栂森鉄道管理事務所別室

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パラダイムシフトは来るか ~高校鉄道模型コンテスト~

2014年11月27日 01時20分48秒 | 模型

またまた間が開いてしまいましたが、少しまとめる方向へ行ってみたいと思います。

パラダイムシフトが来るかどうかは現時点ではわかりません。
しかし、高校コンテストの流れは、今後、明らかに拡大し、加速すると言って良いでしょう。

それは、これが「高等学校の部活動単位のコンテスト」だからです。

たかが高校生の部活動、しかし、それが大会=コンテストとなると、様相は一変します。
ちょっと考えてみましょう。高校野球がなぜこれだけ盛んなのか。
それは、甲子園があるから、というのがかなり大きくありませんか?
春と夏の甲子園、私も結構好きで見ていたりしますけれど、あれは「部活動」なはずです。
本来、教育課程外の学校教育活動のひとつにすぎない部活動が、あれだけ盛んなのは、
やはり甲子園があるから、という考えは成り立つでしょう。
また、国立競技場のサッカーなど、他の種目についても同じです。全国的な大会があるから、というのは大きなポイントだと思います。
夏の高等学校総合体育大会、またの名をインターハイ、名前からしてカッコイイですが、それを目指して努力された方、出場を経験された方、この読者の方にもいらっしゃるかもしれませんね。

同じようなことが文化部の活動にも言えます。
例えば吹奏楽部。吹奏楽という演奏形態は、ある意味特殊な状況のためにアダプトされた、どちらかというとマイナーな形態です。
ところが、日本では吹奏楽がとても盛んです。
それはやはり、コンテストがあるから。
TV番組「笑ってコラえて」の例をみてもわかるように、大会に向かって一致団結して練習していくという形があるからこそ、日本における吹奏楽はここまで広がってきたと言って良いでしょう。(やけに知っているような書き方をしていますが、よく知っています。もう30年くらい関わってきているので。)

また、あまりよく知られていない可能性がありますが、文化部のインターハイと呼ばれる行事があります。毎年夏に都道府県持ち回りで行われる「全国高等学校総合文化祭」、略して「高校総文」がそれです。
やけに知ったような書き方をしていますが、なんと高校3年の時に演劇部員として出場したことがありますので(爆)
細かい説明は省きますが、文化部にもこのような大会があると目標がはっきりしますから、それに向かって活動が盛んになる、というのはよくあることだと思います。

で、高校鉄道模型コンテストですが、前々回のブログに書きました大会記録集を見てみますと、このコンテストが「学校を代表した部活動の大会」になったことがはっきりとわかります。
その部活動も、最初の頃は鉄研だけでしたが、現在ではたいへん多岐に渡っています。
当然「鉄研」が多いんですが、それ以外にも地理研究部、地理歴史部、ペーパージオラマ部、技術工作部、模型同好会、写真・レゴ部、自動車工作部、物理部、建築デザイン部、自然科学部などなど、およそ関係のありそうなところ全てが集まっているような気がします。不思議なところではサブカルチャー研究部(鉄道模型ってサブカルかよ!)、はたまたそのものズバリの「鉄道模型デザイン班」なんていうところまであります。
で、これらの部活動に共通する点は何でしょうか? それは「まとまった大会がなかった部活動である」ということです。

ジオラマ作成、という観点から見るとひとつくらい入っていてもおかしくないのが「美術部」です。
しかし、今年度の出場校の中には、ひとつも見あたりません(もしかしたら美術部内のひとつのセクションが参加していることは考えられますが)。
これには様々な理由があるでしょう。ファインアートやアニメーションを目指している人には興味がわかない内容であるのかもしれませんし、そもそも美術系の部活動にはまた別の発表やコンテストの場が用意されていることもその理由なのかもしれません。

今まで「大会」というものがなかった部活動が、「東京ビッグサイトで行われる文部科学省お墨付きの全国大会」という大きな目標を持つことができた。
これはものすごく大きい。
今後何年かにわたって、この会は発展し続けることと思います。

で、そうなってくると当然一般の方々の認知度も上がり、現代鉄道模型界の一大潮流となることは間違いないことでしょう。
あと1回、続きます。


祭に向けて製作したモジュールが気に入らないので人を立たせてみましたが・・・やはりイマイチですね(汗)


全国高等学校鉄道模型コンテストは鉄道模型のパラダイムシフトにつながるか?

2014年11月01日 01時08分08秒 | 模型

 予告編(笑)」からだいぶ間があいてしまいました。繁忙期ゆえどうもままならず。そのかわり、今日は長文になると思いますので、たいへん申し訳ございません。

 で、高校鉄道模型コンテストとパラダイムシフトのお話でしたね。

 テレビ番組を見るまでもなく、この催しは熱気溢れるものだったようです。また、それに対するかのように、今年は多くの方がJAMの国際鉄道模型コンベンションの低調さを語っておられました。
高校コンテスト(以下、こう略します)が盛況だったからJAMがイマイチだった、などという短絡思考では語れないことだと思います。高校コンテストとJAMは、そもそも同じベクトルを持った催しではないからです。ですが、私はここに何らかの関連性を感じずにはいられません。この2つの対比は、時代の流れの中で、鉄道模型界全体のパラダイムシフトを予感させる(あるいは実際に進んでいる)からです。

 三省堂辞書サイトによると「パラダイム」とは「ある時代や分野において支配的規範となる『物の見方や捉え方』のこと」で、「狭義には『ある時代を牽引するような、規範的考え方』をさす」とあります。そしてそのパラダイムは、ある時期、革命的な変化を起こして全く違うものに移行してしまうことがある。それが「パラダイムシフト」である、なんてことは今回ちょこっと勉強してみようと思うまで、よく知りませんでした。反省。

 でも、このパラダイムシフトという考え方が、私が子どもの頃から見てきた鉄道模型の世界にもあてはまるような気がしているのです。

 子どもの頃、「何よりまず知識から入る」タイプであった私は、少ない小遣いでTMS(雑誌「鉄道模型趣味」)のバックナンバーや特集シリーズを買っていました。このブログでも過去にいくつか取り上げたとおりですが、それらを読むと、戦後間もないころの鉄道模型界はまだOゲージが主流であったと思われます。TMS特集シリーズNo.16「楽しい鉄道模型」所収の二井林氏の記事によれば、昭和20年代前半の鉄道模型界の主流はやはりOゲージであり、また同記事内にはHOゲージ(16番・・・ここではゲージ論は棚上げします)に興味のない模型店主の方も登場されます。そうすると、この時期のパラダイムは「鉄道模型はOゲージである」ということになります。

 しかし、その後急速にOゲージは廃れ、HOゲージの時代になっていきます。そして、鉄道模型といえばHOゲージを指す、次のパラダイムの時代を迎えたわけです。このころは(昭和30~50年代でしょうか)鉄道模型はかなり広く「認知され」ていたと考えられます。私の周囲の鉄道や模型とは全く縁のないオバチャンたちまで「なんとかゲージ」という言葉くらいは知っていたり、鉄道趣味とは全く縁のない少年時代を過ごしたような人が「オレ達の子ども時代はプラモと鉄道模型は男子の標準装備だったからなあ」と突然語ってきてビックリしたり、ということが多くありました。鉄道模型店がどこの町にも(と言ってよいほど)あり、そこでは「完成品が買えなくても作ることができるよ」という希望までもが買えたりした、そんな時代だった、このへんがHOゲージの時代です。

 そして、そのあと9mmゲージ・・・Nのパラダイムになるわけですが、そこは説明不要でしょう。鉄道模型は作るより買うもの、そんな風潮が強くなり、模型店より量販店へのシフトも加速します。ここらへんは別に否定はしないものの、思い入れがあまりありませんので簡単に触れます。(とか言いつつ京急旧1000型6連とかブルートレインのフル編成とかをうっかり買ってしまいそうになっている自分がちょっと恐ろしい。)

 こんな感じで、鉄道模型の世界も、技術の進歩やなんやかやの事情で、それなりにパラダイムシフトが行われ、「俺達の頃はさあ・・・」とかいう飲み会のネタにもなっていた訳ですが、ここに高校コンテストが登場します。

 高校コンテストが全く新しいパラダイムの可能性であると私が考える点は2点。まずひとつはスケールの点、もう一つは車両とその周囲のものとの逆転です。

 まずスケールの点ですが、高校コンテストには建物やら植物やら、幅広くいろいろ登場します。その中には、スケール(一応1/150ですよね)を逸脱したものも多く含まれます。特に、現実風景の再現を目指したグループとは違う、ファンタジー世界を目指したものにそれは顕著です。そしてそれが逸脱しつつ、こだわりの強くない目で見れば、ひとつの世界として成立している、ということがあります。ここで一応ことわっておきますが、私は厳密なスケール論者ではありません。むしろアバウトな方です。1/87のはずのレイアウトの中に1/80の建物キットを建てて全く気にしていません。むしろ、精密なスケール論を振り回すみなさんとは距離を置きたいと思っています。(特にNゲージで実物との違い云々を言われる方、その割に車輪の厚みなんてメッチャクチャオーバースケールですけどそれはいいんですか、とか言ってみたり。)しかし、鉄道模型が「実物を一定の縮尺でなるべく忠実にミニチュア化したもの」を目指して発展してきたことから考えると、この「スケールの合わないものをひとつの世界として許容する」というのは、新しい考え方と言わざるを得ません。

 また、鉄道模型というのは、あくまで車両が主で、風景等は従であったはずです。しかし今回の高校コンテストは「ジオラマ=モジュールレイアウト」のコンテストであり、車両の方は考慮されていません。レギュレーションの中に「新幹線車両が通過できる限界を厳守する」旨があるだけです。車両は当然走るわけで、そのための配慮はなされているし実際当日は車両が走っていたわけですが、その車両は参加各校が思い入れを持って用意したものではないようです。ここへきて、鉄道模型の要素の中で、主客の逆転が起こっています。

 というわけで、このまま高校コンテストの持つ模型観が広がってこれが「正しい」鉄道模型だと世間から認識されていくようになると、これが新しいパラダイムになると思うわけです。長くなりすぎたのでさらに次回へ続きます。


Nの風景も作っていたときがあった。でも長電+小田急の組み合わせは・・・・