菅首相の弁解から入った日仏首脳共同記者会見答弁の自信のなさ

2011-04-01 09:49:11 | Weblog

  
 昨3月31日、日仏首脳会談を午後6時頃から開催。サルコジ大統領から5月のG8サミット(主要国首脳会議)で原発事故を議題として取り上げたいとの提案や原子力先進国としての知識やロボットなどの機材提供の申し出があったという。

 菅首相の方からは福島原発事故の発生経緯や対応を話したのだろう。昨夕共同記者会見を、既に始まっていたが、6時からNHKテレビで視ていて、最初の記者からの質問に対しての菅首相の答弁を聞いていて、おや、と思った。

 首相官邸HPの動画から、記者の質問と菅首相の答弁のみを取上げて、例の如くケチをつけることにした。

 《日仏首脳共同記者会見・菅首相答弁》(2011年3月31日) 

 五十嵐(女性記者)「読売新聞の五十嵐と申します。先ず、あの、菅総理に質問いたします。震災で総理は主に今回の福島原発の事故に対する対応に主に重点を置かれて取り組まれてきていると思いますけれども、今回の事故を踏まえてですね、原子力政策についてどのように進める、あるいは見直す方向なのか、今日の共産党の志位委員長との会談では14基をこれから新増設しようとしているエネルギー政策の基本政策の見直しについても、言及されたようですけども、具体的にはどのように発言をされたのか、伺いたいと思います。

 さらにエネルギー政策の先にはまあ、含めてでありますけれども、復旧、復興、国造り、そのために復興本部や担当閣僚どうするのか、体制づくりでありますけれども、これをどう進めるのか。これまでこうしたビジョンについて総理から直接伺う機会がなかったので、この機会に是非伺いたいと思います」

 菅首相「先ず私がこの3週間取り組んできたことは、あー、地震・津波によって、えー、大変な被害を受けられたみなさんを、おー、先ず命を助け、えー、一人でも多くの人を助け、そして、えー、被災者のみなさんに、イー、支援をしていく。この、こと、が、第一。

 そして同時に、発生した、この原子力発電所の、事故に対応することがもう一つの、この二つのことを、ヲー、やってきたわけでありまして、エ、決して、えー、一方だけ、エー、やったということでは、ないということは、是非ご理解を頂きたいと思います。

 エー、そうした中で、えー、この福島、原子力発電所の、おー、事故の、おー、重大性、ということを、私も当初から感じておりましたので、えー、この問題にも、おー、いう、そうした、あー、そうした被災者支援に負けない、エネルギーを使ってきたことも、ヲー、事実であります。

 えー、エネルギー政策の見直しについてのお話でありましたが、えー、先ずは、あー、現在、オ、の事故を、如何に、イー、これ以上拡大しない形で、抑えていくかということが、あー、先ず全力を上げていかなければならない課題であることは、言うまでもありません。

 えー、その上で、えー、一定程度落ち着いた中で、えー、この事故が、なぜこういういう形に、えー、大きく、ウー、なってしまったのか、えー、検証することが、ア、必要であります。

 そして検証する中から、あー、今後、こうした、事故を起こさない、イー、ために、どういうことが必要か、これは、今日のサルコジ大統領とのお話の中でも、国際的にも議論していく必要があると考えております。

 そいう中で、えー、我が国の原子力政策、エネルギー政策についても、おー、今回の、おー、事故の、おー、検証、を踏まえた中で、改めて、えー、どういう、ウー、エネルギー、イー、政策を、進めていくかということを、ヲー、改めて議論する必要があると、このように、イー、考えて、えー、いるところであります。

 シー、また、あー、この問題を含む、ウー、復興、ウー、復旧・復興の体制づくり、について、の、ご質問であります。えー、年度が、ア、終わり、エ、明日から新しい年度がスタートするわけでありますけれども、えー…、来年度の予算は成立いたしましたけれども、ウー…、このォー、予算を、提出した、時点と、この大きな、あー、大震災を、受けた、今日の時点では、エ、エ、優先度が、あー、色々と変わって、えー、きていることは、これは言うまでもありません。

 そういった意味で、えー、これから被災者支援から、エー…、復興への、オ、道筋を描かなければなりません。ま、4月の段階で、先ずは、あー…、あー、一定程度の瓦礫処理、を含めたですね、補正予算が必要と、なると考えておりますけれども、同時に復興に向けた、エ、例えば、あー、知識を持っておられるみなさん、の、提言、をいただくような、あー、委員会、あるいは会議というものを、おー、考えるなど、今、あー、そうした、アー、ことを、ヲー…、現在、検討をいたしております。

 エ、みょうにち、イー…、私の、記者会見も予定されておりますので、えー、場合によっては、あー、少し具体的なことは、明日の記者会見で申し上げたいと、このように思っております」

 相変わらずスムーズに次の言葉につなげていくことができず、言い澱んで次の言葉を探す「あー、えー、いー、うー」等々の間投詞を余りにも例の如くに頻繁に言葉と言葉の間に挟み、発言に悪戦苦闘を見せている。

 一国のリーダーなのだから、もう少し的確・簡潔な言い回しで的確・簡潔に纏めて話すことができないものなのだろうか。

 原子力事故に関しては、事故の全面解決、一定程度の解決後の事故発生の経緯とその解決策の適否の検証、再発防止策の構築。このような各々のプロセスを踏んだ上で改めて原子力政策・エネルギー政策について検討と言っているだけのことで、地震と津波被害に関しては、この3週間で救命措置、被災者支援を行ってきたということと、今後の復旧・復興の体制づくりは補正予算を組んで取り組むと同時に復旧・復興に向けた委員会、あるいは会議を検討している、明日の記者会見で少し具体的なことを話すことができるということを言っているに過ぎないのだが、簡潔に纏めることができずに「あー、えー、いー、うー」を入れて長々と喋っている。

 最初から分かっていたことだが、合理的判断能力の欠如を性格としているから、的確、簡潔な会話ができない。合理的判断能力の欠如に対応して指導力まで欠くことになっている。

 状況を満足に判断できない人間が指導力など持ち得ようがないからだ。

 読売新聞の女性記者は「震災で総理は主に今回の福島原発の事故に対する対応に主に重点を置かれて取り組まれてきていると思いますけれども」と前置きして、原子力政策・基本的なエネルギー政策見直しの見通しについて尋ねた。

 この前置きは決して地震・津波の被災者支援や救命・救助支援を疎かにして、原発事故対応のみの一方に偏った対応だと批判しているわけではない。前者の支援に関しては初動対応と初動対応に引き続く二次的対応の両方に的確性を欠いていた、計画的な対応ができていなかったとする批判がある以上、その検証は必要になるが、事実的確性を欠き、計画的ではなかったとしても、いわば支援の遅れや手落ちがあったとしても、時間の進行と共に解決の方向、よりよい方向に向かっていく、先ず以って悪化の方向に逆行することはない問題であるが、原発事故の場合、時間の進行によって解決が必ずしも保証されない問題であり、事実一進一退を繰返し、対応によっては最悪の事態が予想できないことはない、より難しい問題だという意味で、「主に重点を置かれて取り組まれてきている」と聞いたはずだ。

 だが、女性記者が批判したわけではないにも関わらず、さも批判されたかのように間違った解釈を施す合理的判断能力を見事発揮して、「決して、えー、一方だけ、エー、やったということでは、ないということは、是非ご理解を頂きたいと思います」と弁解するのは被災者支援や救命・救助支援よりも原子力事故により重点を置いた対応をしてきたことが事実であり、その事実が批判されたと勘違いしたことによって狼狽える気持を内心に走らせ、自己対応の正当性の弁解となって現れたものであろう。
  
 菅首相の次の言葉である、「この福島、原子力発電所の、おー、事故の、おー、重大性、ということを、私も当初から感じておりましたので、えー、この問題にも、おー、いう、そうした、あー、そうした被災者支援に負けない、エネルギーを使ってきたことも、ヲー、事実であります」にしても、原子力事故という事の重大性の点で、被災者支援の問題に劣らない、あるいはそれ以上に重大な問題と把えて対処してきたという合理性に重点を置いた発言ではなく、前の発言に続いて弁解に重きを置いた発言であろう。

 フランス大統領がすぐ横に立っている共同記者会見の場で、力強い言葉で二つの問題を早急に解決しますと国民に向けて自信に満ちた強い意思表示を示すのではなく、次の言葉を捜すのに「あー、えー、いー、うー」とつっかえつっかえしながら弁解に終始する。

 このことだけを取っても、一国のリーダーでありながら、如何に自信がないかを証明している。

 菅首相は復興に関して、「例えば、あー、知識を持っておられるみなさん、の、提言、をいただくような、あー、委員会、あるいは会議というものを、おー、考えるなど、今、あー、そうした、アー、ことを、ヲー…、現在、検討をいたしております」と言っているが、このことに対応した枝野官房長官の発言を伝えている記事がある。《復興委員会 首相が設置を検討》NHK/2011年3月31日 12時43分)

 震災からの復興計画を検討するための政府の枠組みについての発言と記事は書いている。

 枝野官房長官有識者を含め、いろいろな人から阪神・淡路大震災のときの対応を聞くことは、有力な参考材料だと認識している。最終的にどういう枠組みや段取りで進めていくか、菅総理大臣が最終的な検討をしている」――

 「有識者を含め、いろいろな人から阪神・淡路大震災のときの対応を聞くことは、有力な参考材料だと認識している」ということは、民主党政権は発生時期不明の自然災害に備えて過去の事例を教訓に対策チームを作り、発生した場合の対策を練り、マニュアル化していなかったことを示している。

 教訓とすべき過去の事例の中には「阪神・淡路大震災のときの対応」が教訓課題として入れていたはずであるし、入っていなければならなかったはずだから、それをこれからの課題として「有識者を含め、いろいろな人から阪神・淡路大震災のときの対応を聞く」とし、そのことを以って今更ながらに「有力な参考材料」とするとしているのだから、何も勉強していなかったということであろう。

 このことは復興の問題だけではなく、危機に際した初動対応に関しても、初動対応に続く二次対応にしても何ら対応策を講じていなかった疑いが出てくる。

 だからこその、今回の地震・津波被害に対する初動対応の遅れ、計画性のなさということなのだろうか。

 菅総理の元でこのような地震災害が起きたことは国民にとって悲劇だという発言をよく聞くが、実際にそのとおりかもしれない。

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