前原誠司のオスプレイ配備日程見直し提言は野田政権を守るためのアリバイ作り

2012-07-19 12:22:14 | Weblog

 ―前原はオスプレイ配備で民意を言うなら、「普天間の辺野古移設反対」の沖縄の基本的民意を言え―

 口先だけの体裁のいいことを言い、実行力が伴わないことから口先番長の尊称を賜っている民主党政策調査会長前原誠司が7月13日(2012年)、都内で記者団に対して沖縄普天間基地配備計画のアメリカ軍最新型輸送機「オスプレイ」の安全性への懸念を考慮して配備計画を見直すべきだと発言。

 《前原氏 オスプレイ配備見直しを》NHK NEWS WEB/2012年7月13日 22時6分)

 前原誠司「墜落事故が立て続けに起きているにもかかわらず、今の計画を見直さずに岩国基地に持っていき、万が一のことが起きたら日米安保の土台そのものが大きく揺らぐことになる。今の配備計画のままでは、絶対に理解がえられない。

 民主党は、政府に対しても、アメリカのルース駐日大使に対しても、配備計画の見直しを申し入れている。あとは一呼吸置くことを、日米両政府で実務的に考えていただければ結構だ」

 記事。〈「オスプレイ」について、アメリカ軍は、今月下旬にいったん山口県の岩国基地に運び込み、整備や試験飛行を行ったうえで、沖縄の普天間基地に配備し、10月上旬には本格的な運用を始める方針です。〉・・・・・

 口先番長だけあって、前原誠司の発言にはウソがある。アメリカ側は今年4月モロッコ墜落と、同6月フロリダ墜落を操縦ミスであって機体の安全性に問題はないとし計画通りの配備を進めている。例え墜落するという「万が一のことが起きたら日米安保の土台そのものが大きく揺らぐことにな」ったとしても、日本が中国や北朝鮮の脅威に単独で対抗できるだけの力を持っているわけではなく、日本側が自国の軍事的な安全保障上、アメリカとの軍事同盟を求めている以上、決定的に決裂することはない。

 但し、「万が一のことが起きたら」、決定的に揺らぐのは野田政権である。ただでさえ離党者が相次ぎ末期症状に至っている野田政権が多くの国民の配備反対の声を無視し、党内にも抱えている配備反対の声まで無視して、アメリカが主張する機体の安全性に問題なしに言いなりに従属して配備に協力、「万が一のことが起きたら」、共同責任どころか、その主体性なき従属性に非難が集中、責任問題が噴出して野田政権の「土台そのものが大きく揺らぐことになる」最悪の事態に行き着くことは火を見るよりも明らかである。

 当然、前原誠司が「万が一のことが起きたら日米安保の土台そのものが大きく揺らぐことになる」と言っていることは日米関係の棄損を恐れているわけでも、国民の配備反対の声を尊重しているからでもない。野田政権を守る口実に利用しているに過ぎない。

 もし前原が「万が一のことが起きたら」と日米関係を心配するなら、もっと早い段階で安全性の確認に政府と党共々動いていなければならなかったはずだ。

 だが、動いていなかった。

 沖縄県民のオスプレイ沖縄配備反対の声は今になって始まったことではない。アメリカ側が普天間にオスプレイ配備計画を立てていたのに対して開発段階で墜落事故が相次いだことや2010年4月にアフガニスタンでオスプレイ墜落事故を起こし、4人が死亡、その危険性の有無に注意が向けられるようになった。

 2010年10月26日にはアメリカ海兵隊が南部ノースカロライナ州の基地に日本の報道機関を招き、最新鋭の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイを公開、安全性に問題はないことをアピールして、日本側の危険性に対する疑念の払拭に務めている。

 数日前になって数紙が、米国防総省運用試験評価局に関係する国防分析研究所(IDA)でオスプレイの主席分析官を務めた航空専門家であるレックス・リボロ氏の09年証言として機能上の欠陥を指摘、墜落の危険性があると主張していたことを取り上げているが、2011年7月9日に照屋寛徳社民党議員がこのことを既に取り上げて、菅内閣に質問主意書を提出している。

 (参考までに。2011年8月3日当ブログ記事――《菅仮免の原発問題とオスプレイ配備問題に見る「国民の安心と安全」の二重基準 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》

 菅内閣の答弁書は「安全性等については、引き続き、米国政府に対して、更なる情報の提供を求め、詳細な情報把握に努めているところである」とする姿勢を見せる一方、アメリカ側の配備計画を受け入れる姿勢を終始一貫して取り続けてきた。

 その象徴が今年3月の岡田副総理のオスプレイ配備を懸念する当時の普天間第二小学校長に対する次の発言である。《[オスプレイ7月配備]日本は米国の「属国」か》沖縄タイムズ/2012年4月26日 09時25分) 

 岡田副総理「今のヘリとの置き換えで、プラスアルファではない」

 何ら危険性はないと明言している。

 外務省幹部「一般的な装備の変更であり、配備がいい、悪いという議論にはなり得ない」

 安全性の絶対的保証となっている。

 ところが、岡田副総理発言の翌月の4月11日、モロッコでモロッコ軍との合同演習中にオズプレイが墜落、海兵隊員2人が死亡、2人が重傷。

 さらに2カ月後の6月13日、フロリダ州で訓練中に墜落、5人が負傷。

 アメリカ側が躍起となって墜落は人為ミスだ、操縦ミスだと言い、その安全性に問題なしを訴えて、日本国内で高まっている配備反対の世論を抑えようとしたが、アフガニスタン墜落事故調査委員長を務めた元軍高官のドナルド・ハーベル元准将がエンジンが2つとも80%の出力しか出ない機体の不具合があることを証言、このことを事故報告書に盛り込もうとしたことに対して空軍上官から検証し直すよう要求されたことを明らかにしたと「NHK」が報道、その安全性に対する疑念ばかりか、危険性隠蔽の疑念までが生じた。

 このような疑念を受けて前原誠司の配備日程見直しの提言に繋がったはずだが、野田首相自身が配備見直しを模索していたと伝えている記事がある。

 《オスプレイ:首相が通報先延ばし模索 米は拒否》毎日jp/2012年07月01日 0時37分)

 〈垂直離着陸輸送機MV22オスプレイを米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)に配備することを米政府が日本政府に正式通告する「接受国通報」をめぐり、野田佳彦首相が外務、防衛両省に、先延ばしを求めるよう指示していたことが分かった。米国は拒否し、通報は予定通り(6月)29日に行われたが、首相は沖縄県などの反発を強く懸念したとみられる。〉

 野田首相は6月25日に〈玄葉光一郎外相、森本敏防衛相と首相官邸で対応を協議、「もう1回交渉できないか」と指示。事故原因が判明するまで通報を遅らせることができないかを模索〉、6月26日、森本防衛相が〈カーター米国防副長官、玄葉氏はルース駐日米大使らと協議したが、米側は拒否した。〉・・・・

 記事はこの先延ばし模索が、〈沖縄県などの反発を強く懸念したとみられる。〉と書いているが、安全性に自信を持つことができたなら、国民の配備反対など無視したことは世論調査で50%以上が消費税増税に反対であっても無視し、増税に拘っていることを見れば分かる。

 あるいは普天間の辺野古移設に沖縄県民の殆どが反対していることを無視、日米合意順守一辺倒で辺野古を目指していることからも証明できる。

 沖縄県民の反発を恐れたのではなく、ある条件下でのオスプレイ操縦に難点があることが判明、機体の欠陥からではなくても、操縦ミスで墜落しただけでも野田政権の土台が覆る恐れからの先延ばし模索であったはずだ。

 当然、アメリカ側の拒否に遭ったとしても、自己保身から配備を先延ばししたい気持は残っていることになる。

 そこへ来ての前原誠司の唐突な配備見直し提言である。政府側の配備延期の申し出に代わる党側からの配備見直しの提言の形を取った連携プレーでなければ、自己保身は生きてこないことになる。

 あるいは「接受国通報」先延ばしのアメリカ側の拒否の段階で自己保身を断念したことになる。

 前原誠司が配備日程見直し提言をした7月13日から3日後の7月16日にフジテレビ番組に出演、次のように発言している。

 野田首相「配備自体は米政府の基本方針。同盟関係にあるとはいえ、どうしろ、こうしろという話ではない。安全性の確認をしないで飛行運用するということはない。政府の中で国土交通省、第三者の専門的知見を入れて(安全性を)再確認した上で、飛行運用する」

 配備はアメリカ任せ、日本政府の意思関与不可能を言いながら、日本政府の安全性の確認の必要性を言う矛盾した発言となっている。自らの政権を守る自己保身からの、せめてのもの抵抗であろう。

 大体がモロッコやフロリダの墜落前までは、安全性はアメリカ側が説明する安全性をそのままに公表する無条件の追随を見せていたのである。

 前原誠司は7月17日の記者会見でも、配備見直しを再び求めている。《オスプレイ配備で政府批判=前原氏「野田首相は民意軽視」》時事ドットコム/2012/07/17-20:01)

 前原誠司首相も官房長官も沖縄、山口の皆さんの民意を軽く考えているのではないか。今の配備計画をそのまま押し付けて沖縄の理解を得られるのか。見通しは甘いと言わざるを得ない。

 安全性が確保されないものを、米国が言ってきただけで導入し、万が一事故が起きたとき、日米同盟は極めて大きく傷つく。日米安保を堅持、強化すべきだからこそ、責任を持って米国と話をしてほしい」

 但し記事は、〈野田佳彦首相と藤村修官房長官ら関係閣僚は17日午前、当初の予定通り、24日にも米軍岩国基地(山口県岩国市)にオスプレイが搬入されるとの日程を確認。〉と書いている。

 「沖縄の民意」や山口の民意を理解しているかのように言っているが、少なくとも「沖縄の民意」を口にするなら、安全性を確認してからのオスプレーの配備ではなく、普天間の辺野古移設の断念、「国外、最低でも県外」移設を目指してこそ、初めて「沖縄の民意」を理解することになり、口にする資格が生じるはずだ。

 だが、安全性を確認してからのオスプレーの配備のみを以って、「沖縄の民意」に対する理解だとしている。

 もし安全性を確認してからの配備後、墜落しても安全性確認を努力したことを野田政権を守るアリバイ作りに利用するだろうし、アメリカ側がこのまま配備したのちに墜落したとしても、配備見直しを訴えたことを同じく野田政権を守るアリバイ作りに利用できることになる。

 この点、同じ与党である国民新党の下地幹事長は正直である。

 7月18日午前、在日米国大使館でカート・トン首席公使と会談。オスプレイの普天間配備計画について次のように延期を要請している。

 下地幹事長「日本国民の感情は厳しく、野田佳彦首相を政治的に追い込みかねない」(MSN産経

 沖縄県民やその他の反対民意よりも野田首相に与えるだろうダメージを心配している。民主党政権が崩壊したなら、元々泡沫政党でしかない国民新党ははたちまちその存在意義を失ってしまうのだから、その危機感からの懸念なのだろう、無理もない。

 トン公使「日本の外務省も防衛省も配備計画を支持してきた。(前原の配備日程見直し提言を)唐突で驚いている」(同MSN産経

 アメリカ側は野田政権の先行きなど眼中にはない、お家の事情でしかないというわけである。

 決して「沖縄の民意」や山口の民意を考えてのことではない。民意を考えてのことなら、既に触れたようにアメリカ任せの安全性の確認に終始することはなかったろうし、それ以前の問題として、普天間の辺野古移設を決めることもなかったろう。

 前原も野田首相も自分たちの保身のことしか頭にはない。

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