3月13日参院予算委/野田首相の「社会保障・税一体改革」一体性確約の矛盾と詭弁

2012-03-16 10:18:59 | Weblog

 3月13日の参議院予算委員会。木庭健太郎公明党議員の質問に対して野田首相が「社会保障・税一体改革」の一体性を確約、その見事な尤もらしい矛盾と詭弁に感心したあまり、取り上げて見ることにした。

 木庭健太郎「大綱自体が先ずどうなっているかというと、税制改革に比べて、社会保障改革は殆ど、(苦笑い混じりに)検討、検討、検討、と書いてあって、具体的内容がないんですよ。

 しかも今ずうーっと、話を論じたように、その具体化する法案がいつ出るかも明確ではないわけです。

 これではね、私はやっぱりね、社会保障と税の一体改革ではなくて、社会保障を置き去りにした消費税増税改革だと、こう言わざるを得ないと思いますよ。

 総理ね、私が言いたいのは、先ず、社会保障について明確なビジョンを、せめて法制化のメドですよ。これをきちんと果たしてくださいよ。これが最低限不可欠です。

 これがなければ、単に消費税をちょっとという、これでは国民は納得しないと思います。如何でしょうか」

 野田首相「あのー、大綱の中にはですね、え、例えば第2章で子ども、子育て、年金、医療、介護等々の社会保障の全体像を明らかにしています。

 で、その全体像を明らかにした上で、その上で、それぞれの改革項目を実施時期等々の工程表も併せて載せております。順次、この法律については、提案していくということで、検討と書いてあることにつていも、法案化したものは『検討』がだんだん消えていくんですよね。

 と言うことで、全体像は示していますので、まさにこれは税制と併せて一体改革、でございます。

 で、既に、ま、税制についても年度内に提出をする運びでありますが、先程副総理からお話がありましたとおり、既に社会保障関連で法案提出したものもありますし、税制と併せて提出するものもありますし、若干、遅れるものもありますが、そいうい形で順次提案するということが全体像の中に、あの、明記してございますので、これはまさに一体改革でございます」

 木庭健太郎(首をかしげて苦笑いを見せてから立ち上がる。)「ちょっと私、無理があると思います。せめて、じゃあ、検討じゃなくて、いつにこの法案が出てくる、いつに出てくる、せめてプログラムをですね、せめてそれぐらいもない。

 やっぱ、これ、私は一体改革だとは思えない。こう申し上げざるを得ないと思いますよ」

 まさに野田首相が言うように「検討と書いてあることにつていも、法案化したものは『検討』がだんだん消えていくんですよね」は正論中の正論と言える。

 だが、完全に「消」し去って社会保障制度自体を完成させる前に消費税増税率と増税時期を決めた非一体性が問題となっているのであって、木庭議員もその点を追及したはずである。

 まさにドジョウのツラにショウベンの答弁となっている。

 木庭議員は公明党提案の政治家の監督責任を強化すべきとする『政治資金規正法改正案』と民主党提案の企業・団体献金禁止の法案を併行して協議してもらいたいとする質問に移る。

 野田首相が「社会保障の全体像を明らかにしています」と言っている大綱の第2章を見てみる。 

 この第2章は「第1部 社会保障改革」の「第1章 社会保障改革の基本的考え方」に続いて記載されている「第2章 社会保障改革の方向性」を指している。

 第2章 社会保障改革の方向性

第1章の基本的考え方に基づき、以下に示す方向性に沿って各分野の改革を進める。

1 未来への投資(子ども・子育て支援)の強化

子ども・子育て新システムを創設し、子どもを産み、育てやすい社会を目指す。

2 医療・介護サービス保障の強化、社会保険制度のセーフティネット機能の強化

高度急性期への医療資源集中投入など入院医療強化、地域包括ケアシステムの構築等を図る。どこに住んでいても、その人にとって適切な医療・介護サービスが受けられる社会を目指す。

3 貧困・格差対策の強化(重層的セーフティネットの構築)

すべての人の自立した生活の実現に向け、就労や生活の支援を行うとともに、低所得の年金受給者への加算など、低所得者へきめ細やかに配慮を行い、すべての国民が参加できる社会を目指す。

4 多様な働き方を支える社会保障制度(年金・医療へ短時間労働者への社会保険適用拡大や、被用者年金の一元化などにより、出産・子育てを含めた多様な生き方や働き方に公平な社会保障制度を構築する。

5 全員参加型社会、ディーセント・ワークの実現若者をはじめとした雇用対策の強化や、非正規労働者の雇用の安定・処遇の改善などを図る。
誰もが働き、安定した生活を営むことができる環境を整備する。

6 社会保障制度の安定財源確保

消費税の使い道を、現役世代の医療や子育てにも拡大するとともに、基礎年金国庫負担2分の1の安定財源を確保し、あらゆる世代が広く公平に社会保障の負担を分かち合う。


 確かに子ども、子育て、年金、医療、介護等々の方向性を謳っている。年金に関して取り上げてみると、「三 貧困・格差対策の強化(重層的セーフティネットの構築)」として、「すべての人の自立した生活の実現に向け、就労や生活の支援を行うとともに、低所得の年金受給者への加算など、低所得者へきめ細やかに配慮を行い、すべての国民が参加できる社会を目指す」と謳っている。

 そして次の第3章で「具体的改革内容(改革項目と工程)」について触れている。「子ども・子育て」に関しての一例を上げると、幼保一体化の「こども園給付(仮称)を創設する」と謳い、今通常国会に法案提出の予定へと進んでいる。

 但し低所得層対象の「貧困・格差対策の強化」の具体像に関しては、「高齢者医療制度の見直し」や「最低保障年金」、あるいは「年金制度の最低保障機能の強化を図り、高齢者等の生活の安定を図るため」の「低所得者への加算」等を主たる柱としているはずである。

 「最低保障年金」に関しては、その具体像は固まっていない。しかも最低保障年金制度を創設した場合、さらなる消費税増税が必要となるとする試算を行なっている。

 いわば具体化前の案の段階にとどまっている。一体改革だとする一体性の範疇に入れることはできない。

 最低保障機能強化については次のように記載している。(一部分抜粋)

 (2)最低保障機能の強化

○ 年金制度の最低保障機能の強化を図り、高齢者等の生活の安定を図るため、以下の改革を行う。

低所得者への加算

低所得者に重点を置いた、老齢基礎年金額に対する一定の加算を行う。
その際、保険料納付のインセンティブを阻害しないよう検討する。

2 障害基礎年金等への加算
老齢基礎年金の低所得者に対する加算との均衡を考慮し、障害者等の所得保障の観点から障害・遺族基礎年金についても、一定の加算を行う。

3 受給資格期間の短縮
無年金となっている者に対して、納付した保険料に応じた年金を受給できるようにし、また、将来の無年金者の発生を抑制していく観点から、受給資格期間を、現在の25年から10年に短縮する。

☆消費税引上げ年度から実施する。

具体的内容について検討する。税制抜本改革とともに、平成24年通常国会への法案提出に向けて検討する。


 検討段階だとしている。

 要するに検討して具体的内容を固めてのことになるから、法案提出も“検討する”と言うことになるのだろう。固まれば提出する、固まらなければ見送る。

 通常国会終了までに固まる予定がついていたなら、法案提出を検討する必要は生じない。

 また、「低所得者への加算」に必要とする財源を消費税の税収のみではなく、高所得者の年金給付を減額して、その浮いた財源を回す方針でいるが、その見直しについての記載を見てみる。
 

 (3)高所得者の年金給付の見直し

○ (2)の最低保障機能の強化策の検討と併せて、高所得者の老齢基礎年金について、その一部(国庫負担相当額まで)を調整する制度を創設する。

☆ 最低保障機能の強化と併せて実施する。
具体的内容について検討する。税制抜本改革とともに、平成24年通常国会への法案提出に向けて検討する。


 「低所得者への加算」と同様、「高所得者の年金給付の見直し」も具体化しているわけではない、検討段階にある。

 にも関わらず、一体改革だと言いながら、消費税は早々に増税率と増税時期を決定した。

 この非一体性はまさに矛盾と詭弁そのものと言える。

 にも関わらず、野田首相は「まさにこれは税制と併せて一体改革でございます」と抜け抜けと言っている。

 確かに法案提出にまで進んでいる改革もあるが、未だ検討段階にとどまっている改革案や、あるいは練り上げた制度の矛盾を国会で追及されて、答弁に四苦八苦しているケースも多々生じている。

 だからこそ、岡田ボンボンは国会で「詳細な制度設計はこれからでございます」(3月6日(2012年)衆議院予算委員会)とか、「自民、公明両党は今の制度を改善する路線。われわれは今の制度の延長では無理があるとして新しい制度を提案したが、欠点があることは承知している。双方をテーブルに乗せて協議してほしい」(時事ドットコム)と答弁せざるを得なかった。

 要するに野田首相が言っている「まさにこれは税制と併せて一体改革でございます」は2階建ての新築に取り組んでいながら、1階部分が完成したところで、家は出来上がりましたと譬えているようなものであろう。

 勿論完成した1階部分は消費税増税部分に当たる。

 本来なら1階部分に社会保障制度改革を置いて、その出来上がり・完成図に従って2階部分を決めなければならないはずだが、逆を行っていること自体に矛盾を抱えている。

 野田発言は野田首相自身の言葉を借りて言うと、「まさにこれは矛盾と詭弁を併せて一体性を持たせた発言です」と見做すことができる。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする