もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

中国原潜を特定

2018年01月17日 | 社会・政治問題

 尖閣諸島の接続水域を潜航通過した潜水艦を中国海軍の攻撃型原潜"商"型と防衛省が発表した。

 一般的に潜航時間に制約のない原潜は、一旦水上艦から捕捉されても高速を利して逃げ切るのが常識であるため、潜航時に得られるのは艦種と識別番号のみであるが、今回は接続水域を出た後に浮上しているために艦名まで特定できたものと思う。尖閣諸島周辺の東・南シナ海は塩分濃度や海水温が複雑であるとともに、潜水艦にとって絶好の隠れ場所である冷水層(変温層)があるために世界中で最も潜水艦の発見(対潜戦)が難しい海域とされている。そんな環境下にあって海上自衛隊が原潜を捕捉し連続追尾したことは快挙であり、これまでの地道な海域情報の収集の成果であろうと思う。しかしながら、今回は原潜が浮上して艦名まで暴露したことから潜航通過そのものが海上自衛隊の潜水艦に対する探知能力と対処要領を検証するとともに日本国民に圧力を誇示することが目的であったと推測されるので、今回の事象を持って東シナ海の監視体制は万全と考えてはならないと思う。艦艇や哨戒機による監視は時間や気象等の制約が大きいため、全海域の常続監視は不可能である。沖縄周辺海域にもSOSUS(Sound Surveillance System)網が敷設されているともされるが、中国海軍の動向把握のためにも更なる拡充を願うものである。

 防衛省の発表によると、今回の事象にあっては潜没潜水艦に対してあらゆる手段で警告したとされている。対潜弾まで使用したのかは不明であるが、偶発的な軍事衝突を避けるためは、浮上を促す警告の段階と手段を公表するとともに中国に伝達するのも一つの方法と思うのだが。一応の海洋・軍事の常識が通じた対ソ冷戦時と異なり、狂犬とされる中国海軍相手の冷戦には最新の注意もまた必要と思う。


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