特別な人の立場

歴代首相の中でも小泉首相のナルシシスト度の高さは突出している様に感じているので、首相として迎える最後の８月１５日には自らの美学を貫くだろうなとは思っていた。故に今日、彼が靖国神社を参拝した事への驚きは無い。唯、相変わらず「（靖国参拝は）憲法上の思想及び良心の自由、正に心の問題だ。」と突っ撥ねていたのには、「結局この人は首相就任から最後に到る迄、自分の思いをぶちまけるだけで、異論や反論に関しては『それがどうした！何が悪い！』といったスタンスでしか臨めないのだああ。」という思いを強くするだけだった。

昨年の記事「初参拝」でも触れた様に、「数多の戦没者の犠牲の上に、我々は今の平和を享受しているし、この世に未練を残しながらも黄泉に旅立たなければならなかった数多の御霊に、心から哀悼の意を表すのは自然な事。」と思っている。それは右だろうが左だろうが、殆どの人は同じ気持ちだろう。唯、「靖国神社にＡ級戦犯も祀られている事」や「政教分離の点」等から、国外のみならず国内でも首相の靖国参拝に関して賛否両論在る中で、敢えて断行する必要性が果たして在ったのか。

小泉首相は靖国参拝を、「個人の心の問題」としたが、首相というのは特別な立場で在り、個人としてよりも公人の部分に重きを置かれるのが世の常ではないか。首相の身で在りながら、一般人としての言動と同一化させてしまうのはどうかと思う。

以前にも書いた事だが、本当に戦没者の魂を悼む気持ちが在るのならば、日時や場所を問わず哀悼の意は表せる筈。８月１５日という日に、それも靖国神社という場所に参拝しなければ、戦没者の魂を悼めないというのならば妙な話と言わざるを得ない。「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」の様に、８月１５日という日にわざわざ、それも”金魚の糞”宜しくゾロゾロと連れ立っての参拝には、集票マシーンの一面を持つ日本遺族会への強烈なアピールを感じ、ウンザリしてしまう。その点”だけ”に於いては、一人で参拝した小泉首相を評価するが、首相という特別な立場を考えると、国益よりも個人の美学を優先させたと思える今回の判断には賛成出来ない。＊１

公的な立場に在りながら、公務は殆どせずに私事ばかりを優先しているかの様な某国の止ん事無き人。病を抱えているという点は同情するが、少なくとも国民の税金によって成立している事を考えると、私事ばかり優先させている様な現状は如何なのものか。＊２これでは、「病を錦の御旗にして遣りたい放題している。」と思われても仕方ないだろうし、同じ病を抱えた人達迄もが悪い印象を持たれかねないという意味で失礼に思う。

「国民の模範たる存在」という”建前”が在るのならば、一層言動には注意を払うべき。それだけ特別な立場なのに、此処迄長期に亘って私事ばかり優先させている様に見えてしまうのでは、バッシングの声が上がってしまうのも致し方無い様に思う。

特別な立場を享受している以上、一般人には無い特別な制約が在るのは当然だと思うのだが。

＊１　靖国問題や郵政民営化よりも、もっと早急に着手すべき国家の難題は山積みだと思う。

＊２　ディズニーランドに一般人の身内も連れて行き、同様に特別待遇を受けさせたという報道も在った。これが事実ならば、幾ら何でも遣り過ぎだろう。