ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「スタッフロール」

2022年07月21日 | 書籍関連

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戦後ハリウッド映画界で藻掻き爪痕を残そうと奮闘した特殊造形師のマチルダ・セジウィック。脚光を浴び乍ら、自身の才能を信じ切れずに葛藤する、現代ロンドンCGクリエイターで在るヴィヴィアン・メリル。CGの嵐が吹き荒れる中、映画に魅せられた2人のが、時を越えて共鳴する。
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小説戦場のコックたち」(総合評価:星4つ)や「ベルリンは晴れているか」(総合評価:星3.5個)で注目を集めた作家深緑野分さん。今回読んだ「スタッフロール」は、映画の製作現場で働く2人の女性が主人公。

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スタッフ・ロール
映画等で表示される、製作者・監督小道具係等の名前を列挙した一覧映画の終わりに表示される場合は、エンド・ロールとも言う。

・特殊造形:あらゆる素材を使って立体物を作る技術。特殊メイク等。

・CG:コンピューター
を用いて画像を生成する科学技術、及び其の技術によって生成される画像の事。
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「スタッフロール」は、大きく分けると“2つの時代”を舞台にしている、1つは「1940年代後半~1980年代半ば
」で、主人公は特殊造形師のマチルダ・セジウィック。映画製作現場で働く女性が非常に珍しかった時代から、特殊造形に心血を注いで来た彼女は、“作り物”という共通点は在るものの、“手作り感”を感じられないCGに嫌悪感を持っている。そして、「2017年」を舞台にしている主人公は、CGクリエーターのヴィヴィアン・メリル。CGが当たり前の時代に生きる彼女は、CG製作を生業にしているのだが、「CGなんて、映画の世界では邪道だ!」という声に強い反発を持ち乍らも、特殊造形にも心を寄せている部分が在る。

祖母と孫程年齢が離れた、其れも全く異なる技術を得意とする2人が、時代を超えて接触し、そして共鳴して行くストーリーを描く中で、映画製作現場の技術の変遷が詳しく記されて行く。実際に観て来た映画作品や、其れを製作したスタッフの名前が登場し、映画好きの自分としては興味が惹かれる内容だ。

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映画撮影は、千人以上で行われる伝言ゲームみたいなものだ。正確に伝えるために見本があり、次の工程に進むとまた見本がある。しかもたったひとつの対象に対して、複数の部門が同時進行で取り組む場合も多々あるから、情報交換が欠かせない。うっかりすると自分がどこにいて何をすべきなのかわからなくなってしまう。
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三つ子の魂百迄
というが在る。「幼児期に表れた性質は、幾つになっても変わらない。教育を受け、大人になって経験を積んでも、幼児期の性癖や思いは根強く残る。」という意味だが、自分を振り返ってみても、そういった面は在る様に思う。マチルダの場合も、2歳の時に経験した“或る出来事”が強く心に突き刺さり、結果として其の出来事が彼女を特殊造形の道に進ませたと言って良い。

映画製作現場の技術の変遷が詳しく記されているのは非常に勉強になったけれど、詳しく記されているがに、“本筋”の部分が少し希薄になってしまった感じが在る。技術面に関する記述をもう少しあっさりとした上で、其の分を本筋に振り分けた方が良かったのではなかろうか。減点ポイントを挙げるならば、其の点だろう。

総合評価は、星3.5個とする。


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