安倍晋三は北朝鮮を訪れた場合は、朝鮮戦争戦没者墓地を参拝しなければならない

2013-07-31 02:09:03 | 政治

 

 北朝鮮の独裁者金正恩(キム・ジョンウン)が朝鮮戦争休戦60年となる7月27日に合わせて完成させたのだろう、新たに整備させた朝鮮戦争戦没者墓地の竣工式を7月25日、自ら出席して執り行ったと、次の記事が伝えている。

 《キム第1書記 朝鮮戦争の戦没者墓地に》NHK NEWS WEB/2013年7月25日 15時45分)

 数千人の市民や退役軍人、それに各国からの代表団らが参加、NHKを始め、日本やアメリカなど外国の報道陣も招かれたという。

 国民の飢餓を他処に飽食豊満で得た脂肪太りの金正恩は慰霊碑に献花し、行進する儀仗兵を閲兵したあと、並んでいる墓を1つ1つ見て回った。

 記事解説。〈キム第1書記としては、休戦60年を前にみずから戦没者への敬意を示すことで、国内の結束強化を図るとともに、アメリカなどに対し、休戦協定を平和協定に転換するよう求める立場をアピールした形です。〉――

 この記事によると、朝鮮戦争戦没者墓地としているが、調べた別の記事ではベトナム戦争で北ベトナム軍に参加して戦死した戦没者も祀られていると紹介し、また別の記事では名称を「国立墓地」として紹介している。

 この記事をNHKニュースで聞いていたとき、初めて、そうだ、北朝鮮にも靖国神社やアメリカのアーリントン墓地と同様に朝鮮戦争で戦死した戦没者墓地があって当たり前だと、その存在に気づいた。

 安倍晋三の靖国神社参拝論、その歴史認識は、靖国神社のみならず、戦没者墓地に祀られ眠っているのは戦争の目的や理念に関係しない戦死者の魂そのものであって、当然、参拝も戦死者が戦った戦争の目的や理念を讃えるためではなく、魂そのものを追悼するためとしている。

 要するに戦争の目的や理念から解放された魂そのものが眠っているのであって、その魂と向き合うのが参拝であって、戦争の理念や目的と向き合うためではないということなのだろう。

 色々な場所、色々な機会に同じようなことを喋っているが、最新の発言の一つは2013年7月4日参院選公示前日の7月3日日本記者クラブでの9党党首討論での発言がある。毎日新聞論説委員の倉重篤郎の靖国神社を参拝するのかとの問に対して――

 安倍晋三「ま、これは今までも何回も言い続けておりますように、え、国のために戦い、命を落とした人たちのために祈り、そして、尊崇の念を表す。私はそれは当然なことなんだろうと、えー、思いますし、非難される謂れはないんだろうと、このように思います。

 そして靖国に、えー、眠っている、まさに兵士たち、国のために戦ったわけで、これはアーリントン墓地には南軍と北軍の兵士が眠っています。

 そこにいわゆる行って、えー、亡くなった兵士の冥福を祈る。大統領も祈りますね。しかし、それは南軍の兵士が眠っているからといって、奴隷制度を肯定するわけでは全くないわけであって、そこに眠っているのはそうした理念ではなくて、ただ国のために戦った兵士たちの魂なんだろうと、このように思います。

 これが私の基本的な考え方であって、えー、今、靖国問題についてですね、行く行かないということ、自体が、これは外交問題に発展していくわけでありますから、今そのことについて申し上げるつもりはありません」

 倉重篤郎「アーリントン墓地のケースをよく言われますけれども、あれは内戦であって、南北戦争という内戦であって、あの国の人達が葬られている。しかし、靖国はですね、中国との戦いであり、そこには日本の人しか埋葬されていない。ちょっと違うと思います」

 安倍晋三「それは全然、あのー、間違っていると思います。それはあの、アメリカのケビン・ドークという教授がですね、えー、13代であります。えー、教授が、彼自身はクリスチャンなんですが、えー、彼は、まあ、哲学論として述べているのであって、内戦、えー、あるいは外国との戦いとは関わりないということを彼ははっきりと言っています。

 まあ、そういうことではなくて、戦った兵士の魂に対してどういうことかということや、そこにいわば、あー、戦争の目的、あるいは理念とは関わりがないということであろうと、このように思います

 当然、安倍晋三の靖国神社参拝論、その歴史認識からすると、北朝鮮の戦没者墓地に祀られている朝鮮戦争戦没者も北朝鮮国家が意志していた戦争の目的や理念に関係しない魂そのものとして眠っているということになる。

 北朝鮮は韓国を武力支配することで朝鮮半島の統一を謀るべく、1950年6月25日、突然韓国に侵略、一進一退を続け、1953年7月27日に国連軍との間に休戦協定が成立したが、韓国は署名を拒み、韓国と北朝鮮との間は戦争状態にあることになり、北朝鮮は韓国に対して民間航空機の爆破や、砲撃や哨戒艦の魚雷攻撃による撃沈等の戦争行為を行なっている。

 安倍晋三がアメリカを訪問した際にアーリントン墓地に献花するのは奴隷解放反対で戦って戦死した南軍の兵士が祀られていても、奴隷制度を肯定するためではなく、そのような戦争の目的や理念にもはや関係しないで眠っている魂そのものに対する追悼だとしているように、もし安倍晋三が拉致解決のために北朝鮮を訪れることになったら、その戦争が北朝鮮国家による、目的を果たすことができなかった韓国侵略の戦争であったとしても、侵略戦争の結果、北朝鮮が30万人近い戦死者を出したのは自らが仕掛けた侵略戦争だから止むを得ないとしても、また、北朝鮮の侵略戦争に途中から手を貸した中国人民解放軍が推定で50万人の戦死者を出したそうだが、それも止むを得ないとしても、アメリカ軍戦死者3万5千人近く、インターネット上に〈韓国軍は41万もの戦死者を出した。負傷者と行方不明者は42万、非戦闘員の死者が24万人、北朝鮮に連行された者が8万人〉との記述があるが、そのような膨大な戦死者・犠牲者を出した侵略戦争を演出した一人ひとりの北朝鮮戦死者であっても、そこに眠っているのは侵略戦争の目的や理念にもはや関係しない魂そのものだと、献花・追悼しなければならないだろう。

 北朝鮮側にしても安倍晋三の靖国神社参拝論、その歴史認識は先刻承知の情報を得ているだろうから、金正恩が安倍晋三を北朝鮮に招いた場合、「戦没者墓地に眠っているのは戦争の目的や理念に関係しない魂の一つ一つです。是非戦没者墓地に訪れて、献花し、追悼してください」と要求することは十分に予想できる。

 安倍晋三は自らの靖国神社参拝論、その歴史認識に従うなら、例え北朝鮮側が求めなくても、自ら進んで参拝・献花しなければならないはずだ。

 もし参拝・献花したなら、北朝鮮は朝鮮戦争に勝利したとしているが、勝利を裏付ける光景として利用することになるだろうから、単に戦争の目的や理念とは関わりなく、魂にお参りしたのだとはいくまい。

 大体が靖国の戦死者たちを「国のために戦い、命を落とした人たち」と言っているが、そのような行為の価値づけ自体に既に国家や戦争の概念が含まれている。

 いくら「国のために戦った兵士たちの魂」だと意味づけたとしても、戦争の目的や理念を抜きに魂だけを切り離すことはできないはずだ。

 切り離そうとするのは、都合の悪いこと(=侵略戦争)を隠す詭弁に過ぎない。もし正義の戦争を戦ったとしたら、「正義の戦争のために戦い、尊い命を落としてここに魂となって眠る」とでも称しただろう。

 安倍晋三がいつの日か北朝鮮の朝鮮戦争戦没者墓地に参拝することを楽しみにしている。

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