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安倍晋三の国連自由権規約委員会への日本調査延期要請は調査報告を国民の目から隠す情報隠蔽相当の選挙対策

2015-11-21 09:33:04 | 政治

 


       「生活の党と山本太郎となかまたち」

     《 11月19日 「市民提案の野党共闘プラットフォームについての野党5党検討」》    

      野党5党は11月19日、SEALDsをはじめ、安保法制反対の市民団体と来年の参院選
      挙に向けた協力のあり方について第2回目の意見交換会を行いました。市民側提案の
      野党共闘プラットフォームについて政党側でも真摯に検討し、今後とも双方は連携
      協力していくことを確認しました。

 国連人権理事会で「表現の自由」を担当しているデビッド・ケイ特別報告者(アメリカ・カリフォルニア大教授)が12月1日から8日まで予定していた訪日調査を日本政府の突然の要請で延期したことを11月17日の自身のブログで明らかにしたと各マスコミが伝えている。

 記事は「日本政府の要請」と書いているが、その主は勿論、安倍晋三であり、安倍晋三の最終指示であることは間違いない。

 このことはおいおい理解できる。

 このイキサツについて弁護士であり、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ事務局長である伊藤和子女史のサイト記事――《国連「表現の自由」に関する特別報告者が突然来日を延期。日本政府が土壇場でキャンセル》Yahoo!ニュース/2015年11月20日 1時49分)が詳しく書いている。  

 一人称で書いてあるデビッド・ケイ特別報告者のブログと伊藤和子女史の解説を要約してみると、次のようになる。

 先ず「2015年11月17日」(November 17, 2015)の日付のブログから。

 「10月に国連総会第三委員会でプレゼンテーションをした際、私は日本政府が、12月1日から8日にかけての私の公式訪問に対する招待を日本政府から受け取ったことをアナウンスすることが出来た」

 要するに日本政府はデビッド・ケイ特別報告者の国連での10月のプレゼンテーション以前、10月時点かそれ以前に訪問を承諾していたことになる。

 「私は日本政府が、12月1日から8日にかけての私の公式訪問に対する招待を日本政府から受け取った。この訪問は、国連自由権規約委員会が昨年懸念を表明した2013年制定の『特定秘密保護法』の実施、インターネット上の権利、報道の自由、知る権利などの日本の表現の自由に関する一定の側面を評価する重要な機会となりえただろう」――

 訪問のための準備を進めた。

 「先週金曜日、残念ながら、ジュネーブの日本政府代表部は、関係する政府関係者へのミーティングがアレンジできないため、訪問は実施できないと伝えてきた。日本政府は、2016年秋まで訪問を延期すると示唆した。私は日本政府当局に対し、彼らの決定を再考するように要請した。しかし、ジュネーブの日本政府代表部は昨日、公式訪問は実施できず、今やキャンセルされたと確定的に伝えてきた」――

 伊藤和子女史は日本政府のキャンセルの理由を共同通信等の配信記事を通して、外務省が予算編成の多忙のために受入れ態勢が万全でないとしていると伝えながら、10月時点かそれ以前に訪問に一旦OKを出したことは予算編成のスケジュールを承知していた上のことだろうからといった趣旨で疑問を呈し、次のように述べている。

 「外務省のウェブサイトを見る限り、ひっきりなしに要人が訪れ、もっと予算に関わりそうな話を展開している模様。なぜこの件だけ、事前にOKしたのに、予算を理由に断るのか、理解が出来ません。

 そして、予算が理由であれば、なぜ来年秋までひっぱる理由もないはずで、もっと早期にリスケジュールできるはずです。

 是非、国会で背景事情を質問するなどして聞いていただきたいところですが、臨時国会も開催されていないため、何もできない状況で、様々な意味で日本の現在の状況を象徴する事態となってしまっています」――

 一般的な予算編成は各省は毎年8月31日までに財務大臣に概算要求を提出し、9月から12月中旬にかけて予算編成作業、復活折衝、財務省案原案策定と進め、12月末以内に政府案閣議決定、翌年1月~3月の間に政府予算案国会提出という流れを取る。

 例外として越年作業といったこともある。

 このようなスケジュールで進むことは誰も分かっていることだから、伊藤和子女史が言っているように一旦OKを出しておきながら予算編成の多忙をキャンセルの理由とする正当性は見つけ難い。

 外相の岸田文雄が11月20日の閣議後記者団に述べた延期要請の理由を「NHK NEWS WEB」記事が伝えている。

 岸田文雄「国連から任命された担当者が来月1日から8日にかけて日本訪問を計画し、調整が行われていたのは事実だ。しかし、この時期は予算編成作業などとの関係で、政府として十分に受け入れ体制を整えることが困難な見通しなので、日程の再調整を申し入れ、先方には理解を得られたということだ。現時点で新たな日程は決まっていないが、引き続き調整したい」――

 日本訪問の計画に対して「調整が行われていたのは事実だ」という言い方で、相手の訪問受入れ要請に対して当初から調整が行われていたかのような体裁の発言となっていて、10月時点かそれ以前に一度は12月1日から8日の訪問を承諾したことは隠している。

 明らかにしたら、予算編成作業の多忙は前以て分かっていることなのになぜ承諾したのかと追及された場合の不都合が生じるからだろう。

 事実、予算編成の都合で延期を申し入れたなら、伊藤和子女史が「なぜ来年秋までひっぱる理由もないはずで、もっと早期にリスケジュールできるはずです」と疑問を呈しているように政府が予算案を国会に提出すれば、予算に関わる大臣たちの答弁にそれ程多くの役人たちの手を煩わす必要はないはずだから、年明け早々の「リスケジュール」(日程調整)でいいはずだが、「日本政府は、2016年秋まで訪問を延期すると示唆した」

 ここに日本政府の延期の最大の理由があるはずだ。伊藤和子女史はこの記事で触れていはいないが、「2016年秋」は参院選の終了後である。もし安倍晋三がダブル選を狙っているとしたら、調査にしても報告にしても衆参選挙後となる。

 「表現の自由」担当の国連報告が日本の表現の自由に関わる状況への安倍政権の取組みをどう評価しようと、取り込み不足やその怠慢、あるいは不作為をどう指摘しようと、その報告に対して野党が国会でどう追及しようと、さらにマスコミがどう騒ごうと、選挙に影響しない後の祭りとすることができる。

 以上の理由からして、当然、日本政府の要請とは安倍晋三が決めた要請となる。外務省の背後に安倍晋三が控えていて、外務省は安倍晋三の意向に従った。

 これだけの理由で安倍晋三だと決めつけるのは早計に過ぎると見る向きもあるかもしれないが、もう一つ理由がある。

 伊藤和子女史は自身の記事で、「2013年に特定秘密保護法が多くの反対を押し切って国会で通過した前後の時期に、前任者であるフランク・ラ・ルー氏が、国民の知る権利や報道の自由を脅かす危険性がある、ということで強い懸念を表明し、日本政府に対して再考を求めた」云々と解説していることから、国連がこのときの調査についてのどのような報告書を出しているのかネット上を調べてみたところ、『自由権規約委員会 日本の第6回定期報告に関する最終見解』(2014年8月20日)と題した報告書を幸いにも見つけることができた。 

 報告書は冒頭、〈1.自由権規約委員会は,日本の第6回定期報告(CCPR/C/JPN/6)を,2014年7月15日及び16日に開催された第3080回及び第3081回会合(CCPR/C/SR.3080, CCPR/C/SR.3081)において審査し,2014年7月23日に開催された第3091回及び第3092回会合(CCPR/C/SR.3091,CCPR/C/SR.3092)において,以下の最終見解を採択した。〉と記述している。

 「Wikipedia」によると、自由権規約人権委員会の「議事は、委員会で非公開とする決定を行わない限り、公開で行われる」と書いているから、一般的には公開で行われるはずで、もし来年も7月中旬に会合が開かれた場合、時期的には参院選と重なることになる。ダブル選挙なら、衆参同日選挙と重なる。

 因みに英語の日本語訳の関係からか、「自由権規約人権委員会」という表記と「自由権規約委員会」という表記と二通りがある。

 問題は報告書が「表現の自由に対する懸念」として「特定秘密保護法」や「ヘイトスピーチ」などを取り上げているわけではないことである。

 取り敢えず「特定秘密保護法」と「ヘイトスピーチ」についての報告を見てみる。

 〈特定秘密保護法

 23.委員会は,最近成立した特定秘密保護法が,秘密として指定可能な事項についての曖昧かつ広範な定義及び秘密指定の一般的な前提条件を含み,また,ジャーナリスト及び人権擁護者の活動を萎縮させ得る重い罰則を規定していることを懸念する。〉――

 〈ヘイトスピーチ及び人種差別
 
 12.委員会は,韓国・朝鮮人,中国人,民といったマイノリティ集団のメンバーに対する憎悪や差別を煽り立てている人種差別的言動の広がり,そして,こうした行為に刑法及び民法上の十分な保護措置がとられていないことについて,懸念を表明する。委員会は,当局の許可を受けている過激派デモの数の多さや,外国人生徒を含むマイノリティに対し行われる嫌がらせや暴力,そして「Japanese only」などの張り紙が民間施設に公然と掲示されていることについても懸念を表明する。〉――

 「問題は」と書いたのは、〈C.主な懸念事項及び勧告〉と題して、表現の自由に関する懸念と同時に女性の問題に関わる同じ人権上の懸念も取り上げていることである。

 と言うことは、「表現の自由」の問題を調査する担当者のみならず、「女性」の問題を調査する担当者も存在していて、それらの調査を待って、最終報告書が作成される形式を取ることになる。

 「表現の自由」を担当しているデビッド・ケイ特別報告者がたまたま自身のブログに事情を書いたから、自らの発言を積極的に発信しているらしい伊藤和子女史やマスコミが取り上げることになったが、女性問題担当者の招待を取り消し、延期させている可能性は、それが表に現れていないだけのことで、十分に疑うことができる。
 
 女性問題についての懸念を見てみる。

 〈男女平等

 8.委員会は,「婚姻制度及び家族制度の基本的概念に影響を与える」おそれがあるとの根拠で,離婚後6ヶ月間の女性の再婚を禁止し,男性と女性の婚姻年齢の相違を設定する,民法の差別規定を改正することを締約国が拒否し続けていることを懸念する(第2条,第3条,第23条及び第26条)。

 締約国は,家庭や社会における女性と男性の役割に関する固定観念が,法の下の平等に対する女性の権利の侵害を正当化するために用いられないことを確保すべきである。締約国は,したがって,しかるべく民法を改正するための緊急行動をとるべきである。〉――

 「締約国」とは勿論、「国際人権規約」に1979年に批准し、加盟している日本を指す。

 〈9.委員会は,第3次男女共同参画基本計画の決定を歓迎する一方,政治的役割を担う女性の数が低水準に留まっていることに鑑み,本計画の影響力が限られていることを懸念する。委員会は,の女性を含む,マイノリティ女性の政策決定を担う立場への参加に関する情報が乏しいことを遺憾に思う。委員会は,女性がパートタイム労働力の70パーセントを占め,同等の仕事に対して男性が受け取る給与の平均58パーセントを得るという報告について懸念する。

 委員会はまた,セクシュアル・ハラスメント,あるいは妊娠及び出産を理由とした女性の解雇に対する処罰措置が不足していることを懸念する。)――

 こういったこと以外にレズビアン,ゲイ,バイセクシャル,トランスジェンダーに対する「性的指向及び性別認識に基づく差別」の存在、その他に対する懸念の伝達と懸念の改善の要請を日本政府に行っているが、2014年8月20日に報告されている内容が現時点に於いても殆ど改善しているようには見えないから、2016年7月予定の参院選前に、あるいは衆参同日選前にほぼ同じ内容で報告されたなら、政府は、と言うよりも、安倍政権は何ら努力していないことになって、指導者としての安倍晋三の女性問題に関わる姿勢を問われることになり、怠慢の誹りを免れ得ない。

 特に安倍晋三は「女性の活躍」や「女性の人権」を安倍政権の重点政策、アベノミクスの「成長戦略」の柱とし、これらのことに向けた政策が着々と成功しているかのように吹聴している。その吹聴を裏切る問題点となって口程にもない姿を曝すことになり、安倍晋三の資質や能力、あるいは人間性にまで跳ね返ってくる。

 国連の報告書を通した自身の姿のこのような暴露がもし参院選前、あるいは衆参同日選挙前に行われたなら、暴露が表すことになる安倍晋三の正体は有権者の記憶に強く焼き付くことになる。

 伊藤和子女史も記事で指摘しているメディアに対する公権力からの選挙介入や集団的自衛権の憲法解釈による行使容認論を選挙の争点から目立たなくさせる手管に象徴的に現れているが、安倍晋三が数を獲得するためには(=選挙に勝つためには)手段を選ばない異常な執着性からしたら、投票行動に影響を与えないではおかないこのような予想される事態を回避するための参院選後、あるいは衆参同日選後の2016年秋までの訪問延期と、延期に応じた報告の先送りと見るのが妥当であり、そうすることによって国民の目に安倍晋三に都合の悪い情報が伝わらないようにする、いわば情報隠蔽を謀ろうとしたということであるはずだ。

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