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“52ヘルツの鯨”とは、「他の鯨が聞き取れない高い周波数で鳴く、世界で1頭だけの鯨。」。沢山の仲間が居る筈なのに、何も届かない、何も届けられない。其の為、世界で一番孤独だと言われている。自分の人生を家族に搾取されて来た女性・三島貴瑚(みしま きこ)と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれていた少年。孤独故に愛を欲し、裏切られて来た彼等が出会い、新たな魂の物語が生まれる。
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「新刊を扱う書店(オンライン書店含む。)の書店員の投票によって、ノミネート作品及び受賞作が決定される。」という「本屋大賞」は、 2004年に第1回の受賞作が選ばれた。以降、回を重ねる毎に其の知名度は上がり、受賞作は大きく売り上げを伸ばす事に。今回読了した「52ヘルツのクジラたち」(著者:町田そのこさん)は、第18回(2021年)の本屋大賞を受賞した小説。
「母と義父から児童虐待を受け続け、心に深い傷を負った貴瑚。だが、そんな彼女に優しく接してくれる“友人達”の御蔭で、彼女は少しづつ“人間らしさ”を取り戻して行ったが、“或る事件”が切っ掛けで、友人達には何も告げる事無く、東京から九州の田舎の漁師町に引っ越してしまう。母方の祖母が1人で暮らし、亡くなった後は空き家となっていた家に住む事になった貴瑚は、1人の少年と偶然出会う。障害で言葉が話せない彼は、彼女と同じく児童虐待を受け続けていた。」というストーリー。
或る人物の“真の姿”が明らかとなった時、「貴瑚に対して、付かず離れずの態度を見せていたのは、そういう事だったのか・・・。」と合点が行った。同時に、そうせざるを得なかった其の人の事が、堪らなく可哀想になった。貴瑚も、同様の思いだったろう。
ネット上の評価を見ると、概して評価は高い。「8割近くが、高い評価を付けている。」という感じだ。其の一方で、酷く低評価を付けている人も、少数だが存在する。低評価を付けている人の多くは、「御涙頂戴の設定が、余りにもあざとい。」というのが理由の様だ。確かに“昔の大映ドラマ的設定”という感じは在るし、そういうのが鼻に付くと思ってしまうのも判らなくは無い。
で、自分の場合は、「そういうあざとさは在るけれど、でも、心を大きく揺り動かされたのは事実。」として在る。「読んで良かったor悪かった?」で言えば、「良かった。」とも。「貴瑚と少年の未来に、明るさを感じられた。」のは、凄く良い結末だったと思うし。
総合評価は、星4つとする。