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・雨の翌日、消防司令の今垣睦生(いまがき ちかお)は、川縁を歩く女性と出会う。(「石を拾う女」)
・新米の土屋崇文(つちや たかふみ)と大杉洋成(おおすぎ ひろなり)は、「無敗コンビ」だった。(「白雲の敗北」)
・女性レスキュー隊員の志賀野安華(しがの やすか)が、休暇中に火事を発見。(「反省室」)
・西部分署副所長の吉国智嗣(よしくに さとし)は、殉職した息子・勇輝(ゆうき)の御別れ会で思い出を語るが・・・。(「逆縁の午後」)
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長岡弘樹氏と言えば、警察を舞台にした小説を多く手掛けている作家だが、今回読んだ「119」は、消防官達の姿を描いた9つの短編小説で構成されている。
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・まずは深く息を吐き出した。吸って吐くと逆に緊張するから、最初に吐く癖をつけろ―これもずいぶんと消防学校でうるさく言われたことだ。
・そういえば、最近受けた講習で、「鍋の蓋をくれ」という言葉を教わった。自然災害を研究しているその講師が言うには、「ナベ」、「フタ」、「クレ」がつく地名には地滑りの危険性があるらしい。
・電話機についているボタンを押さなくても、番号に相当する周波数の音を受話器に聞かせてやれば、プッシュホンをかけることができる。昔はよく知られていたことだが、携帯電話が全盛のいまでは、こんな裏知識も、あまり顧みられることがなくなってしまった。
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「へー。」と思ってしまう情報が、幾つか盛り込まれている。特に最後のプッシュホンの話は、“昔の人間”で在る自分も知らなかったし、此の“仕組み”を利用したストーリー展開の「命の数字」という作品は面白かった。
又、一番心に残ったのは「フェイス・コントロール」という作品。本来は“後味が良くない筈の設定”なのだが、「9つの短編小説の中で、“時間”が経過している事で、登場人物達の関係性が読者に強く印象付けられている。」為、心が揺さぶられる結末となっている。
全体的に「展開が読めてしまう。」という所が在り、総合評価としては星3つ。