温情政治家岡田副総理が2013年度国家公務員新規採用を2009年度上限(8511人)比で各府省全体で7割以上削減する指示をだしたが、それを批判する記事を3月14日当ブログ記事――《岡田の消費税増税正当化目的のなり振り構わない視野狭窄な公務員採用7割削減は他に累を及ぼす血祭り - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》に書いた。
蛍光灯並みに後になって、新規採用抑制よりも国家公務員宿舎の超格安家賃値上げを優先させるべきではないかと気づいて、改めて取り上げて見ることにした。
2013年度からの抑制で1年の余裕はあるというものの、2013年度新規採用の主たる対象者である大学3年生は3年生の夏から本格的な就職活動に入るというから、就職対象としたい職種の優先順位を3年生時に決めていかなければならない関係上、1年の余裕どおりの余裕を与えてくれないことになる。
また有効求人倍率に関して言うと、昨年6月から8か月連続で上昇してはいるが、1月の有効求人倍率は前年12月比+0.02ポイントの0.73倍であって、1に遥かに届かない数値となっている。
この上昇は被災3県の復興需要とここのところのアメリカの景気回復の兆しを受けて日本の景気の先行きに明るさを取り戻しつつあることが影響しているようだが、中東情勢に影響を受ける石油価格高騰の景気に対する不安要因が2013年度の有効求人倍率を確かな足取りで1以上の保証を約束するわけではない。
アメリカの景気回復の兆しはまた円高基調を円安に振り向ける貢献を与えているが、「1ドル=84円台の水準は『超超円高』から『超円高』に戻った程度で、国内での生産を含む企業活動に好ましいレベルにはまだ至っていない」(NHK NEWS WEB)と日本自動車工業会の志賀俊之会長が発言している。
さらなる円安に向かわないと、確実な景気回復は望めないということなのだろう。
また3月15日(2012年)米韓FTA発効が、〈電機や自動車メーカーの輸出競争力に加え、エネルギー調達でも韓国が優位になり、日本がより不利になる恐れがある。〉(MSN産経)と伝えているから、復興需要があるものの景気の先行きに関しては予断を許さない。
こういった状況を勘案しなければならない国家公務員新規採用の抑制のはずだが、生まれも育ちもよい、生活に苦労したことがないボンボンの温情家政治家には他人の生活ということなのか、温情を働かす余地はないようだ。
大卒・高卒の内定率上昇も景気回復を占う好材料となるはずだが、これも厳しい水準にとどまっていると、《大学生内定率80%余 厳しい水準》(NHK NEWS WEB/2012年3月16日 10時33分)と《高校生の内定率86% 厳しさ続く》(NHK NEWS WEB/2012年3月16日 10時33分)が伝えている。
大学生の場合は2月1日(2012年)時点で80%余り、過去最低だった前年より3ポイント余り上昇してはいるが、統計を取り始めた平成11年度以降では3番目の低水準。
高校生の場合は1月(2012年)の時点で86.4%で、前年より2.9ポイント上昇したものの、リーマンショックで雇用情勢が悪化する前の水準を下回っているという。
大学生の内定率から、内定できていない学生数を割り出してみる。
2011年度の大学学部生は約2,570,000名だそうで、平均すると1学年で約64万人。大学院生は約272,000名で、修士課程2年と博士課5年があるから、平均して2.5年とすると、約10万人。合計74万人。その80%は592000人。約148000人が内定から外れていることになる。
この全てが未就職者となるわけではないが、前年からの、あるいは前々年からの就職浪人を合わせると、彼らに与える心理的影響は無視できないはずだ。
国家公務員宿舎賃料値上げすべしとする記事を2つばかり書いたが、その1つが2012年1月7日記事――《消費税増税で国民に負担を求めるなら、国家公務員宿舎賃料を民間相場と同等に値上げすべき - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》だが、今回は「国家公務員新規採用抑制よりも国家公務員宿舎値上げを優先すべき」となる。
2010年9月1日現在の国家公務員宿舎の総戸数は約21万戸だと財務相のHPに出ている。
2011年10月5日の「MSN産経」記事――《公務員宿舎Q&A 都心一等地で家賃4万円…格差は歴然?》に次のような記述がる。
〈今回問題となった埼玉県朝霞市の宿舎であればファミリータイプの3LDKで月約4万円。東京都港区南青山にある幹部職員用官舎(94平方メートル)の場合、家賃は月6万7千円から9万2千円という。だが、民間のある不動産業者では「同様条件の一般住宅の家賃は朝霞で13万~15万円、青山では20万~30万円が相場だ」としており、格差は歴然だ。〉・・・・・
民間の低い方の相場から国家公務員宿舎の高い方の相場を差引いたとしても、朝霞の場合は9万円の格差。南青山の場合は実質的には13万超~20万超となるが、11万円近い計算となる。
ごくごく控えめに半分の月平均5万円値上げするとして、半分に見た比較から、総戸数約21万戸に当てはめてみると、月々105億の増収となる。
2010年度国家公務員Ⅰ種試験合格者(本省に採用されるとキャリアと呼ばれる)の初任給は月額約21万8000円だという記載をインターネット上に見かけた。
22万円として計算すると、国家公務員新規採用約6000人カットで月額13億円が浮く。
国家公務員新規採用約6000人カットを中止、その分の人件費が月々13億円かかったとしても、国家公務員宿舎賃料値上による増収分の月額105億が軽く相殺、92億のプラスを維持することが可能となる。
先に上げたブログに国家公務員新規採用は国家公務員を目指す大卒者だけではなく他の大卒者や高卒者にも影響すると書いたが、やはり新規採用は確実な景気回復を待ってからすべきで、公務外の私的生活の面で悠々自適の暮らしを満喫している宿舎生活の公務員の特権を少々剥奪することを優先させるべきではないだろうか。