もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

ロシアの動員令に思う

2022年09月23日 | ロシア

 ロシアが「部分的動員」を発動したことが報じられた。

 部分的動員の意味と規模は分からないが、既に予備役の招集は行われていることを考えれば、国家総動員の前段階を意味するものと解釈している。報道も錯綜しており、予備役招集と報じられる一方で、30代中頃に見える男性が軍歴が無いと述べる映像もある。更には、動員反対デモ参加者が拘束施設内で召集令状を受け取ったという報道もあって、動員対象は戦闘力(兵士)確保のほかにも反対勢力の一掃・弾圧などの恣意的な側面もあるように思える。
 動員された兵士が何時ウクライナ戦線に投入されるのかと考えれば、予備役は極めて短期間で、軍務未経験者も平時の教育期間を大幅に短縮されての前線投入になるものと推測している。
 かって読んだ中支従軍者の回想談で、「古参兵は遮蔽物の陰や近傍で倒れていたのに対し、応召間もない新兵は見通しの良い場所で倒れていた」とされており、戦場で生き延びる個人防護に関しても教育や経験によって大きな差が生まれるだろうことを見れば、今回動員されたロシア人の明日は悲観的に思える。
 今回の動員と同時に、民間人の応召拒否、軍人の脱走・命令不服従・投降に対する罰則も大幅に強化されており、ロシア軍の戦意に関してはウクライナが主張する集団投降なども実際に起きているのかもしれない。
 ロシア国内では動員反対デモが散発的に行われ、エストニア・ラトビア国境では出国の車で大渋滞が起き、外国への航空券は売り切れ、ロシア脱出が検索上位にランキングされているとも報じられているので、国民、特に兵役該当層の出国禁止措置も目前であるように思える。

 戦争には大量の兵員が必要であるが、ウクライナが主として正規軍・予備役に自発的義勇兵を加えて戦線を維持しているのに対して、ロシアは強権的な招集に頼らなければならないことが、ウクライナ事変や領土争奪戦の本質を示しているように思う。
 徴兵の制度とノウハウを持たない日本にあっては、有事における兵員の急速所要を如何に措置するのだろうか。
 日本の有事動員数は即応予備自衛官と予備自衛官の8割が応召したとしても約3万人に過ぎないが、幸いにしてG7加盟国では最低ながら「有事には戦う」とした人が国民の10%は存在する。
 国内世論を考えると徴兵や動員のための法整備は不可能に思えるが、義勇兵としての下地を作る教育訓練や装備については平時から準備しておく必要があるように思える。


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