高円宮妃久子さまIOC総会出席要請は皇室の政治的利用そのものである

2013-09-04 04:41:10 | Weblog



 2020年夏季オリンピック開催都市決定が行われる9月7日のアルゼンチン・ブエノスアイレスで開催IOC(国際オリンピック委員会)総会に政府が皇族の高円宮妃久子さまを出席させることに関して皇室の政治的利用かどうかが問題となっている。

 勿論出席を要請した側の政府は皇室の政治的利用に当たらないと否定している。

 政治的利用か否かが問題視されることになったのは9月2日の風岡宮内庁長官の記者会見発言からだとマスコミは伝えている。

 《IOC総会出席「皇室の政治利用にあたらず」》NHK NEWS WEB/2013年9月3日 15時18分)

 風岡宮内庁長官総理大臣官邸などから出席の要請があった。

 招致活動とみられるのではないかとの懸念も持ったが、やむをえないと判断したもので苦渋の決断だった。天皇、皇后両陛下も案じられているのではないかと拝察した」(下線個所は解説文を会話体に直した。)――

 9月3日午前中記者会見――

 菅官房長官「久子さまにIOC総会でご挨拶をいただくのは、震災復興支援に対する謝意をできるだけ多くのIOC委員に表するのにふさわしい場だからで、大変ありがたい。皇室の政治利用にあたるとか、官邸からの圧力であるとか、そうした批判はあたらない。

 現に、スペインの皇太子は現地に入っている。また、ロンドンオリンピックでは、エリザベス女王が大きな役割を果たしている。宮内庁長官が、両陛下の思いを推測して言及したことには、非常に違和感を感じている」――

 政府の高円宮妃久子さまIOC総会出席要請は「震災復興支援に対する謝意」表明のためだと言っている。

 だが、「現に、スペインの皇太子は現地に入っている」ことや「ロンドンオリンピックでは、エリザベス女王が大きな役割を果たしている」ことを政治的利用ではないことの理由の一つとしていることは合理性に欠ける。

 あくまでも日本の皇室の問題だからである。日本の皇室の政治的利用か否かを論ずるに外国の王室の例を持ち出して政治的利用ではないことの正当化を行い得るだろうか。

 単に外国の王室の誰それが出席しているから、日本の皇室の誰それが出席しても政治的利用には当たらないと、出席という観点のみから取り上げて言っているに過ぎない。

 「宮内庁長官が、両陛下の思いを推測して言及した」として、「非常に違和感を感じている」と宮内庁長官を批判しているが、天皇が実際に「懸念」を口にしたが、それを言葉通りに伝えることができないことからの「拝察」という間接的表現を用いた政治的利用への懸念の表明ということもあり得る。

 下村博文「IOC委員の1割以上はヨーロッパの王室関係の方々であり、久子さまは、個人的に親しくされているという経緯もある。招致のプレゼンテーションでなく、ご挨拶なので、政治利用には全くあたらない」――

 例え「招致のプレゼンテーションでなく、ご挨拶」だとしても、「「IOC委員の1割以上はヨーロッパの王室関係の方々」と見ている以上、王族・皇族の関係から日本への親近感を持たせようとする意図があり、そのことから判断すると、首相官邸は日本への親近感を持たせる意図のもと、皇室に対して高円宮妃久子さまの出席を要請したことになり、皇室の政治的利用そのものに当たる。

 次の記事の下村発言も親近感獲得目当ての皇室の政治的利用を意図せずに暴露している。

 《下村文科相:久子さまIOC総会出席は「震災支援のお礼」》毎日jp/2013年09月03日 12時54分)

 9月3日閣議後記者会見。

 下村博文「招致活動ではなく、東日本大震災への支援へのお礼であり、皇室の政治的利用には全く当たらない。

 震災支援に感謝の意を示すにはIOC委員が集まる総会がふさわしい。IOC評価委員会を招いた今春の夕食会で、久子さまのスピーチにかなり多くのIOCメンバーが感銘を受けた、と聞いている」(下線部分は解説体を会話体に直した。)――

 要するに感銘の再演出による親近感獲得を狙った出席要請――皇室の政治的利用だというわけである。

 但し表向きは、菅官房長官が「震災復興支援に対する謝意をできるだけ多くのIOC委員に表するのにふさわしい場」と言っていることと同様に下村博文も、「招致活動ではなく、東日本大震災への支援へのお礼」のための出席要請だとしている。

 IOCは震災後の早々の2011年3月26日にIOC副会長が日本を訪れて、〈世界のスポーツ界から義援金を集めるとともに、被災地の小学校に五輪選手らを派遣するJOCの計画に協力する意向を表明〉(47NEWS)している。

 その謝意というわけなのだろうが、それは果たして皇族の役目だろうか。勿論、外国の首脳が天皇を訪れて、その国が被災地支援に貢献していた場合、天皇自身がその謝意を表明することはあり得るだろうが、わざわざ出席要請を受けてまで謝意を表明する役目を負っているわけではあるまい。

 その役目は政府自身であるはずである。当然、IOC総会に出席して、東京招致のプレゼンをする安倍晋三の役目となる。

 8月23日の『2020年東京オリンピック・パラリンピック招致出陣式』では次のように発言している。

 安倍晋三「わたしたちみんなが、それぞれの使命と責任を果たすことによって、9月7日、ブエノスアイレスの会場に『2020年 東京』、このアナウンスを響かせようではありませんか! 私もブエノスアイレスに行きます! 2020年、東京! みなさん、共に頑張りましょう!」(首相官邸HP

 まさか「震災復興支援に対する謝意」の役目は高円宮妃久子さまに任せて、安倍晋三自身は何も述べないというわけではあるまい。外国による日本の被災地に対する支援は被災地に対する支援であると同時に国に対する支援でもあるからだ。皇室に対する支援ではない。

 勿論経済大国日本は外国の支援なくしても復興を乗り切ることはできるだろうが、経済的にはともかく、多くの外国が手を差し伸べることは精神的には計り知れなく大きなものがある。

 実際には首相官邸から東京招致のプレゼンを依頼された。皇室側から、あるいは宮内庁側から、皇室の政治利用に当たるのではないかと難色を示された。ところが、 「震災復興支援に対する謝意」を口実になおも出席を求められた。その口実に対しては皇室の役目ではないと露骨に断るわけにもいかず、「やむをえないと判断し」、「苦渋の決断」をした、といったところが実態ではないのか。

 このことがゲスの勘繰りであり、最初から「震災復興支援に対する謝意」を目的とした出席要請であったとしても、謝意は皇室の役目ではないのだから、近親感獲得を意図した皇室の政治的利用であることに変わりはあるまい。

 余談になるが、竹田JOC会長が福島第1原発から汚染水が漏出している問題で、「東京は安全だ」とする手紙を先月末、すべてのIOC委員に送っことを次の記事が伝えているが、このことを取り上げてみる。

 《「東京は安全」手紙でIOCにアピール》NHK NEWS WEB/2013年9月3日 6時23分)

 手紙の内容「東京の空気や水、放射線量の数値はすべて通常どおりで、東京は安全だ。原発のタンクから汚染水が漏れ出た問題についても政府が責任を持って解決すると表明している」――

 いくらオリンピックが都市単位の開催であったとしても、東京だけが安心・安全でありさえすればいいというのだろうか。勿論、2020年には原発に関わる重大な問題はほぼ片付いているかもしれないが、福島を含めてすべての地域が安心・安全であってこそ、オリンピックを開催する資格を得るはずだ。

 「2020年には放射能問題について日本のどこの地域に於いても安心・安全を確保できる」と書くべきところ、東京は安心・安全だとするエゴイズムに侵されている。

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