「TOMIXは猫屋線に合うストラクチャーを出さないのか!」という声があるそうです。でも、Nサイズの街コレがあのような高騰を見せている昨今、より需要の少ない1/80のストラクチャーだと売値がいくらになるのか考えるだに恐ろしいので、だったら作ってしまえば?という気分にさせられます。
ストラクチャーは車両づくりと違い、プロトタイプの細部まで正確に再現するという作り方をする必要はなく、基本的な日本的建築の大雑把な知識(構造と大きさ)が頭に入っていればそれなりのものは出来上がりますし、そもそも実物も、その場所目的状況に応じてそれぞれ違っているわけですから、そちらの方がよりリアルだとも言えるのではないかと思います。
そんなわけで、ストラクチャーの作り方、これは以前このブログに載せたものそのままを再度載せたものです。あまり上手ではないので申し訳ありませんが、レーザーカットの窓枠やらプラの瓦やらが入手できる昨今であれば「図画工作」のレベルでそれなりのものは出来上がりますし、超精密な模型ならいざ知らず、猫屋線と組み合わせて遊ぶのが目的ならさほど問題ないレベルかと思います。以下に実際の作例を載せました。ご意見、ご質問も常識の範囲のものであれば承ります。あくまで趣味の範囲のものなので、その点はご了解ください。参考になればということで、よろしければお読みください。
【おことわり】以下の記事は、2019年の9月末に行われた、第15回軽便鉄道模型祭で実演した駅舎の作り方をまとめたものです。
模型づくり全般にいえることでしょうが、ストラクチャーづくりも料理などと同じで、レシピ通りに作ればだいたいそんな感じのものは作れます。私自身も、TMSやその特集シリーズ(特に「全書」「モデリング」「テクニック」のレイアウト3部作は、一時はページ番号まで暗記する勢いでした)からはじまり、あの河田さんの作品を模倣するところから始め、近くはあの宮下さんの詳細な資料の数々(今回もたいへんお世話になっています)を参考にして作りましたから、大きなことは言えません。
しかし、技術の進歩、というのは模型界にもやはり来るもので、ストラクチャーづくりも、以前に比べて格段に楽になってきました。その、鉄道模型ストラクチャーづくりに欠かせないのが、エコーモデルから発売されている、家づくり材料の数々でしょう。
で、今回は「ストラクチャーづくりの実際を見せるのはどう?」「それも特殊な素材を使わず、汎用性のあるエコーモデルの材料を使ってできれば、」というお話から、軽便祭で実際に作ってみて、この文章をまとめています。
そのため、この項は、実際にストラクチャーを作ってみる手助けになることを目的としています。
もし「では作ってみるか」と取り組まれる方で、ご質問等ありましたらコメント欄かツイッターの方にぜひ。
それでは、製作に入ります。
で、まず、こんな感じの簡単な図面を書いてみました。
四面図+仕切壁です。四面の方は窓上に水平線が引いてありますが、この線を境に、ここより下は下見板、上は塗壁の表現をしたいと思います。
端の1.5mm幅の部分は隅柱がつきます。この隅柱がつく仕上げの方が加工が楽だと思います。
扉や窓の部分は切り取ってユニット化した窓枠(後述します)がはまるのですが、この寸法はあくまで理論値なので、実際にできあがってきたユニットとは寸法が違ってしまう場合があります。なので、この図から台紙に写した際にいきなりこの寸法で切ってしまうのではなく、できあがった窓枠ユニットと照らし合わせて現物合わせで微調整することをお忘れなく。
それでは製作にかかりましょう。まずは窓枠の加工からです。以下、写真と説明をご覧ください。
(1)まずは窓枠を用意します。写真にあるのは エコーモデルのレーザーカット窓枠。
まず、紙の状態で好みの色に着色してから裏にスプレー糊を吹いて、TAMIYAの透明プラ板に貼り付けます。
その状態で乾燥させてから、ひとつひとつの枠に切り離し、準備しておきます。
(なお、この写真には全然関係のない「トタン板塀」が写っていますが、本稿とは無関係です。これにはちょっとしたわけが…)
(2)切り出した窓枠は1×1mm角材で囲みます。
戸の部分は乗客出入り口は1.5×1.5mm角材(明かり窓の下のみ1mm角)、職員通路の引き戸は1mm×1mm角材で囲み、それぞれユニット化します。
角材も窓枠と同様に、事前に長いまま着色をしておいて、それをカットして使います。着色は、比較的きちんとした建物のイメージであればエコーモデルのSTカラーを薄めて、風雨にさらされた古めかしい建物をご希望の場合はプラカラーの黒をうんと薄めて染めるように塗ります。必要なユニットが揃いましたら、設計図に載せて様子を見ます。
なお、1.5mm角の桧材はなかなか入手しにくいですが、日本家屋をHOあたりの縮尺で作るときは必須のサイズになりますので通販等を利用して必ずストックしておかれることをおすすめします。私は50本まとめて買いましたが、そろそろ残り少なくなってきたのでまた探さないと、とうところです。
下の写真で、ひとつだけ立体になっている部品がありますが、閉塞器を置くための張り出しです。これは建物本体の縮小版みたいなもので、ボール紙を台紙に、隅に柱をおいて現物あわせで仕上げました。腰板部分は横方向の下見板でなく縦方向の羽目板なので、STウッドを縦に並べて貼って余分を切り取って作りました。当然ながら、交換設備がない駅の場合は不要ではないかと思われます。
(3)モックアップづくり。ストラクチャーづくりは平面の図面だけではわからないものです。手近なボール紙(小学校で使うような工作用方眼紙が便利。ホームセンター等でも入手できたりします。)で各面の大きさを切り出し立体にして感じを見ます。
このように実際に窓枠パーツをおいてみると感じがよくわかります。
(4)妻面からも見ます。駅の場合、ホーム側の屋根がどうなっているのかはきちんと考えておく必要があります。
この駅舎の場合は、ホーム側の軒が延長されてそのまま差し掛けになるタイプにしてみました。
感じをみるための猫屋線の車体だけ置いてみました。まあこんなものでしょう。このあと図面をチェックし、必要な部品をそろえます。
(5)壁の下見板表現には、エコーモデルの下見板用STウッドを使います。薄板を等間隔でカットしたもので両端がつながっており、シート状になっています。仕上がり2.5mm幅と2mm幅がありますが、建物が小さいので2mmの方を使います。下に見えている紙が台紙で、等間隔に横線が引いてあり、切り離した細いSTウッドを線に合わせて貼り重ねていくことで下見板表現をします。たいへん申し訳ないのですが、この台紙は駅舎を作った残りで実際の台紙のサイズは上のSTウッドのカット前のサイズと同じです。(あらかじめ写真を撮っておくのを忘れました。)
STウッドを着色した状態がこれです。さらに端を切り離すとこのような1本ずつの板材が完成します。
着色に関しては(2)の角材の着色と同様に行ってください。
(6)次にSTウッドを貼り付けるための台紙から建物の4面の壁を切り出します。
先に外形を切り出し、次に、窓や扉のユニットの大きさをチェックした上で扉や窓の部分を切り抜きます。
ちなみに、正面の窓の形は、間違ったサイズの窓パーツを用意してしまったため設計と違います。
(7)ひととおり切り出し完了。出入り口の枠以外の窓ユニットは台紙の穴に合わせて接着してしまいます。
出入り口のところはSTウッドを貼ってから台紙の穴の大きさを再度調整してからつけるのでここでは接着しません。
(8)STウッドの下見板材料を貼っていきます。
まず最初に、窓上のラインに合わせて1.5mm角材を貼ります。ここが下見板と塗壁の境目になります。
次に、下から順に下見板を貼ります。接着剤は1枚貼るごとにそのつどつけていきます。台紙全体に接着剤を塗ってしまうと簡単なようですが実際はうまくつきません。
下見板の左右の位置決めは窓の枠を基準にしてそっち側を詰め、壁の左右の端、それから出入り口の枠のところは写真で見るように不揃いにはみ出してかまいません。はみ出したままにしておいて乾燥したあとで切りそろえます。接着剤はTAMIYAのクラフトボンド1択。もうこれ以外には考えられません。
(9)STウッドの下見板を貼り終わった状態。このあと 壁の上の部分(貼ってないところ)は白壁の表現のため、壁のような風合いの紙を貼ります。その紙は、和紙のような和紙でないような…とにかく画材屋の紙売り場で物色しストックしておいたもの。暇なときにいろいろ見ておくと良いものが見つかります。
(10)塗壁部分に紙を貼り(色合いが違うのがわかりますか?)裏面に3mm檜角材でのりしろも兼ねた補強をし(写真参照)、ゼリー状タイプの木工瞬着で組み立て。 以前の写真には写っていませんが、仕切り壁を作って組み込んでいます。
(11)屋根を載せます。写真には写りませんがボール紙をへの字に折った下屋根を貼り、その上にエコーモデルの日本瓦をカットして載せます。下屋根、および瓦屋根の大きさは軒の出具合を見ながら設計とモックアップ作りの時に決めておきます。今回は下の図のような大きさにボール紙を切り、山折りにして載せました。正面側とホーム側では奥行きが4mm違いますが、これはホーム側を差し掛けにし、バランスの良い軒の出具合を探ったたためです。この上にプラスチック製の瓦屋根が載ります。瓦屋根の大きさはこの下屋根から3mm程度はみ出す大きさです。
裏側からみたところ。屋根の付き方はこんな感じです。
補強の様子もこんな感じですが、もう少し入れておいた方が良いようです。
(12)破風のところに通風口(これもエコーのホワイトメタル製パーツを茶染め液で着色しておいたもの)を貼り、破風板を取り付け、ホーム側の差し掛けになるところには枠を固定しておきます。
(13)差し掛けになる側の支えの柱をつけます。下の基礎になる石はあらかじめバルサを整形して灰色のパテで固めておいたもの。柱の長さは現物合わせで、コツコツとチェックしつつ作ります。
(14)棟瓦と鬼瓦をつけ、差し掛け柱に方杖をつけて一応完成! あとは屋根を塗ってから雨樋をつけ、職員出入り口には小さい差し掛け屋根、正面には駅名看板、そして待合室・事務室の小物類などを設置してウェザリングすれば軽便の小駅としてはいい感じじゃないでしょうか。
というのが軽便祭で実演をいたしました顛末です。 今回はせっかくブースにおいでくださってもゆっくりお話もできず、たいへん申し訳ございませんでした。 でも、こんな感じで建物は作れるんだよ、という実演でありました。当記事と併せてご参考になれば幸いです。
最後に完成四面
【参考文献】
宮下洋一「写真で綴る昭和の鉄道施設」東日本編、西日本編 (株)ネコパブリッシング 2013、2014年
宮下洋一「地鉄電車慕情」 (株)ネコパブリッシング 2001年
河田耕一「駅の製作」 機芸出版社「レイアウトテクニック」所収 1973年
坂本衛 摂津鉄道の建設(3)「停車場の製作」 機芸出版社「レイアウトモデリング」所収 1972年