東名高速道路で起きた「あおり運致死傷」の裁判員裁判の判決が出た。
検察は訴因とした危険運転致死傷罪に監禁致死傷罪の要素を加味した懲役23年を求刑していたが、判決では検察の起訴事実とした危険運転致死傷罪のみを適用して被告人を懲役18年とするものである。求刑のうちで適用された危険運転致死傷罪の上限が懲役20年とされているので、最高刑とすることをためらう若干の酌量要素があったものと思う。裁判員裁判では国民の処罰感情が重視されがちとされているので、有罪であれば上限20年の懲役刑を予想する報道が多かったので、懲役刑2年に相当する情状酌量の理由は何だったのだろうかと思い、新聞報道やネットを調べても情状酌量を与えた理由は見つけることができなかった。報道されている限り東名事故以後も逮捕されるまでの間にあおり運転を繰り返していたこと、身勝手な謝罪文を書いたこと、現場検証で欠伸を連発する映像等々、被告人の悔悟の情を汲み取れるものは無く、強いて挙げるならば年齢が26歳であり服役に依る更生が期待できることであろうが、そのことは量刑の長短を決める要素ではなく仮釈放の決定時に考慮すべき事項ではないだろうと考える。おそらく被告側は控訴すると思うので、控訴審以降は裁判員の処罰感情は抜きにした純然たる法律論争となるために、裁判員裁判で認定した「停車も運転の一部」という判断を巡っての争いになるものと思う。憲法9条の解釈に依って自衛隊の違憲・合憲判断が分かれる例に似た経緯を辿って最高裁まで裁判が継続することになると思っている。その間には、あおり運転症候群のような病名がついて、被告人の心神耗弱の要因まで加味されるのではとも心配している。
今回の事件を受けて危険運転に対する条文改正が既に議論されているが、以前から書いているように、生活を豊かにするであろう車が使用法と使用者によっては邪悪な殺傷武器に代わり得る現実、銃乱射による犯罪と何ら変わらなことをもっと広報すべきであると思う。かって交通事故死が多発して交通戦争とも呼ばれた時代には、「車は走る狂気」とのキャッチフレーズが盛んに用いられたが、日本の経済成長を牽引する自動車工業会の策謀が功を奏して、キャッチフレーズは「車は走るアクセサリー」に変わった。今にして考えれば、全米ライフル協会のPRと銃犯罪多発の関係に似通っていると見るのは、余りにも思い過ごしだろうか。
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