菅仮免が昨4月13日、松本健一内閣官房参与と東日本大震災の復興について意見交換したとマスコミが報道。松本参与は意見交換後の即席のだろう、記者会見で、菅首相が今後とも放射能汚染の危険性を抱えているということからだと思うが、原発周辺地域は10年、20年住めないと発言したことを明らかにしたということで、被災住民にとっては大問題となることだから、物議を醸している。
菅仮免は13日夕方、その発言を記者団に否定。発言の真偽が問題となった。
菅仮免「私が言ったわけではありません」(asahi.com)
私はウソつきではありません、言わないことは言わないんですと内心イラッとしていたかどうかは窺い知ることはできない。
あるいはここは言わなかったで押し通さないと、大変なことになるぞ。ただでさえ立場を悪くしているところへ持ってきて、言ったことがバレたら、命取りになりかねないぞと自身を戒めていたかどうかも窺い知ることはできない。
菅仮免はとっくの昔にオオカミ首相の地位を確保していて、その発言が例え事実を言っていたとしても、既に信用されない人物と看做される名誉を担うようになっている。野党時代、沖縄に米海兵隊は要らない、米本土に帰って貰うと言っていながら、首相になると途端に変節、信念の軽やかさを証明、当然発言の信用性を失うこととなった。
簡単に言うと、ウソつきなのである。短気で、すぐにイライラし、怒り出すから、イラ菅という尊称を賜っているが、ウソ菅こそが本質と見るべきではないだろうか。
松本健一参与の菅仮免との意見交換後の記者会見の発言要旨と、その訂正発言の要旨を、《松本参与の発言要旨》(時事ドットコム/2011/04/13-19:39)が伝えている。
【1度目の説明】
松本参与「(福島第1原発から)放射能が漏れ続け、土地が汚染され続けると、復興をそこで考えることはできない。そこの人々は当面戻ることができないので、新しい都市を内陸部につくって、5万人とか10万人とかの規模のエコタウンをつくるという復興の方向があるだろうと(首相に)申し上げた。
原発の周囲30キロ辺り、場合によっては飯舘村のように30キロ以上のところもあるが、そこには当面住めないだろう。10年住めないのか、20年住めないのか、ということになってくる。そういう人々を住まわせる都市を、エコタウンを考えなければならないということを(首相は)言っていた。
その場合には、市の中心部はドイツの田園都市をモデルにしながら再建を考えなければならないということも言っていた。岩手県陸前高田市には1本だけ残った松がある。ああいうものも復興の元気を出す力にしたいともおっしゃった」
【2度目の説明】
松本参与「(「20年住めない」との発言は)私の発言だ。首相は私と同じように臆測(認識)しているかもしれないが、首相は言っていないということだ。首相から『俺はそういうことは言ってないよ』と電話があった。エコタウンについては、首相はその方向性だと言っている」――
松本なる内閣官房参与がトどんな人物か、「Wikipedia」で調べてみた。
〈群馬県生まれ。1968年、東京大学経済学部卒業、旭硝子勤務、翌年退職し法政大学大学院で近代日本文学を専攻。1971年、評伝『若き北一輝』で注目される。1974年、博士課程修了、在野の評論家、歴史家として執筆を続ける。1983年、中国・日本語研修センター教授。1994年、麗澤大学経済学部教授。2009年より、麗澤大学比較文明文化研究センター所長。
2010年10月、仙谷由人官房長官が内閣官房参与に任命した
穏健な保守派と称している。〉
菅首相が4月1日の記者会見で、被災地域住民を元の場所に住まわせるのではなく、「山を削って高台に住むところを置き、そして海岸沿いに水産業、漁港などまでは通勤する。更には地域で植物、バイオマスを使った地域暖房を完備したエコタウンをつくる。そこで福祉都市としての性格も持たせる。そうした世界で1つのモデルになるような新たな町づくりを是非、目指してまいりたいと思っております」と発言した、いわば高台式ニューエコタウンは元々は松本参与の構想だと「毎日jp」が伝えている。
まあ、菅首相自身が思いつくアイディアではなく、借り物の発想ではないだろうかとは思っていた。思いついたとしたら、合理的判断能力の欠如と二律背反を構成する創造力ということになる。
この高台式、津波の浸水面積は山手線内側の6倍 400平方キロにも及ぶということだから、例え津波の浸水地域であったとしても家屋が倒壊、あるいは流出しなかった地域と農地を差引いた被害の大きかった地域のみを高台に移すとしても、あるいはさらに差引いて、被災地宮城県・岩手県・福島県の3自治体のうちの沿岸部の都市のすべてに限定したとしても、財源的に追いつくのだろうか。
大船渡市も高台に移す都市計画を考えている。《大船渡市、低地の住宅を高台に移す計画 首相に支援要請》(asahi.com/2011年3月26日22時54分)
岩手県大船渡市の戸田公明市長が3月26日、菅仮免に電話、津波で甚大な被害があった低地の木造住宅を高台に移す計画を伝え、その実現に支援を要望、そのことを電話後の記者会見で明らかにしたという。
だが、家屋を失った被災住民からしたら、新しい土地を購入し、新しい家を建てるのは新たな負担となる。それを避けるために大船渡市は低地の住宅跡地を市が買い取る予定だと言う。
買い取り財源のうち、国からの補助を当てにしているだろうが、その資金だけではなく、高台に造成したニュータウンには電気・ガス・水道・下水道等のライフラインを新たに設置、学校、病院等を建設するとしたら、その資金も膨大な金額となって、バカにはならない。
記事も、〈法的な制約や財源の措置などハードルは高い。〉と書いているが、法律面は改正できても、資金的な実現可能性は簡単には解決できない問題であろう。
改めて松本参与の最初の発言。
「原発の周囲30キロ辺り、場合によっては飯舘村のように30キロ以上のところもあるが、そこには当面住めないだろう。10年住めないのか、20年住めないのか、ということになってくる。そういう人々を住まわせる都市を、エコタウンを考えなければならないということを(首相は)言っていた」
訂正発言。
「(「20年住めない」との発言は)私の発言だ。首相は私と同じように臆測(認識)しているかもしれないが、首相は言っていないということだ。首相から『俺はそういうことは言ってないよ』と電話があった。エコタウンについては、首相はその方向性だと言っている」
菅仮免と意見交換した際の菅仮免のどのような発言を基に、自身と同じように10年、20年と「そこには当面住めないだろう」と考えていると憶測したのだろうか。これこれこういう発言があった。その発言を根拠に10年、20年住めないと菅仮免も考えていると憶測してしまったとする説明がないと、俄かにはハイ、そうですかと引き下がるわけにはいかない。
地元住民や近隣住民は不安を抱えて、今後どうなるのだろうかと見守っているのである。10年、20年も住めないのか、あるいは1年以内に自分の住む街、自宅に戻って今までどおりの生活を取り戻すことができるのかどうかは、それぞれの生活がかかった抜き差しならない非常に重大な問題である。
その切実さを菅首相も松本参与も実感的に理解しているのだろうか。
もし松本参与が10年、20年住めないだろうは自分の考えであって、菅首相も同じ考えでいるに違いないと根拠もなく憶測し、憶測したことをさも菅首相の発言だとして記者会見で喋ったとしたら、その無責任な態度は余りにも軽薄であるというだけではなく、被災住民の今後の生活の行く末えを思う切実な不安を理解しない発言となって、内閣参与の資格を失う。
10年、20年住めないが首相も考えていたことなのかの真偽を解く一つのカギは、例え元々は松本参与の構想ではあっても、共感してのことに違いない、「エコタウンについては、首相はその方向性だと言っている」の一言にある。
津波に襲われて家屋が倒壊、あるいは流出し、多くの人命を失った地域に関して高台にニュータウンを建設、そこに住民が移住するという新都市構想は再び地震が起きて津波が発生、再度の被害が予想されるという危険性を以って、あるいは理由付けを以って正当性を持ち得るが、放射能流出を原因とした退避圏内や自主避難圏内も津波に襲われた地域はあるが、それを除いて「飯舘村のように30キロ以上のところ」まで含めた地域の住民のための高台ニュータウン建設とそのニュータウンへの住民の移住に正当性を求めるとしたら、再度の津波の襲来以外にどのような理由付け、あるいは危険性を以ってしたら妥当性を得ることができるのだろうか。
短期間の内に原発事故が収束、放射能問題にしても片付くとしたなら、いわば今ある危険性が除去されたなら、少なくとも津波が襲わなかった地域の住民はそれぞれの街、それぞれ自宅に戻って元の生活を再開できて、彼らに対する新都市建設は正当性を失う。
と言うことは、放射能避難生活者のためのニュータウン構想は原発周辺30キロ、あるいは30キロ以上の地域は10年、20年住めないという危険性、あるいは理由付けなくして正当性を得ることはできないことになる。
菅仮免はエコタウン構想が自身の頭にもあった。当然、原発周辺30キロ、あるいは30キロ以上の地域は10年、20年住めないという認識も頭にあったとしなければ、エコタウン構想の共感に至るプロセスとの整合性を失うことになる。
松本参与の「首相は言っていない」は不用意発言として批判されることを避けるための菅仮免と松本参与が組んで行った情報操作であって、実際は「首相は言っていた」が事実となる。
菅仮免自身が松本参与に電話して、「俺はそういうことは言ってないよ」をウソだとすることができる参考記事がある。《「廃炉・除染に最長100年」 英科学誌に専門家ら》(asahi.com/2011年4月13日11時41分)
米スリーマイル島(TMI)原子力発電所事故を経験した専門家らの見方を11日付の英科学誌ネイチャー電子版が載せているという。
〈福島第一原発の建設の一部を請け負った東芝による「10年程度」という廃炉計画について、米スリーマイル島(TMI)処理の経験者は「福島第一原発でははるかに時間がかかるだろう」〉との見方を示しているという。
根拠は、〈原子炉が安定しておらず、さらに放射性物質が大量に放出される可能性も残っているから〉
米スリーマイル島を〈経験した別の技術者は、福島第一原発で採用されている沸騰水型炉(BWR)は「配管や弁などが密集している」と指摘。TMIより作業が難しくなる可能性を示唆〉――
さらに、〈旧ソ連・チェルノブイリ原発では事故から約80年後に当たる2065年まで除染が行われる予定〉と書いているという。
経済産業省原子力安全・保安院は4月12日午前、福島第1原発事故の評価を1986年の旧ソ連チェルノブイリ原発事故と並ぶ最悪の「レベル7」(深刻な事故)に引き上げた。
この福島原発事故のレベル7に引き上げた危険性と英科学誌ネイチャー電子版に記載された「廃炉・除染に最長100年」に基づくなら、10年、20年住めないもニューエコタウンの建設も当然の帰結となる。
但し、4月12日午後6時からの菅仮免記者会見では、「現在の福島第一原子力発電所の原子炉は、一歩一歩安定化に向かっておりまして、放射性物質の放出も減少傾向にあります」とレベル引き上げに反することを言っているが、このことは廃炉・除染とは別問題であろう。
同じ記者会見で「やらなければいけないことについては、私はしっかりとやってきた」と事実に反する自負に浸っているが、「一歩一歩安定化に向かっておりまして」にしても菅仮免が自身の体質としている責任回避意識から成果としたい願望が言わしめた可能性を疑うことができる。
悪い頭をひねってのことだが、「原発周辺10年、20年住めない」はどちらかが先に言って、他の一方が同じ考えだと同感した関係からのものであろうとも、菅首相も言葉の形でいつでも口にすることができるまでに認識していた、あるいは実際に口にした「原発周辺10年、20年住めない」だったと断ぜざるを得ない。
発言否定は批判回避のために松本参与共々情報操作をやらかしたということであろう。 |