尖閣警備巡視船10隻新造と保安官増員の来年度予算概算要求は警告の繰返しだけなら、ムダではないか

2013-09-03 04:49:49 | 政治

 
 
 尖閣諸島の昨年9月の国有化以降、中国公船による領海侵入が頻発、海上保安庁は沖縄県・尖閣諸島周辺の領海警備体制強化を目的に来年度予算概算要求に大型と中型の巡視船計10隻の新造費約110億円を盛り込む方針を決めたと「YOMIURI ONLINE」が伝えていた。

 巡視船を新造すれば、保安官の増員も必要になる。国交省は来年度予算概算要求で今年度より5割以上多い600~700人にする方向だと「日経電子版」が伝えていた。

 しかし中国公船が領海侵犯しても、威嚇射撃したり拿捕したりするわけではない。安倍晋三が「前の政権では、過度に軋轢を恐れるあまり、領土・領海・領空を犯す行為に対して、当然行うべき警戒・警備の手法に極度の縛りがかけられていた。相手方に誤ったメッセージを送ることになり、不測の事態を招く結果になると判断したので、安倍内閣が発足した直後から、前の政権の方針を根本から見直し、冷静かつ毅然とした対応を行う方針を示した」(NHK NEWS WEB)と国会で答弁した強い意思表明に反して、前民主党政権と同様に中国艦船が領海の外側の接続水域内に航行してきた場合は無線で領海内に立ち入らないように警告を発し、その警告を無視して領海内に侵入してきた場合は同じく無線か、あるいは海上保安官がスピーカーを使って直接、「直ちに領海から出るように」と警告を発することを日本の領海を守る仕事とさせているに過ぎない。

 警告のみで、物理的な具体的阻止行動を欠いているから、中国側は「釣魚島(尖閣諸島の中国名)及び付属の島々は昔から中国固有の領土であり、通常の海洋任務についている」、あるいは「中国海警編隊は中国管轄海域にて定例のパトロールを行っている」と返答するか、あるいは何ら反応せずに日本側の警告を一切無視して航行を続ける自国領海としての行動を許し、日本側の意思に関係しない、中国側の意思で領海から出て行くのを待つ、その繰返しとなっている。

 首相官邸にしても、中国公船が日本領海内に侵入するたびに「情報連絡室」を「官邸対策室」に切り替えて情報収集と警戒に当たる繰返しを演じている。

 と言うことは、中国公船が領海外に立ち去ると、「官邸対策室」を閉鎖、日常普段の「情報連絡室」に戻すということなのだろう。

 現場と政府のこのようにも既にパターン化した繰返しに大型と中型の巡視船の新造がなぜ必要なのだろうか。今年度よりも5割以上多い600~700人の人員補強を必要とするのだろうか。

 確かに四六時中尖閣周辺に張りついていなければならないから、人員配置のシフトは過酷となり、勤務も過酷となっているのは分かるが、逆に勤務状況を緩和する手がないわけではない。

 接続水域内航行の中国公船に対して、「日本の領海内に立ち入らないように」と無線で警告は発し、領海内に侵入した場合は「日本の領海だから、直ちに領海外に立ち去るように」と無線もしくはスピーカーで警告を発するだけの繰返しなら、その文言を自動無線で送信できるようにし、スピーカーを使った警告の場合は録音した音声を用いて、両者とも相手の反応に関係なしに領海外に立ち去るまで自動送信と自動発信を一定の間を置いて繰返すことで用を足すはずだ。

 後は中国公船から一定の距離を置いて追尾する巡視船の操舵のみで事足りる。

 大体が、あくまでも概算要求を認められた場合のことだが、110億円もかけて大型・中型の巡視船を10隻も新造、600~700人の新規採用を行いながら、中国公船が接続水域を航行した場合は、「日本の領海に入らないように」無線で警告を発し、領海内に侵入してきた場合は無線かスピーカーで「日本の領海だから、直ちに領海外に立ち去るように」と警告を発するだけの以前と同じ繰返しの役割遂行であったなら、何のための新造か、何のための人員増強か意味を失い、滑稽そのものとなる。

 それとも何かが変わるのか。変わるというなら、変わることの具体的内容を国民に説明しなければならない。

 日本の国土・領海は断固守るという強い意思表示だと言うかもしれないが、パターン化した繰返しは形式化・儀式化を招くことになって、意思表示にしても形式化・儀式化することになる。

 どう考えてみても、大型・中型の巡視船10隻新造にしても、600~700人人員補強にしても、ムダに見える。中国公船の接続水域航行にしても、日本の領海侵入にしても、拿捕等の強硬手段を取れないというなら、止める手立ては外交しかないはずだ。巡視船の新造でもなければ、人員補強でもない。

 だが、安倍政権ができることと言ったら、「情報連絡室」から「官邸対策室」への切り替えぐらいとなっている。

 外交で有効な方策を見い出せないというなら、安倍晋三は「海の自由を守るために力による支配ではなく、法による支配を訴える」、一人の主婦が自分の価値観を押し通そうとして思い通りにならない近所の主婦に対する面白くない感情を晴らすために近所の別の主婦たちのところに回って、自分の価値観こそが正しい、相手の価値観は間違っていると訴えて同意を得て満足するような中国を除いた諸外国訪問をこれまでと同様に繰返すしかない。

 「Wikipedia」の「海上保安庁」の項目に、〈人員の大部分は、海上保安大学校や海上保安学校で専門教育を受け卒業した生え抜きの海上保安官であるが、長官や次長、一部の管区海上保安本部長等は、国土交通省や他省庁のキャリア官僚が海上保安官に転官したうえで就くことが多い。〉という記述があったが、こういったことの改善にこそ取り組むべきだろう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする