もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

護衛艦いなづまの事故

2023年01月11日 | 自衛隊

 第4護衛隊群・第4護衛隊所属の「いなづまが周防灘で航行不能となる事故を起こした。

 事故原因と損傷に関する公式発表はないが、現在までに判明しているのは、
・「衝撃を感じて艦が航行不能となった」と海保に通報
・「いまづま」が検査修理後の確認運転中であったこと。
・小規模の油が流出している。
 くらいであるので、以下は一般的な推論である。
 プロペラを回せない状態と小規模な油流出の事象から、船体に大きなダメージは無くプロペラの翼又は翼の角度を制御する油圧系統が損傷を受けている可能性が高いが、復旧にはある程度の期間が必要になるのではと危惧している。
 大型艦の多くが採用している可変ピッチプロペラ(以下CPP)は、一体構造ではなく複数の翼をシャフトの先端に取り付けた構造であり、損傷した場合にも損傷した翼のみを交換するだけで復旧の期間と経費を大幅に短縮できるとされている。
 かっては艦の新造時に、艦ごとに予備のプロペラとシャフトを同時に整備していたが、プロペラやシャフトを交換した実績が無かった(単に自分が知らないだけの可能性も有る)こともあって、CPPの導入とともにシリーズ艦共通の翼を複数枚整備するように変化している。このために、「いなづま」の両舷の全ての翼を交換する必要が生じたら大丈夫かなとの懸念が沸く。
 CPP損傷に至る経緯は不明であるが、艦位を失って海図記載の暗岩に接触したとは考えにくくTVでも元提督の多くが同様にコメントしているが、「いなづま」が確認運転中であったことに一抹の不安を感じる。
 検査・修理中の乗員は海上勤務者というよりもサラリーマンや工員さんに近いために、航海に必要な技量が低下するのが一般的である。加えて修理中に人員交代でもあればチームとしての練度は大きく低下する。このために、艦では修理後の確認運転前に部署の立て付けを行って準備はするものの、畳の上の水練に似て修理以前の練度には回復できない。例としては不適当かもしれないが、1か月間の入院生活直後に車を運転するような状態であるので、CPPに突発的な故障が生じ、それに対処するための艦の運動性能について誤ったという複合要因に依るのではと思っている。

 近代的な艦が平穏な海面で座礁とは!!とするTVコメンテータもいるが、如何に近代化されたシステムでも偶発事故は起こり得る。ましてやヒトが介在するシステムにおいては猶更である。
 「いなづま」にあっても、先ずは人員被害が無かったことを良しとして、事故原因の解明と解決に全力を挙げるとともに艦の早期復旧を次等と願うものである。


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