野田首相の強い決意の程が伝わってこない、尖閣に自衛隊を用いることを含めた毅然とした対応

2012-07-27 10:47:23 | Weblog

 昨日7月26日(2012年)夕方のNHK総合テレビが野田首相が衆院本会議で、「尖閣諸島を含め、わが国の領土領海で周辺国による不法行為が発生した場合には必要に応じて自衛隊を用いることも含め、政府全体で毅然として対応することになります」と発言しているシーンを報道していた。

 本会議は他の委員会のように必要に応じた複数回の質疑応答の形式は取らず、質問者が前以て質問を書き込んだ原稿を読み上げる一度の質疑に対して答弁者も前以て答弁を書き込んだ原稿を読み上げる一度の応答で完了する形式となっている。

 その結果、殆ど原稿に目を落として読み上げる形の質問となり、答弁となるが、質問にしても答弁にしても自らの主張の展開であって、そうである以上、自らの頭の中にある、こうあるべきだとする考えの相手に対する訴えとなるはずである。

 当然、原稿を読み上げる形式であっても、言葉に訴える力がなければ、主張が主張とはならない。こうあるべきだとする考えを何のために常日頃から頭の中に入れているのか、意味を失う。

 ところが、NHKニュースを見ていて、野田首相のわが国の領土・領海を外国の不法行為から守るとする主張に一国の首相にふさわしい力強い決意は何も感じることができなかった。原稿を単に読み上げているようにしか見えなかった。

 野田首相の答弁は楠田大蔵民主党議員の、「近隣の海洋で活動を活発化している中国の動向について」の質問に対するものである。「衆議院インターネット審議中継」にアクセスして、その箇所のみを文字にしてみた。

 楠田議員「我が国固有の領土であるこの尖閣諸島を巡っては近年の中国による挑発的とも言える活動は大変憂慮すべきものである。本年3月、そして今月も中国の漁船や監視船が尖閣諸島の我が国の領海に侵入する事案が発生。

 さらに中国政府は尖閣諸島は中国の核心的利益だと強硬に主張するなど、日中間の緊張が高まっている。

 この状況に政府として国有化の方針を示したが、その狙いを改めてお聞かせ願いたい。

 また今後尖閣諸島が不法侵入されるといった不測の事態が起こった場合、自衛隊・政府は如何なる対応を行うのか、明確にお示しください」

 野田首相「尖閣諸島を巡る対応、及び領土・領海警備についてのお尋ねがありました。

 尖閣諸島が我が国固有の領土であることは歴史的にも国際法上も疑いがなく、現に我が国はこれを有効に支配をしております。

 従って、尖閣諸島を巡り、解決すべき領有権の問題はそもそも存在しません。

 その上で政府としては尖閣諸島の平穏かつ安定的な管理を継続するとの観点から、様々なレベルで様々な接触をして、総合的に検討しているところであります。

 また尖閣諸島近海域に於いては海上保安庁が関係省庁と連携して、必要な警備を実施をしています。自衛隊も尖閣諸島を含め、我が国周辺海域の警戒監視活動をしっかりと行なっており、引き続き関係省庁が連携して、万全の態勢で警備に当たる考えです。

 その上で尖閣諸島を含め、我が国の領土・領海で周辺国による不法行為が発生した場合には、必要に応じて自衛隊を用いることを含め、政府全体で毅然として対応することになりますが、平素から危機管理体制を整え、外交努力を含め、そのような事態を未然に防止することが重要なことと考えます」――

 殆ど顔を上げないままの間を置かない、やや早めの読み上げは単に原稿どおりに言葉を伝えることに専念した様子しか窺うことができず、とても一国の首相の常日頃から頭の中にある主権の保全、領土・領海の保全に関わるこうあるべきだとする強い決意を秘めた主張の国民に対する訴えとして何ら響いてこなかった。

 響いてこない以上、「必要に応じて自衛隊を用いることを含め、政府全体で毅然として対応することになります」と言っても、「毅然」という言葉が持つ意志強固、その絶対性を野田首相自身の姿に些かも投影することはできなかった。

 そこにあったのは主張の訴えとは程遠い、原稿の読み上げに始まって、読み上げに終わった一国の首相の姿のみであった。

 「毅然として」が一国のリーダーの決意ある姿勢を自ずと反映して口を突いて出た言葉でないなら、対外国に関わる安全保障上の危機管理は2010年11月の北朝鮮による韓国延坪島砲撃事件や2010年9月の尖閣沖中国漁船衝突事件、さらに今年4月の北朝鮮ミサイル発射時に見せたような、「毅然」とは程遠い混乱や不手際しか期待できないように思えて仕方がない。
 
 国家安全保障上の危機管理の混乱、不手際は口では「毅然として対応」と言っても、実際には毅然とした態度を持って事に当たることができなかったことの反映として生じた失態であるはずだから、野田首相の「毅然として対応」にしても、原稿を読み上げるだけの態度からはこのことの二の舞を演ずる確率の高さのみを窺わせた。

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