのケースがある。
一つは香典袋に書く弔問者の名前を秘書に書かせ、中袋に金額を記入させていたとしたら、支出した金額を知ることができる。
だが、政治家は自分でサインしたがるものである。芸能人と同様、芸能人のように崩しはしないが、自身のサインを通して自分を宣伝するためである。そのために多くの政治家は習字まで習う。
高木本人は字が下手クソで、秘書に書かせたと仮定しよう。それで金額迄知り得ることができた。
金額を知り得るもう一つのケースは事務所の机の引き出しに用意してある香典袋を秘書か事務員に出させて、それを受け取ってその場でカネを入れて自分でサインしていた場合、近くにいた者は金額を知り得ることになる。
だが、どちらのケースであっても、カネそのものは高木毅本人の財布から出ているはずである。事務所の金庫から自分で出したか、秘書か誰かに出させたわけではあるまい。その時点で見ている者が誰であっても、公費か私費かの区別はつくはずである。
例外的に事務所の金庫から出していたとしたら、高木毅は事務所のカネを香典の支出に振り向けた場合、記者会見の発言から公職選挙法に触れるという知識はあったことになるから、「立て替えて貰う」といった意味の言葉か、「後で返す」、あるいは「後で返しておく」といった意味の言葉を口にしていなければならないし、香典に支出した金額のカネを金庫に自身で戻した場合、秘書か誰かにそのことを告げなければならないし、秘書か事務所の職員に手渡した場合、そのカネが何のカネか、「香典で立て替えてもらったカネだから」といった説明をしなければならない。
高木本人が香典の支出に関してこういった一連の経緯を踏んでいたなら、秘書、あるいは事務所の人間が香典の支出に関わる公職選挙法の禁止事項に詳しくなくても、自ずと私費と公費を区別しなければならないということを学習するはずである。
だが、政治資金収支報告書に2012年と2013年の2年間で選挙区内の8人に合計16万円、つまり2年間で8件も事務所のカネから支出したとする記載を行った。
秘書、あるいは事務所の人間が一連の経緯を踏んでいさえすれば学習するはずの知識を学習していなかったということは、一連の経緯を踏んでいなかった疑いが出てくる。
要するに自分の財布から出さず、事務所の金庫から自分で出すか、周囲の誰かに出させるかしたが、その際、「立て替えて貰う」とも、「後で返す」、あるいは「後で返しておく」とも言わなかった。
いわば香典のカネは公費で出すものとして出した。秘書、あるいは事務所の人間はこういった光景を見ていたために公費で出すものと認識して、政治資金収支報告書にその都度支出項目と金額を記載していった。
こうとでも考えなければ、2年間に8件も記載し続けた理由を説明することはできない。
政治資金収支報告書に記載しなかった香典の支出、正真正銘の高木本人の財布から出して済ませた香典の支出があるかどうか説明させるべきだろう。もしあったなら、なぜその支出を政治資金収支報告書に記載する過ちが起きなかったか、その理由を問い質すべきだろう。
2年間で8件が全てだとしたら、厳密に私費という支出の体裁を取ったのかどうかを追及する以外にない。厳密に私費という形を取っていたなら、なぜ政治資金収支報告書に公費とする間違いが生じたのかと。
高木は「一連のことで復興大臣としての職務に支障を来すことのないように全力で取り組んでいく」と言っているが、疑惑を晴らしてから口にすべきことである。