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神奈川県警管内で発見された腐乱死体が、碌な捜査もされず、自殺として処理された。不審に思った神奈川県警の刑事・宮野裕之(みやの ひろゆき)が独自捜査をすると、其の直後、何者かに襲われてしまう。警視庁の刑事・鷺沼友哉(さぎぬま ともや)達はカりスマ投資家・片岡康雄(かたおか やすお)に目を付けるが、其の裏には政官界の巨大な権力が控えていた。
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小説家・笹本稜平氏は多くの人気シリーズを生み出しているが、今回読んだ「相克 ~越境捜査~」は、TVドラマ化もされた「越境捜査シリーズ」の第8弾。「鷺沼を含めた警察関係者5人と、元ヤクザの福富(ふくとみ)の合計6人が、闇に葬られそうになっている巨悪を暴くべく、密かにタスク・フォースを組んで捜査する。」という“現代版必殺シリーズ”的な作品。
タスク・フォースを組む6人が非常に個性的で、「巨悪を許さない!」という正義感に燃える鷺沼に対し、「巨悪から金を毟り取り、自分の懐に入れる事を最優先している。」様な問題刑事・宮野が加わっていたりもする。でも、何とも憎めない宮野が存在する事で、ストーリーに面白さが増しているのは事実。タスク・フォースによって解決される事件が増えて行く中、他のメンバーが少しづつ“宮野化”して行っている事に頭を悩ます鷺沼だが、今回の作品では最後の最後で、“宮野及び宮野化した人物”に対してきちんと灸を据えられる事になるのだから、「天網恢恢疎にして漏らさず」という事か。
今回の作品では大物政治家に加え、警察内部の大物達が巨悪に関係し、捜査に様々な圧力を掛けて行く。「最後の最後に、巨悪は倒される。」という結末は判っていても、「大丈夫かな?」と思ってしまう展開が何度か。そんな展開だからこそ、読後に爽快感が残る。
第7弾「転生 ~越境捜査~」は非現実的な部分が気になったけれど、今回の作品は悪く無い。総合評価は、星3.5個とする。