口蹄疫、感染拡大防止のために殺処分と埋却の間にすべきこと?

2010-06-12 08:28:41 | Weblog

 口蹄疫の感染拡大が止まらない。《宮崎 県東部で新たな感染疑い》NHK/10年6月11日 19時36分)

 これまで感染確認がなかった宮崎県都城市や宮崎市、日向市で9日から10日にかけて感染の疑いのある家畜が見つかった上、10日、県東部の川南町と西都市のあわせて2か所の農場の牛に涎などの口蹄疫に特徴的な症状が発生、宮崎県などは写真を見て、11日、口蹄疫に感染している疑いがあると判断し、同じ農場などで飼育されている牛すべてを直ちに処分することになったという。

 6月11日付の「毎日jp」記事――《クローズアップ2010:宮崎口蹄疫 封じ込め失敗か 消毒徹底「物流を制限」》が〈農水省は9日、都道府県に対し、口蹄疫の症状がある家畜を確認した場合、遺伝子検査を待たずに写真で感染疑いと判断できれば、24時間以内に殺処分することを求める通知を出した。殺処分までの時間を1日程度短縮できるからだ。〉と書いているから、正式の検体検査を待たない写真判定による殺処分を決めたのだろう。

 2カ所の農場の牛は感染拡大を防ぐためのワクチンを接種していたという。記事は宮崎県内で感染の疑いのある家畜が見つかった農場は合計で287ヶ所にのぼると書いている。

 感染拡大の原因を山田農林水産副大臣(現農林水産大臣)自身が5月25日の時点で埋却処分の遅れだと述べている。《口蹄疫の感染爆発は「埋却地の確保の遅れが一番の原因」―山田農林水産副大臣》全酪新報/2010年6月1日)

 5月25日の衆議院農林水産委員会での答弁の中で述べた発言だそうだ。

 山田「埋却処分できず豚が何万頭も放置されてしまった。この事実が拡大を爆発させたことになるのではないか。豚1頭、半日で1万頭の豚を感染させるウイルスを発散していると言われている。なぜ埋却できなかったのか大きな問題だが、埋却地がなかった」

 記事は、〈殺処分の頭数に見合う埋却地の確保の遅れが感染爆発の最大の理由と指摘した。〉発言だと解説している。

 但し、山田副大臣の指摘よりも約2週間前の5月12日に生産者が既に指摘していた事実だと記事は書いている。

 〈埋却の遅れが感染拡大を招いているとの指摘は早い段階から生産者が指摘していた。5月12日の民主党の会合でも「埋却できず発症した豚がそのままおり、1日も早く埋却地を探して処理してほしい。自分たちの豚が周りに感染させていると言われるのが非常につらい」(志澤勝日本養豚協会長)と要請していた。〉

 現地での感染経路の調査の状況についての山田副大臣の発言を記事は最後に伝えている。

 山田「空気感染の可能性も言われているが、(人、物の)接触による感染だと思っている。各発生農家で10日前まで、どういう人と接触したのか、外国から来たものかどうかも含めて詳しい調査を専門家にやっていただく」――

 6月6日放送の「NHK総合テレビ」《クローズアップ現代『検証・口蹄疫』》も、感染拡大を防ぐには3日以内に処分すべきだと言われているが、感染が広がるにつれて処分にかかる日数が増えていったことが拡大原因の一つだと指摘している。

 《止まらぬ感染拡大、未処理3万頭「火薬庫だ」》YOMIURI ONLINE/2010年6月11日)にしても、〈蔓延の背景には、埋却地や人手不足による処理の遅れもある。〉とした上で、特に豚の処理の遅れが大きな原因だとしている。

 川南町周辺などで感染したとされて殺処分対象になった約19万頭のうち、6月9日時点で殺処分も埋却もされずに3万1820頭が残っていて、〈そのうち約1万7000頭が豚。豚はウイルスを体内で増殖させやすく、牛の100~1000倍も拡散させやすいとされており、「いわばウイルスの火薬庫を放置している状態」(農水省幹部)だ。〉と豚未処理の極めて高い危険性を伝えている。

 「ウイルスの火薬庫を放置している状態」とは山田農水副大臣が言っていた、「豚1頭、半日で1万頭の豚を感染させるウイルスを発散していると言われている」に当たる指摘であろう。

 埋却が進まないから、殺処分にまわすことができない。自ら息絶えた家畜を片付けることもできない。結果、〈畜舎の床一面に剥()がれた豚の爪が無数に散らばっていた。蹄(ひづめ)を傷めた親豚が何度も立とうとしては崩れ、横には息絶えた子豚たちが折り重なっている。〉と記事が描写している悲惨な状況を放置せざるを得ない。 

 そしてこの放置がウイルスを拡散し、新たな感染を拡大させる悪循環に陥っている。

 飼主の宮崎県川南町で30年以上養豚業を営む男性(52)「こんな状態で生かしておいてもつらいだけ。いっそ早く殺してやりたいが、埋める場所もなく身動きがとれない」――

 記事は他にも、宮崎県が10年前の2000年3月に国内では92年ぶりとなる口蹄疫に見舞われたときの対策と今回の対策を比較して、その不徹底を指摘している。

 10年前の発生初日に設置した通行車両の消毒ポイントは13か所。今回は4か所。前回は家畜の移動制限区域を20キロ圏内、搬出制限区域を50キロ圏に設定、今回はそれぞれ10キロ圏内、20キロ圏と大幅に縮小したことなど、前回の殺処分を3農家35頭にとどめた封じ込め成功の経験が今回の危機管理の手ぬるさ、対策規模の縮小につながったニュアンスで記事は伝えている。

 さらに、感染が分かった4月下旬に感染の飛び火を恐れて県内外では様々なイベントの自粛が始まったこと。こうした動きに県の渡辺亮一商工観光労働部長が4月28日の対策本部会議の席上、「ちょっと過剰な反応なのかな、とも思います」と逆に自粛にブレーキをかける動きに出たこと。県が非常事態宣言で県民に活動の自粛を求めたのはそれから3週間後のことだったこと。

 農水省や県が、「今回のウイルスの感染力が10年前に比べて格段に強かった」としていることに対して、前回の封じ込め成功の経験が感染拡大を招いたとする、口蹄疫問題の対策などを決めてきた同省の牛豚等疾病小委員会委員の発言、「甘かった。10年前はうまくいったという自信が、失敗の始まりだった」を伝えて記事を締めくくっている。

 テレビや新聞が伝える、重機でちょっとしたビル建設の基礎程度の広さと深さの穴を十何万頭も埋却可能とするために何箇所も掘っていく、その時間の長さと手間のかかり、さらに埋却地不足が感染拡大に追いつかない状況をつくっている埋却終了までの気の遠さに、埋却が最終処理方法だとしても、そこに至るまでの過程でウイルスを飛散させない方法はないものだろうかと悪い頭で考えた。

 悪い頭で考えたことだから、効果の程はいたって不明だが、住宅建設で壁の中に埋め込む冷暖房材に以前は綿状のマット状態にした幅50センチ程度、長さ1.8メートル程度のガラスウールを埋め込んでいたが、現在はドロドロの発泡剤を吹き付けて、それを凝固させて冷暖房材とする方法を取る場合があるが、庭や空き地に例え野積みにしておいてもウイルスが外に洩れないよう、早い段階で固まる何らかの樹脂を家畜の全身を隈なくくるむように吹き付ける方法はどうだろうか。

 もし有効なら、重機で穴を掘削して埋めるまで殺処分した家畜はウイルスを拡散させない方法で放置しておくことができる。

 インターネットで調べたところ、「超速硬化ポリウレタン樹脂吹付塗膜防水材」を宣伝するHPに出会った。

 〈工法の特長

・コンピューター管理の専用吹付け機械での施工による、配合ブレ等の問題をなくし季節を問わず安定した
 物性を発現。
・無溶剤の吹付けウレタンを使用することで安全な作業環境を提供。
・吹付け塗布後、瞬時に硬化するためダレる事が無く平面・立面共に均一な塗膜厚管理が可能。
・養生期間が短時間で済むため、工期短縮が可能。
・耐磨耗性に優れコンクリートの5倍以上。
・接着力が非常に強くシームレスな防水層を形成するため、高い防水性を実現。

 吹きつけ自体はコンピューター制御ではなくても、圧力の強いコンプレッサーを1台か2台、車の荷台に乗せて移動可能とし、そこに消火ホースと同程度の口径のホースをつけるだけで、あとは吹き付け用の樹脂を積み込んだタンクローリーと行動を共にすれば済む。

 消防車を代用しても可能かもしれない。

 問題はあくまでも樹脂を塗布したあと、早い時間に乾くこと、その膜がウイルスを飛散しないだけの気密性を持って一定期間破れることない強度を確保できるかどうかにかかっている。

 まあ、悪い頭で考えたことだから、当てにはならないし、誰にも届かない提案で終わるだろうが、一応は専門家の意見を聞いてみるだけの価値はあるのではないだろうか。
 
 最後にNHKのHPに載っていた6月6日放送の《クローズアップ現代『検証・口蹄疫』》の7分程度の動画を文字化してみた。参考までに――
 

 最初に番組の案内。

 クローズアップ現代『検証・口蹄疫』(NHK/2010年6月7日)

 〈宮崎県で大規模な感染が広がっている家畜伝染病「口てい疫」。近隣の台湾や韓国をはじめ、イギリス、アフリカなど世界各地で以前から被害が起きている。対応が遅れた台湾では、主要産業の畜産業に壊滅的な打撃を与えた。2001年に「世界最大の被害」を出したイギリスでは、その教訓から、口てい疫の疑いが生じると、即、「国家の危機」として対応することにした。2007年に被害が出たときは、感染発覚から2日で処分をはじめ、あわせて補償ををおこなうなど、様々な対策が立てられた。こうした各国の教訓を、未だ感染拡大が収まらない日本で、どういかしていけばいいのか。世界に広がる口てい疫の衝撃、日本の現場での被害の広がりを最新報告する。〉

 感染拡大の原因の一つは初動の遅れ。感染力の強い口蹄疫の検査は安全確保のため、日本では動物衛生研究所(東京都・小平市)のみで行っている。宮崎からここに検体が送られるまで10日かかった。

 対応の手順を示した国の指針――

 『口蹄疫に関する動物家畜伝染病防疫指針』

 農家か獣医師が先ず口蹄疫を疑った場合は、都道府県の家畜保健衛生所に通報するとしている。家畜保健衛生所は農家に出向いて、家畜を検査、口蹄疫でないと判断した場合は検体を持ち帰り、別の病気の検査を行う。

 少しでも口蹄疫の疑いがある場合は、検体を動物衛生研究所に送る。動物衛生研究所に検体を送らなければ、口蹄疫は発見できない仕組みとなっている。

 最初の異変は4月9日。宮崎県都農町。農家から獣医師に一本の電話が入った。

 「熱があり、涎をたらしている牛がいる」

 獣医師は農家に出向き、牛の舌と唇に3ミリ程の皮が剥がれた部分を発見、口蹄疫が頭をよぎり、すぐに家畜保健衛生所に連絡。

 獣医師の証言「その牛を見た瞬間にちょっとドキッとして、家畜保健衛生所に連絡をして、まあ、これこれ、こういう牛がいるんですけれども、まさか口蹄疫じゃないとは思うんですけれども、私の行動は今後どうすればいいでしょうか・・・・」

 一時間半後、宮崎家畜保健衛生所の職員がかけつける。

 そのときの写真を映す。

 涎などの口蹄疫に似た症状はあるが、特徴的な水泡が見当たらないとして、口蹄疫の可能性を否定。

 家畜衛生保健所検査課溝部純三課長「口の中とか蹄(ひづめ)とか、できるんですよ。全部確認したんですけども、水疱は確認できなかったですね。口蹄疫の疑いは薄いだろうと、いうことで――」

 ところがその1週間後の4月16日に今度は別の2頭に同じ症状が現れる。しかし家畜保健衛生所はここでも口蹄疫ではないと判断。

 宮崎では10年前(2000年)口蹄疫を経験。このときは同じ牛舎で10頭中9頭に症状が出ていた。今回は2週間で2頭だけ。前回とは違うと考えた。

 翌4月17日、口や舌に症状が出る。他の病気を疑い、検査を行う。3日かけて行った検査はすべて陰性。原因が分からなかったため、19日夜になって検体を動物衛生研究所に送る。異変から10日経過。翌日の20日午前4時半、口蹄疫と判明。

 (口蹄疫の可能性を疑って、夜を徹して検査したに違いない。これが危機管理)

 家畜の伝染業病対策の専門家は現在の通報の仕組みでは口蹄疫かどうか素早く判断するのは難しいと指摘。

 (だろうか。危機管理とは最悪のケースを疑うことから出発する。万が一を疑って、検体を動物衛生研究所に送るべきだった。口蹄疫でなかったら、それに越したことはないのだから。家畜保健衛生所の職員が疑わなかったのは、親の虐待の通報や兆候を把握していながら、積極的な関与をせず、子どもを死なせてしまう児童相談所の対応と同列。)

 東京農工大教授・白井淳資「判断とか間違うと、早期発見につながらない。そこでよりよい判断をしてほしいが、やはり家畜保健衛生所だけに責任を押し付けてしまうと、それは物凄く負担も大きいし、大変なことだと思うし、国の方が積極的に関わりを持って家畜保健衛生所を応援するような方策を講じて欲しい」

 (システムだけの問題ではない。意識の問題。)

 処分の段階でも想定を上回る時間がかかる。家畜の処分は原則として農家自身が行う。それを県が積極的に協力することが国の指針で決められている。宮崎県は家畜の処分を行うために職員を派遣、職員は普段家畜の扱いになれていないために処分に手間取る。感染拡大を防ぐためには3日以内に処分すべきだといわれている。感染が広がるにつれ、性分にかかる日数が増えていく。

      殺処分対象  処分日数
 1例目 ―― 16頭 ―― 1日間
 2例目 ―― 68頭 ―― 3日間
 3例目 ―― 118頭 ―― 4日間
 4例目 ―― 64頭 ―― 5日間
 5例目 ―― 75頭 ―― 6日間
  ・
  ・
  ・
 8例目 ―― 1019頭 ――8日間 

 岩崎充祐家畜防疫対策監「例えば防護服の着る、着脱とかですね、そういうことはもう十分訓練してきたとは思うんですね。ただ、家畜に慣れていないみなさん方ですので、どうしても作業上(作業場?)では手間取った、ということはしています」

 解説「感染が徐々に拡大する中、事態を収める有効な方策を打ち出せずにいた」

 感染の判明から8日後の4月28日、牛豚等疾病小委員会。農林水産課で専門家の会議が開かれた。出された結論は「迅速且つ適切な防疫対策が行われている」

 これまでの対策を評価するものだった。

 ところが口蹄疫の感染は急速に拡大。直ちに処分が必要な家畜は18万頭を超え、国内では最悪の事態となった。

 赤松農水相(当時)「残念ながら、あのー、数そのものは、なかなか、あのー、抑え込む、というところまでいっていないと、いうことになって、本当にその点については申し訳ないと思っております」

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