“其の時”、母は飼い犬と近所を散歩していた。「2011年3月11日(金)14時46分過ぎ」の事だ。
経験した事が無い程の大きな揺れを足元に感じ,驚きの余り、其の場に立ち尽くしてしまったと言う。揺れた時間も経験した事が無い程の長さで、「3~4分は揺れ続けていた気がする。」と。
揺れが収まった時、少し離れた所に「全てのランドセルに黄色いカヴァーが付いた、小学1年生と思われる男の子の集団。」が居る事に気付いた。其の内の1人が驚きの表情を顔に浮かべた儘、母に近寄って来て、こう尋ねたと言う。
「今のは、台風?」。
幼き子にとって、経験した事が無い大きな揺れ、其れもあんなに長時間もというのは、とても地震とは思えなかったのだろう。自身が経験した最も恐ろしくて長い揺れは、“強風吹き荒ぶ台風による揺れ”しか存在し得ず、だからこそ「今のは、台風?」と尋ねたに違い無い。
「地震みたいよ。」と答えた母に対し、「こんな大きな地震!?」と其の子は驚き、“仲間”の下に戻って、「地震だってよ!」と報告していたそうだ。
其の「東日本大震災」の発生から、今日で11年。当時、小学1年だった彼は今、高校3年になっている事だろう。自分が「今のは、台風?」と尋ねた事なんて、恐らくは忘れている事だろう。其れ程に、長い月日が過ぎ去ったのだ。