安倍晋三の11月22日自己愛のいいこと尽くめバラ色のアベ・ワールドで彩ったマレーシア首都内外記者会見

2015-11-23 11:32:34 | Weblog


 マレーシア首都クアラルンプールで開催の東アジア首脳会議(EAS)に出席していた安倍晋三が11月22日(2015年)、内外記者会見を行った。  

 主として第2の矢でもある「一億総活躍社会」も含めてアベノミクスを取り上げてみるが、相変わらず不都合な統計・情報を隠していいこと尽くめのバラ色のアベ・ワールドを大風呂敷でつくった旗を高々と掲げて吹聴しまくっていた。

 安倍晋三「私たちの『一億総活躍』という新しい考え方には、多くの国々から、注目が集まりました。持続的な成長への道筋を示す『究極の成長戦略』であることを、改めて確認できたと思います」――

 最近頻繁にアベノミクスの失敗を取り上げる記事が出回り始めている上に具体策を練り上げたわけでもなく、単にプランを花火のように打ち上げただけの、いわば現時点では海のものとも山のものとも評価しようがない「一億総活躍」を「『究極の成長戦略』であることを、改めて確認できたと思います」と断言することができる。

 この自己愛性人格、あるいは自己偉大誤認障害(こういった言葉があるかどうかは知らない)は素晴らしい。

 いいこと尽くめの一つとして今回の会議で大きな関心が集まったと本人が言っている「日本の高い省エネ効率」、「防災の知恵」の他に「国民皆保険」を入れているが、確かに「皆保険」という形式は素晴らしい。誇っていい形式である。

 性別に関係なく、全ての年齢層で所得が低くなると外来での受診割合が低下し、逆に働き盛りであると同時に肉体的に衰えが出てくる40〜59歳の中年男性は低所得程入院する割合が上昇するという、いわばカネがなくて病院に行って診察を受けることを控えることが反動をもたらす、結果的に却って健康を損ねる傾向にあるという千葉大の研究チームの2012年4月から1年間の調査は、「皆保険」が必ずしも国民全員に健康への保障を約束するものではないことを如実に物語っている。   

 「国民皆保険」であっても、生活の格差がその素晴らしい形式の陰で中身の実態を損ね、形式と不一致の状況をつくり出している。安倍政権になって格差が拡大して、アベノミクスは格差ミクスと言われている。

 いわばアベノミクスが形式の素晴らしさをそのままに残したまま、中身を蝕む元凶ともなっていて、国民生活のその他の分野に於いても決していいこと尽くめのバラ色ではないということである。

 だが、安倍晋三はこういった自身に不都合な事実、あるいは不都合な情報や統計を隠して、形式だけを誇っていいこと尽くめのバラ色のアベ・ワールドを国民の前に描いてみせる。

 アベノミクスの経済政策には関係しないが、安倍晋三はロシアとの関係もバラ色で包もうとした。

 安倍晋三「12回目の会談となった、ロシアのプーチン大統領とは、平和条約の締結を目指し、あらゆる機会を見つけて対話を継続していくことで一致いたしました」

 一度ブログに書いたが、択捉島で2015年8月12~24日までロシア政府主催の「全ロシア青年教育フォーラム」なる若者たちの愛国集会を開催している。若者たちが択捉の地に立ち、愛国集会を通してロシア国家に向けて愛国と忠誠の精神を示したということは択捉とロシアを一続きとしていることを意味する。

 プーチンが彼ら若者たちの愛国と忠誠の精神を無にしたなら、たちまち支持を失うことになるだろう。12回の回を重ねた首脳会談を通して築き上げたプーチンと安倍晋三の信頼関係よりも上位に置かなければならない若者たちの愛国と忠誠の精神であるはずだ。

 こういった情報を読み解く能力がないのか、あるいは読み解いていながら、都合の悪い情報として取り上げないでいるのか、いずれにしても首脳会談の回数を言っても意味がないにも関わらず、回数を言うことで、それを信頼関係の担保とし、その信頼関係を平和条約の締結や北方四島返還の担保にしようとしている。

 記者との質疑に入って、次のような遣り取りがあった。

 ディビット・トゥイード。ブルームバーグ記者「本日はアベノミクスについてのパンフレットを持ってきた。日本経済の指標をみるとこのメッセージと矛盾していると思う。つまり日本経済が縮小しているということである。2四半期連続でマイナス成長となっている。8月9月と物価が下落している。経済の目標をGDP600兆円とされているわけだが、いつその目標をどうやって達成できると考えているのか」

 安倍晋三「先ず我々が政権を取ってからこの3年間の大きな流れを見ていただきたいと思います。アベノミクス『三本の矢』の政策によって、15年続いたデフレについては、デフレ脱却まであと一息というところまで来ました。名目GDPは、28兆円増えました。そして500兆円を超えた。雇用は110万人以上増えました。有効求人倍率は23年ぶりの高い水準になっています。企業収益は過去最高です。TPPの大筋合意を始め、コーポレートガバナンス、女性活躍、農協・医療の改革、電力改革など、成長戦略も着実に実施しています。

 確かに今御指摘があったように、7-9月期の実質GDPは全体としてマイナス成長でありますが、しかし指標をよく見ていきますと、例えば自動車の在庫の減少が主な要因なのです。在庫が減少するとGDPの指標においては実はマイナスになるのです。ですから、我々は、これは今後に向けて良い傾向が出てきていると考えています。実質賃金の改善を受け、個人消費もプラスです。緩やかな回復基調は続いていましたが、景気をしっかりと下支えをしていかなければなりません。

 このため、企業収益を賃金や設備投資に結びつけていく。また、『GDP600兆円』を実現するための緊急対策などを内容とする補正予算を編成します。帰国後、指示したいと考えます。さらに、法人実効税率の引下げなど、成長戦略も引き続き強力に進めていきます。あわせて、少子高齢化等の構造的課題にも取り組み、「一億総活躍」を実現することで、強い経済を創り出してまいります」

 やはり安倍晋三、強心臓にも都合の悪い情報を隠して、アベノミクスを正当化する強弁を働かせている。

 2015年7-9月期の実質GDPマイナス0.2%となったことを「自動車の在庫の減少が主な要因なのです。在庫が減少するとGDPの指標においては実はマイナスになるのです」と言っているが、主な自動車メーカー8社の9月国内生産台数は2014年同月比で78万2004台減、-2.2%となっている。

 また、日本自動車販売協会連合会(自販連)と全国軽自動車協会連合会が2015年10月1日発表の2015年度上期(4~9月)の国内新車販売台数は、前年同期比5.8%減の232万9270台で、3年連続の減少となっている。

 いわば自動車が売れに売れて生産が追いつかず、その結果在庫が減ったということではなく、販売台数の減少を受けた自動車の国内生産の減産方向への調整との関連で生産して倉庫に保管しておいた自動車の在庫が増えることになったことからの在庫調整という意味合いの在庫減少ということで、安倍晋三が言っているような意味での良好な状況下の在庫の減少では決してない。
 
 実態的な経済の状況は決して良くない。「個人消費もプラスです」と言っているが、確かに7-9月GDPの約6割を占めていると言われている個人消費(民間最終消費支出)は0.5%のプラスとなっている。

 その内訳は時計や宝飾品の販売が好調に推移している百貨店の売上、8月までの猛暑によるエアコン販売などだという。百貨店の高額商品売上好調は訪日外国人観光客、特に中国人観光客の消費が寄与している部分がかなり占めているはずだ。

 こういった光景に対して一方で軽自動車の販売が2年連続で減少していることや非正規雇用が増加していること、それぞれの光景を総合すると個人消費プラス0.5%は大部分が高額所得者が寄与している0.5%であって、中低所得層は取り残された個人消費と見ないわけにはいかない。

 中低所得者をも含めて積極的に消費活動に走ってこそ、個人消費を活気づけることができ、それがGDPの増額に寄与する。

 だが、アベノミクスが格差ミクスであることによって中低所得層の消費を抑制する働きをしているにも関わらず、「一億総活躍社会」で掲げたGDP600兆円を2020年までに達成すると約束している。

 あくまでも都合の悪い情報を隠した約束に過ぎない。格差拡大を止めることができなければ、決して実現はできない、自己愛で満たしたいいこと尽くめのバラ色で彩ったアベ・ワールドで終わる運命が待ち構えていることになるだろう。

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