もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

米軍艦のポートビジットを紹介

2021年02月07日 | 自衛隊

 日本がアメリカ海軍艦艇に与えている「ポート・ビジット」制度を紹介する。

 一般にはあまり知られていないと思うが、安保条約に基づく日米地位協定第5条で、アメリカが必要とする場合にアメリカ軍は、日本国内の全ての港湾・空港を利用することができることになっている。平時にアメリカがこの権利を強権的に行使することは無く、外交・防衛のルートによる事前協議の下に行われているが、国が了承(決定)した場合には港湾・空港管理者には要求を拒否できないことになっている。
 この規定によってアメリカ海軍艦艇が横須賀・佐世保・那覇基地以外の港湾施設を使用することを「ポートビジット」と呼び、入港の目的は一様に「promote to goodwill(親善訪問)」とされているが、前述した背景から真の入港目的に関わらず概ね米軍の要求は満たされるようである。
 一方、自衛艦が基地以外の商港に入港したい場合にも港湾管理者の事前許可を得る必要があるが、かって港湾管理者(自治体の長)が革新系の場合には入港を許可されないことや、最も不便な埠頭や港区を指定されることも少なくなかった。
 苦い思い出を一つ。
 米7艦隊の旗艦「ブルーリッジ」が国内巡行する際にシスターシップ関係にある自衛艦が同伴したことがあった。ある商業港で、事前の調整では両艦ともに4日間横付け停泊できることになっていたが、3日目になって唐突に港湾管理者(市長)から自衛艦のみ岸壁を直ちに空けるよう通告された。岸壁明け渡しの理由は民間船の入港・荷役要請があったためとされていたが、通告時には交歓行事のために乗員は出払った後であり、機関の準備にも3~4時間を要する純停泊の状態であることから、おいそれとは要求に応じられない状態であった。幸いにして窮状を見かねた企業の好意で、機関を使用せずに移動(係留替え)できる私営岸壁を貸してもらうことができて、急場を凌ぐことができた。煮えくり返る腹を抑えつつ200mの岸壁が必要な緊急荷役とは?と観るうち、入港してきたのは船長40m程度の機帆船で当日の荷役も無かったように見受けられた。

 このポートビジットは、アメリカにとっては星条旗を示す格好の機会であり、日本にとっても核の傘の健在を知らしめることができるものであると思っている。
 現在、尖閣水域における中国海警部の公船の跳梁ぶりがエスカレートしている。日米首脳の電話会談でトランプ政権と同様に「南西諸島は日米安保の対象」との言質を得たとされているが、アメリカの対中戦略が「戦略的忍耐」に先祖返りする危険性も危惧される現状にあっては、いささか「虎の威を借りる」という忸怩たる思いを押し殺して、尖閣水域に対するアメリカの本気度を図るためにも南西諸島への米艦ポートビジットを作為・実現することで、対中メッセージとすることも考えられるのではないだろうか。
 繰り返しになるが、尖閣に対する中国の無法と圧倒的な武力に対抗するために「虎」を利用することは好ましいことではなく、「蟷螂之斧」であっても日本が自分で解決すべきことである。


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