多くの人がそうだったように我が家は貧乏だった。戦後はほとんどの人がそうだったと思う、そこから多くの人が頑張って現在の繁栄があるわけだし。
私が幼児の頃に近くに越してきた新婚のご夫婦がいて、ご主人は自宅でゼロからモノ作りを始め、奥様は5人の子供を産み育てた。戦後すぐのことである、高度成長期に順調に発展して周りから社長と呼ばれるようになった。
近くに当時としては成功者と言える2家族がいたので、そのご近所の家族と合わせて、子供の私に取って身近なお金持ちの3家だった。最初から土地持ちだった人と財産を作り土地を増やしていった人達。家持土地持ちイコールお金持ちの貧乏な土地柄だった。
人生で色んな人に出会って、本当のお金持ちとはどんなものか知った今になって考えると、そんなに大したものではなかった。昔と違い不動産がそれほど有難い時代でもなくなったこともあるし。
3家は昔はみんなそうだったように子沢山で、土地やお金があるからか親の近くに住む子供が多かった。そして親が高齢になり十分な介護を受けて死ねと、その土地や遺産を巡って争いが起きた。
数百万や数千万くらいの財産が一番遺産相続で揉めると耳にしていたが、たとえ財産が数億円あろうと子供や孫まで分配したら各自数百万円になってしまう。土地だって細切れにされて値打ちも無くなる。
そういうことが繰り返されて兄弟仲は悪くなり、近くに住んでいようと赤の他人以上に離れていき、その親の名義のままの土地に住んでいた子供が死ぬとまた兄弟間で争いが勃発する。
最後には、細切れにされた土地に家を建てて住んでいた人は、赤の他人に名義を書き換えて死んでしまった。それを聞いてすごく納得してしまった。
今は子供に何を残すのが一番良いのだろう。主人の兄弟は教育を残したと思う、借金してまで子供を大学へ行かせた。私の年老いた従妹達は兄弟が多いがとても仲が良い、親は借金を残して死んでしまったらしい。
これからの高齢者は長生きするだろう、それに自分のお金を使い果たして、良い人生だった、楽しい人生だった、と死んでいきたい、と思うけどいつまで生きるかが不明なのが困ったもんである。