ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

書き続ける事

2021年03月04日 | 書籍関連

自身が書いた小説オルタネート」が、第42回吉川英治文学新人賞を受賞した加藤シゲアキ氏。作品は第164回直木賞の候補作にもなっていたが、残念乍ら受賞には到らなかった。でも、今回の吉川英治文学新人賞を受賞した事で、小説家としての能力の高さを証明された訳だ。「オルタネート」は第18回(2021年)本屋大賞の候補作にもなっているので、受賞出来るかどうかが注目される。

加藤氏は、ジャニーズ事務所のグループ「NEWS」のメンバー。2003年に結成された際、メンバーは全部で9人だったが、次から次へと脱退して行き、現在は3人となっている。「気の毒なグループだなあ。」という思いも在り、残ったメンバー達に対して「頑張って欲しいな。」という気持ちが在った。特に自分が本好きという事も在り、9年前に小説家としてデビューした加藤氏は気になる存在だった。「気になる存在だった。」と言っても、彼の作品を読了した事は無く、書店でさらっと立ち読みしては、「中々文章が上手いな。」と感心する程度の読者でしか無かったのだが。

社会の出来事に対して、“硬派な発言”をして来た彼。「見た目とは違うなあ。」という良い印象を持っていた。9年間でエッセー集を含め、全7冊を上梓して来たが、今回の受賞によって、更に小説家として成長して貰いたい。おめでとう!!

日本には漫画を対象にした物を除くと、200位の文学賞が存在する。」と、8年前の記事に記されている。直木賞等の超有名な文学賞が存在する一方で、圧倒的多数は一般的な知名度が高くは無い物だろう。とは言え、“きちんと審査されている文学賞”に関して言えば、受賞するのは大変な事だと思う。本好きの自分としては、文学賞を受賞した小説家は「本当に凄いなあ。」と尊敬してしまう。

けれど、出版社の人間は非常にドライだ。どんなに凄い文学賞を受賞したとしても、後が続かずに“一発屋”で終わってしまう小説家は多い。大事なのは、どんどん良い作品を書き続ける事だ。という編集者の発言を読んだ事が在る。確かに超有名な文学賞を受賞した小説家でも、一発屋で終わってしまった者は非常に多い。13年前の記事「“夢の印税生活”はヒジョ~にキビシィ~!」の中で詳しく書いたが、「売れる作品をどんどん生み出して行かないと、小説家として食って行くのは困難。」という現実が在る。

今年で91歳になる西村京太郎氏は、現在も“売れっ子小説家”として活躍している。1961年に小説家としてデビューした彼は、2019年3月の時点で619冊の作品を上梓しているのだとか。好きな作家の1人なので殆ど全てを読了して来たが、約10.7冊/年のペースでこんなにも長期間書き続けて来たというのは、本当に驚きだ。(デビューして間も無い頃に上梓された「四つの終止符」や「天使の傷痕」の様な社会派推理小説は、特に大好きだった。)

又、若い頃、夢中になって読み続けていたのが赤川次郎氏の作品。彼も、“売れっ子小説家”として活躍している。1976年に小説家としてデビューした彼も、今年で72歳となった。「2015年、上梓した作品が580冊を突破した。」というから、彼の場合は約14.9冊/年というペースになる。「1ヶ月に1冊を超える上梓ペースで、長期間売れ続けて来た。」というのも、本当に凄い事だ。

彼等の様な多作の小説家は、極めて少数派と言えるだろう。名前を出して申し訳無いのだけれど、作風が好きで読み続けて来た小説家・久保寺健彦氏の場合、2007年にデビューして以降、4年後の2011年8冊を上梓して来たけれど、もう9年3ヶ月も小説を上梓していない。(小説では無い本を、3年前に上梓してはいるが。)作風が好きなので、何とか小説家として“復活”して欲しい。


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2 コメント

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Unknown (悠々遊)
2021-03-05 10:34:04
こんにちは
出版社の立場で言えば「稼がせてくれる作品」が良い作品だし、そういう作品をたくさん生み出してくれる作家が良い作家だとはっきりしているでしょうね。
ものすごく意地悪な見方をすれば、大衆迎合的な多作者はベストセラー作家になりえると(苦笑)。
良い作品の評価は立場や好みでも変わるので、一概に決めるのは難しいだろうと思います。
文学賞ともなると賞の趣旨や選者の好みも反映されるでしょうし。
昔若い頃、属している同人誌会で眉村卓氏から親しく話を伺う機会がありましたが、そのころアマチュアのSF同人誌の作品を引き合いに、プロ作家の作品を酷評するアマチュア評論家(気取り)が結構いたもので、そんな風潮をたしなめる意味合いもあったのか、次のような趣旨の話をされたことがありました。
「同人誌の中にはプロ顔負けの凄い作品が載ることも目にします。100点満点と言える作品を書くアマチュア作者もいます。引きかえプロの作品は概ね80点程度といえるかも知れない。
 しかし、プロは常に及第点をとる作品を書き続けなければならず、たまたま100点満点でほとんどが50~60点止まりのアマチュアとは違う」
プロ作家としての矜持や、プロ作家になることを夢見ている年若いアマチュアへ、プロとしての気構えを話されたのでしょうね。
関西弁風に言うなら「そんな甘いもんやおまへんで」(笑)。
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>悠々遊様 (giants-55)
2021-03-05 14:14:51
書き込み有難う御座いました。今回は、此方にレスを付けさせて貰います。

今では読む機会が殆ど無くなりましたが、子供の頃はSF作品を読み耽っておりました。そんな自分にとって眉村卓氏は神様の様な存在の1人なので、彼と接する機会が在った悠々遊様が非常に羨ましいです。

眉村氏が語られた事、凄く判ります。プロの作家の矜持として常に「今書いている作品は、今迄書いて来た作品よりも上を行く、最高の物に仕上げたい。」という思いは間違い無く在ったと思うんです。でも、現実問題としては、中々達成するのは難しい。プロとしてそういう意識を持ちつつ、生き抜いて行く為には「及第点を取れる作品は、絶対に書き続けなければいけない。」と思っている筈だから。

記事の中でも触れたのですが、西村京太郎氏日は大好きな作家の1人だけれど、初期の頃の社会派推理小説に魅せられた自分からすれば、彼の代名詞となったトラヴェル・ミステリーは“大衆迎合した物”という感じがしております。其れが良いor悪いとは言えないけれど、自分としては「『四つの終止符』みたいな硬派な作品を、又書いて欲しいな。」という思いが在って。時代的には合わないのかも知れませんが・・・。

此処数年、西村氏の作品には戦中&戦後の日本の問題点(特に軍部に関して)を糾弾する様な作品が目立っています。年齢面を思えば、集大成的な作品という意識が在るのでしょうが、91歳になっても尚衰えない筆力には、本当に頭が下がります。
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