ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「ムーンナイト・ダイバー」

2016年03月31日 | 書籍関連

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ダイヴィングインストラクター務める瀬奈舟作(せな しゅうさく)は、秘密の依頼者グループのを受けて、亡父の親友で在る松浦文平(まつうら ぶんぺい)と共に、立入禁止の海域で引き揚げを行っていた。光源は月光だけ。2人が“光のエリア”と呼ぶ、建屋周辺地域を抜けた先の海底には、“彼の日”が未だ其の儘残されていた。

 

依頼者グループの会が決めたルールに背き、直接舟作とコンタクトを取った眞部透子(まべ とうこ)は、行方不明者で在る夫のしていた指輪を捜さないで欲しいと告げるのだが・・・。

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天童荒太氏の小説ムーンナイト・ダイバー」。先日読了した柳広司氏の「象は忘れない」と同様、東日本大震災の被災者達の姿を描いている。未曾有の大災害から一定の年数が過ぎ、「“被災者達が負った心の傷”を、真正面から描きたい。」という作家が、次々に現われて来ているのだ。

 

大震災で、両親と兄を失った舟作。腰を痛め、自宅で休む事になった、代わりに仕事を引き受けてくれた兄が、津波呑まれて死んでしまった。「自分が死ぬだったのに・・・。自分は、何で生き残ったのか?何の為に、自分は生きれば良いのか?」、そんな複雑な思いを抱えた舟作に、「立ち入り禁止の海域から、亡くなった者達に関する物を引き揚げて欲しい。」という依頼を受ける。

 

「他者から後ろ指を指されない為に。」と、“遺品”の引き揚げには厳し過ぎるルールが設けられている。そして、其の厳し過ぎるルールが在るがに、グループの遺族のみならず、舟作も懊悩する。

 

愛する者に関する物を、何とかして引き揚げて欲しい。でも、引き揚げられたら、愛する者の“死”を、“現実の物”として認めなければいけない。遺族達の複雑な思いが、自分の心に突き刺さった。

 

被災者では無い人間は“今”を生きているが、被災者の多くは“今”と同時に、“過去”とも生き続けている。自分が彼等の立場だったら、同じ生き方をする事になっただろう。「前向きに生きましょう。」なんて言葉を、自分は被災者達に言えない。

 

総合評価は星3.5個


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