6月6日日曜日の朝7時半からのフジテレビ「新報道2001」で菅新内閣の元での「政治とカネ」の問題、普天間移設問題、郵政改革法案成立の是非等を取り上げて議論していた。出席者は与党側から民主党の玄葉光一郎、国民新党の下地幹郎、野党側から自民党の石原伸晃、社民党の辻元清美、公明党から高木陽介等々。そして局側からコメンテーターとしてなのか、崔洋一映画監督。
普天間移設に関して、次のような遣り取りがあった。
辻元清美「小沢さんは選挙を仕切ってこられたじゃないですか。石井一さん、選対委員ですけれども。例えばですね、3党合意を私たち、組んでおりました。選挙協力をしておりました。
1人区はですね、これぇー、民主党と自民党の、接戦になる可能性があるわけです。そうすと、社民党は、まあ、今、野党の立場ですけれども、あの――」
女性アナ「選対委員長は安住さんということ・・・」
辻元「ああ、安住さん――。そうすと、今まで小沢さんが選挙を仕切ってこられたわけですね。で、1人区で接戦になったとき、例えば、内の社民党、これ関係してくるわけです。これどうするか。数万の票持ってるわけですよ、各県で。
そうすると、この数万の票が、接戦、どちらにつくかが、非常に影響力が、まあ、出てくる可能性があります。そのときに、小沢さんとは色々と取り決めを、してきたわけですね。こちらは協力するから、こちらを協力してくれ。
そうすると、小沢さんも、その、まあ、エー、選挙を仕切ってこられたこと。これ、完全に民主党がですよ、エー、排除って言うかですね、まあ、してしまったら、選挙協力の面で、どうなるのかなあ、と。
これから、まあ、安住さんになられるんだったら、安住さんと、その分は話していくわけですけれども、排除しきれないじゃないかと、いうふうに私は思いますけども」
下地幹郎「あのーいま、辻元さんは、まだちょっと、あの、内閣にいたんで、分からなかったと。3党で、私たちは協力関係をやっていこうというサインをね、国民新党と社民党はやりました。そして、あの、もう民主党に出してありますから、新しい幹事長が出たら、明日にもですね、その3党の協力関係のサインをですね、していただけるかどうか、判断を仰ぎたいと思っております。それには政策も書いてありますし、選挙協力も書いてあります」
男性アナ「3党には社民党さんも入っていますか?」
何を聞いていたのか。
辻元「入っております」
下地「そういうふうなことを、これからやっていきたいと思っていますから、だから、あんまり向うに(野党側席に)座り過ぎるとダメじゃないかと思って――」
石原伸晃「選挙協力、選挙協力って言うけれども、鳩山内閣が行き詰まったのは普天間の問題、外交、安全保障、その、横にほっぽってですよ、社民党と、国民新党と、民主党がうまくいくわけないですよ。そこをやらないで、選挙、選挙って言ったら、選挙目当てだっていう批判には突き破れないじゃですか」
下地「そこはね、こうしかないですよ。はっきりしていることは、その、日米合意をして反対してやめたわけですね、普天間に関しては。
その日米合意の、社民党は辺野古と変えたことでやめたことは、国民新党に於いてもですね、私たちが提案したものと違うです。ただ、私たち、この日米合意はそのままですね、これが進められるかどうかは、仲井真知事がですね、埋め立て認可のサインをするかどうかの、決断を、来週にでもやると思うです。
もしやらないという決断をしたら、日米合意はもういっぺんやらなければいけなくなってくるわけですから、そういうときにも向けて、社民党とは色々協議していくというのは、これ当たり前のことですから」
高木公明党「菅さんは、菅さんは、日米合意は見直さないと言ってるんですよ」
下地「違う、違う。あのね、菅さんが見直しをするんじゃなくて、沖縄県知事がやらないとか決断をした場合には、<日米合意は遂行できないんで、そのときはどうするかという協議をしなきゃいけないんですよ」
崔洋一「下地さんは元々ー、辺野古の移設に関して、そう反対なすってなかったよね?」
下地「僕はできないから、嘉手納統合へ行ったんですよ。それで自民党を私は除名されたわけですから、埋立ては無理だから、嘉手納統合――」
崔洋一「伸晃さんや野党の方々がおっしゃったようにね、日米合意を堅持するんだって、これ程にまではっきり言ったら、これは結論見えているし、それはね、辻元さんね、やっぱりね、ここはね、一度離脱したら、筋通さないと、あなたのとこ、潰れてしまうよ」
辻元「いや、いや、ちょっと、それはね、あのー、それはね、えーと、今おっしゃるようにですね、日米合意、の問題で、社民党は離脱したわけですから、そこは見直しされると、いうことでない限りですね、なかなか難しいわけですよ。ただね、ただね、あのー、あとで議論なると思いますけども、それ以外の政策、3党で合意したところがあるわけですよ。労働者派遣法とかぁー、色んなところ、それはですね、いいものはいいで、それはきちんと、エー、実行っていくっていうふうに。
それと、選挙協力は悩ましいところでね。じゃあね、やめてしまえ言うたら、元の、まあ、伸晃さんには悪いけどね、自民党政治に戻したくないわけですよね。結局、そしたら、自民党に戻すことに手を貸そうかなーっていう、その戸惑いがあるわけですね。今ね。
だから、そういう意味で、それからどういうように対応していくかっていうことを党内でも、議論して、やらなきゃいけないということなんですね」
玄葉光一郎「あの、社民党さんとはですね、政策ごとに協力できるんだろうと・・・・」――
番組は菅新首相になって支持率が上がった、自民党は脅威と感じるかどうか、実体は小沢隠しか、隠しではないかといった話の展開となっていく。
社民党辻元清美は普天間の問題よりも民主党との選挙協力の方が大事なようだ。自民党政治に戻したくない、だが、民主党と選挙協力ができなけれが、自民党に戻すことに手を貸すことになるかもしれない、その戸惑いがあると言っている。この考えは主義主張よりも選挙協力という実益を優先重視する考え方であろう。
民主党に一種の威しをかけて選挙協力に持込み、その見返りに政策遂行面で何らかの利益を当て込む。
大体が各選挙区に満足に候補者を立てて当選に持ち込むことができない社民党自身の非力について何とも思っていない。8ヶ月限りで国土交通副大臣を退任しなければならなかったことが心残りとなっていることが原因してか、選挙協力を通して政策遂行場面に立ち入り、さらに運政権運営にまで足を踏み入れたい願望が透けて見えて、精神上、半分まで与党化しているようだ。
下地幹郎は、日米合意の履行は仲井真知事が埋め立て認可のサインをするかどうかにかかっている。認可のサインをしなければ、合意を前に進めることはできなくなって、別の方策を見い出さなければならないと言っている。
高木陽介が、「菅さんは、日米合意は見直さないと言ってるんですよ」とか、崔洋一映画監督が、「「日米合意を堅持するんだって、これ程にまではっきり言ったら、これは結論見えている」と言っているように日米合意が絶対決定事項の状況に至っているわけではない、覆る可能性もある状況下にあることを言っている。
この状況に対抗して絶対決定事項に持っていく方策があることは平野前官房長官が既に1月26日の時点で記者会見で述べている。
《普天間移設、法的決着も=地元拒否時の対応に言及-平野官房長官》(時事ドットコム/2010/01/26-21:22)
平野「(地元が)合意しなかったら物事が進まないということか。そこは十分検証したい。法律的にやれる場合もあるだろう」
地元反対を無視、法的措置による決着を示唆した。どのような法的措置かというと、記事は、〈平野長官は、具体的な対応については言及を避けたが、公有水面埋め立て権限を都道府県から国に移す特別措置法制定などが念頭にあるとみられる〉と解説している。
下地議員が言っていた仲井真知事の埋立て許認可の権限を国に移して、国のサインで施行できるようにする。地元の反対、ノープロブレムに持っていくというわけである。
だが、もし菅直人新首相が地元の意向を最重視する姿勢でいるなら、仲井真知事の埋立て認可サイン拒否を以って、日米合意の不履行を米側に伝えることもできる。
もし米側が「公有水面埋め立て権限を都道府県から国に移す特別措置法制定」等による法的措置を迫ったなら、そこまで強硬措置に出たら、内閣は持たない、鳩山内閣の二の舞となると拒絶することもできる。
いわば菅新首相の姿勢一つ、サジ加減一つで不可能を可能とすることができる。普天間の代替施設は唯一移設を歓迎し、社民党が推薦しているテニアンを除いて他に考えられるだろうか。それがダメなら、九州の自衛隊基地にでも地上部隊とヘリ部隊を一体で基地機能ごと何が何でも受入れさせて、最低限「県外」の約束を守るしかない。
〈北マリアナ連邦の上院と下院の議会は、先月、普天間基地の移設先としてテニアン島が最適地であるとして、日米両政府に対し移設の検討を求める決議を行ってい〉ると、「NHK」記事――、《福島氏“受け入れなら努力”》(NHK/10年 5月26日 18時3分)が伝えている。
その上、テニアン島の市長が直々に日本を訪問、社民党本部で福島瑞穂と会談――
市長「今、沖縄の普天間基地の移設が問題になっているが、アメリカ軍基地が来れば、雇用の場が生まれ、島の経済が活性化する。テニアン島は基地の受け入れを歓迎したい」
福島「受け入れを歓迎してくれるのであれば、努力したい」
受入れてくれるなら、私のすべてを与えてもいいとは言わなかったようだ。言われたとしても、相手は断ったかもしれない。
テニアン移設ということなら、日本政府はお得意芸である最大限のカネの力を以ってして協力するしかない。移転後のテニアン基地維持費もある程度負担する必要が生じるかもしれない。
「新報道2001」が上記遣り取りの後で、菅直人新首相の沖縄駐留米軍に関係した発言を紹介、その考えを伝えている。
2003年11月、民主党代表時代の発言――
菅直人「海兵隊の基地と人員についてですね、必ずしも沖縄に、いー、いてもらわー、なくても、極東の安全、エー、安定は、エー、維持できるという・・・・」
なかなかの頭のキレる雄弁である。
10年5月7日、民主党政権下、副総理時の発言――
菅直人「内閣の中でも、関わりを、持って、おりません」
米軍海兵隊が沖縄に駐留せずとも極東の安全・安定は維持できるとする考えに立っていたなら、副総理となった以上、普天間移設問題に積極的に関わって、「国外、最低でも県外」を鳩山前首相共々努力してよさそうなものだが、鳩山前首相が、「『国外、最低でも県外』と言ったのは党の公約ではなく、党代表としての私自身の発言」だと訂正したのは5月6日午前の記者会見でのことだから、その翌日の菅直人発言であることからすると、辺野古回帰が不可避な状況となって、それが自身の政治生命に傷がつくことを恐れて口を噤むことにしたことからの、「関係ない」だったのだろうか。
だとしたら、かなりのご都合主義となる。
次期総理が確定した6月4日、金曜日の発言――
菅直人「普天間、移設問題は、基本的には、日米の合意を、踏まえ、同時に、沖縄の負担の権限と言うことを、重視して・・・・」
紋切り型、月並みな踏襲発言。
その時々で発言を変える。このご都合主義を以ってすれば、仲井真知事の埋め立て認可サイン拒否を利用して、日米合意の破棄、仕切り直しも不可能ではない。
ご都合主義が幸いすると言うわけである。
このような手順を踏むことができたなら、民主党の支持率ばかりか、内閣支持率も上がり、参院選勝利は間違いないに違いない。
日米合意遵守が頭にこびりついて、それを絶対決定事項とし、その忠順な僕(しもべ)であり続けたなら、沖縄の反対、拒絶に逆らって、公有水面埋め立て権限を都道府県から国に移す特別措置法制定に走る最終的な可能性は否定できなくなる。